大分高校書道部 全国を制する強さの秘密に迫る 【大分県】
「第29回全日本高校・大学書道展(高大展)」で、3年連続全国優勝を果たした大分高校書道部。さらに、「第33回国際高校生選抜書展(書の甲子園)」では準優勝、「九州女子大学主催 第36回高等学校揮毫(きごう)大会」では優秀団体校賞(第2位)を獲得するなど、その実力は全国でも群を抜いている。その栄光を支える中心人物が、部長を務める佐藤野笑(3年)だ。
佐藤は6歳の頃から書き方教室に通い始めた。しかし、当時の彼女は「静かに文字を書く」という行為が性に合わず、むしろ空手や和太鼓といった体を動かす活動の方が楽しかったと振り返る。それでも、負けず嫌いな性格が教室を辞めることを許さず、書き方を続けた。そんな佐藤に転機が訪れたのは中学1年生の時。出展した「読売学生書展」で金賞を受賞したことで、大きな喜びを感じた。この体験が彼女の心に火を付けた。「誰よりも上手に書きたい。その思いから、教室を一度も休まず通い詰めた」と佐藤。書道に向き合う姿勢が変わると、次々と結果を残すようになる。「JA共済小・中学生書道コンクール」など数々の大会で実績を積み重ね、彼女の中で「書」が日々の楽しみへと変わっていった。
高校進学時には、さらなる高みを目指し、大分高校書道部の門をたたいた。「昔から強豪校として知られていたが、実際に入部してみると、想像をはるかに超える熱量があった」と先輩たちが真剣に作品と向き合う姿に刺激を受けた。1年の学年リーダーとなり、書道に全力で向き合う日々が始まった。
部長を務める佐藤野笑
「書道の魅力は、自分だけのストーリーがあること。ひと文字書くたびに、練習した感情を思い出せる」と佐藤は語る。この感性と努力の積み重ねが、3年連続で高大展制覇を達成する大きな力となった。今年は部長として、さらに大きな責任を背負い、部全体をまとめる役割を担う。「どんな大会でも、結果だけに左右されない部活を目指す」と話す佐藤は、例年以上に部員たちとのコミュニケーションを重視した。50人以上の大所帯の部員一人一人と向き合い、意見を交換するため、部会では円になって話し合う時間を増やした。「全員が同じ方向を向くことが、団体として強くなる秘訣(ひけつ)だと思う」と笑顔で語る。こうした取り組みが、部全体の結束力を高め、結果として多くの大会で好成績を収めることにつながった。
「歴史ある部の中で結果を出す責任の重さは計り知れない。でも、その壁を乗り越えた時、自分自身と仲間たちを誇りに思える」と佐藤。書道を通じて学んだことは、技術だけにとどまらない。「礼儀や立ち振る舞い、人としての成長も得られた」と語る。この経験は、これからの人生の財産になるはず。3年間の部活動で得たものを胸に、佐藤は教員という新たな夢に向かって歩み始める。「書道部は唯一、自分と向き合える場所でした。ここで得た全てを未来につなげたい」。自分と向き合い、仲間と支え合った日々が、彼女の新たな挑戦の原動力となっている。
全日本高校・大学書道展で3連覇達成
(塩月なつみ)