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THE ORAL CIGARETTES×SiM×coldrain、それぞれが主催イベントに懸ける想いーー山中拓也「シーンごと好きになる楽しさを知って」

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coldrain・Masato、THE ORAL CIGARETTES・山中拓也、SiM・MAH 撮影=大橋祐希

THE ORAL CIGARETTES主催のイベント『PARASITE DEJAVU 2024 ~2DAYS OPEN AIR SHOW in IZUMIOTSU PHOENIX~』が、10月5日(土)と6日(日)に、大阪の泉大津フェニックスにて開催される。例年通りDAY1はワンマンショウ、DAY2はオムニバスショウという形式。DAY2に出演するのはオーラルを含むロックバンド8組で、オーラルのファンならば馴染みのあるバンドばかりが揃った。そして今回、公私ともに交流のあるTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也、SiMのMAH、coldrainのMasatoによる鼎談が実現。互いの活動をどのように見ているか、また、来たる競演について語ってもらった。

――まずSiMは、2019年以来2度目の『PARASITE DEJAVU』出演ですね。

山中:SiMは2回目だけど、MAHさんは2022年の僕らのステージにゲストとして出てくれたので、実は3回目なんです。だから『PARASITE DEJAVU』の最多出演者はMAHさん。MAHさんには東京に出てきてからずっと近くにいてもらっています。俺が喉のポリープの手術した時とか、自分の節目に立ち会ってくれている先輩だと思っていて。だから今年の『PARASITE DEJAVU』にも出てもらいたいなと思いました。

MAH:「いつ開催ならSiM出れますか?」みたいな感じだったよな。日程を相談されて。

山中:SiMは海外ツアーも入ってたから、「どの週だったらいけます?」みたいな会話から始まって。確認しつつ、(2023年6月に開催された、SiM主催フェスの)『DEAD POP FESTiVAL』のステージ上で誘ったんですよ。断れない状況を作って(笑)。

――それほどSiMには出演してほしかったと。

MAH:だから責任重大というか。ちゃんとやらなきゃなと思ってます。

――一方、coldrainは今年初出演です。

Masato:去年オーラルと対バンした時とか、自分たちのフェス(『BLARE FEST』)に出てもらった時とかに、「いい加減『PARASITE DEJAVU』に呼んでくれないんだったら、もう『BLARE』には出さん」って脅したんですよ。あと、ファンを巻き込んで「絶対に呼んだ方がいいよ」っていう空気を作れば呼んでもらえるんだなと分かったので、最近はそういう手法を採ってます。

山中:だからマイファス(MY FIRST STORY)の時もあんなリプライ書いてたんや(笑)。

Masato:そう(笑)。まあ、こっちも何となく「今年だろうな」という空気を感じつつ、「伏線になったらいいな」という気持ちでジャブを打ってたというか。過去2回は傍から見ていただけだったので、呼んでもらえて嬉しいです。

Masato、MAH、山中拓也

――山中さん、今年のDAY2の出演者についてはいかがでしょう。

山中:一緒に飲みに行ったり遊んだりする先輩や同期を集めた感じですね。あと、前回と前々回はVaundyやSKY-HIのような別ジャンルの人たちも交えてラインナップを組みましたけど、今回はバンドのみにしようと最初から決めてて。

――それはなぜですか?

山中:コロナがちょっと収まってから、じゃあ元のライブのやり方にどうやって戻していこうと悩んだ時期があったじゃないですか。モッシュダイブはどうするかとか、「マスクは」「ソーシャルディスタンスは」というふうに。今回の出演バンドたちとは、飲みに行った時とかにそういう話をよくしていたんですよね。例えば「次のツアーからSiMはモッシュを解禁する」みたいな話をMAHさんから共有してもらっていて。前回の『PARASITE DEJAVU』は2022年で、その時はマスクあり、ソーシャルディスタンスあり、声出しなしでした。去年は『PARASITE DEJAVU』を開催していなくて、僕たちとしては2022年の空気をまだ引きずっている感じがあったから、今年はそういう空気を解放できる日にしたいなと。だったらいろいろな状況を共有しあいながら、一緒にバンドシーンを動かしてきた人たちを呼びたいなと思って、今回のメンツになりました。だから必然的に(SiM、HEY-SMITH、coldrainからなる)TRIPLE AXEが入ってきて。

――因みに、この3人で飲みに行った時はどういう会話をするんですか?

山中:前にこの3人で朝まで飲んだことがあって。その時に俺がMasatoくんに対して、「coldrainは演奏力が高くてライブもカッコ良いのに、何で日本でもっと上に行こうとしないんですか?」みたいな話をしちゃったんですよ。

Masato:いや、もうちょっと薄っぺらい言い方だった(笑)。「アリーナとかドームでやってるバンドを倒しに行け」みたいな。

山中:めっちゃ酔っ払ってたから上手く言えなくて(笑)。だけど気持ち的には今話したような感じ。とにかく悔しかったんです。そしたらMasatoくんから「俺らは(歌詞が)英語やから。お前らが行ったらいいやん。俺らは俺らのやり方で、行けるところまで行くよ」と返されて。それでもまだちょっと腹立ってて、何か言い返した気がするんですけど(笑)。

Masato:別に俺らもデカくならないとは言ってないんですよ。だから俺とMAHが「いや、俺らはそことは戦わないから」「俺らには俺らのやり方があるんだよ」って言ったのに、「いや、違うんすよ……」ってずっと言ってて(笑)。

MAH:そうそう(笑)。

Masato:「俺が見たい先輩たちの姿はそれじゃないんすよ」みたいなことを言われたのはすごく覚えてる。

山中:coldrainってちょっと前は海外にめっちゃ行ってた印象がありますけど、最近はわりかし日本で腰を据えて活動しているイメージがあるじゃないですか。俺は最近のcoldrainのライブを観ながら、「この人たち、しっかり牌を掴みに来てんぞ! ヤバ!」と焦っていて。

Masato:あはははは!

山中:今までのMasatoくんは「俺らのフィールドで」という感覚でライブしてたけど、ここ最近のライブでは、「俺らに興味なさそうなお客さんも巻き込むぜ」という気持ちを感じる。だから本当にセコいというか、「それやられたら太刀打ちできん」って気持ちも、正直俺の中にはあるんです。

Masato、MAH、山中拓也

――MAHさんは最近のcoldrainに対して、どのようなことを感じていますか?

MAH:俺らはここ2年くらいで海外に行くようになって、ようやく、coldrainが若い頃にやっていた海外での活動のすごさが分かった。前まではcoldrainが海外でいろいろやっているのを見ながら、だけど自分たちにそれができないという現状があったので、羨ましさや悔しさから他人事のようなテンションで「あー、大変だね。頑張ってきて」「帰ってきたんだ。お疲れ」という感じで見ていたんですよ。それはcoldrainだけじゃなくて、Crossfaithに対してもそう。だけど自分が海外に行くようになって、今さらですけど尊敬しています。俺らはアニメの主題歌というチートがあったけど、それなしでイチからやるなんて、すごく大変だったろうなと思います。

Masato:俺らが海外に行ってた時に「行くつもりない」みたいなテンションだったSiMが、実際に行って、面白さを感じて、海外のお客さんを掴んでいるのは、仲間として嬉しいです。今もHEY-SMITHがアメリカにいて、毎日のように動画が回ってくるけど、そういうのを見ているとシンプルに嬉しい。

MAH:日本ではみんなで散々一緒にやってきたので、次は海外で一緒にやりたいです。そういうふうに、この先の夢もできて。

Masato:それはもちろん、俺もやりたい。だけど海外での活動に関しては、僕らはもうちょっと上手くやりたかったなという気持ちもあるんですよね。先陣を切ってCrossfaithとかと一緒に行ったものの、継続できなかったので。自分たちがもっと上手くやってれば、MAHの言う「日本のバンドたちを呼んで」というライブも今ごろ達成できていたはずなんじゃないかと思う。そういう意味では悔しい部分もあるけど、「海外で一緒に」と言ってもらえたのは単純に嬉しいですね。

――海外でのライブ経験を積んだSiMが、『PARASITE DEJAVU 2024』でどんなライブを見せてくれるのかも楽しみです。

山中:SiMは、ライブのしかたがちょっと変わったような気がするんですよ。 違う世界を見たことで、お客さんに対しての説得力も増しているというか。

Masato:世界中飛び回ってこんなにライブしてるんだから、飽きてないのかな? って思うんですよ。だけどSiMは絶対に同じライブにならないように、いつも何か考えているからすごい。よく行く場所で、前と同じような流れで、同じ曲をやったとしても、何かを言ったりやったりすることで「あの年のあの場所で見たSiM」という印象をちゃんとお客さんに植えつけているんですよね。海外に行ったら、ライブをこなしがちになる印象があるんです。なぜかというと、海外のバンドが結構そういう感じだから。「場所が変わってもライブは変わらない」というのも一つのやり方だけど、SiMはそうじゃなくて「どれだけ飽きてもやるんだ」という意識をすごく感じる。それは本当にすごいことだと思います。

Masato(coldrain)

――coldrainは、飽きとの戦いとどのように向き合っているんですか?

Masato:僕らは元々頭が固くて、昔は週3~4日はスタジオに入って練習してたんですよ。だけどライブをしたら全然練習通りにいかないから、悔しくて。それで「SiMはどうしているんだろう?」と思って聞いてみたら、「練習したらライブがつまんなくなるじゃん」と言われたのをすごく覚えてます。

MAH:俺、そんなこと言ってた?

Masato:MAHじゃなくて、他のメンバーだったかもしれない。そう言われた時に「練習しない」という準備のしかたもあるんだと気づいて。要は、ライブで大事なのは「いかに楽器が上手くなれるか」だけじゃないということですよね。人間らしく、完璧にやろうとしない。それでたまに本当にズッコケるような感じになることもあるけど、人間だからずっと安定しているなんてことはなくて、それこそが本来あるべき姿だと思うんですよね。そういうふうに、SiM含め「ライブがいいな」と思うバンドからもらう一言が、自分たちの糧になっていたりします。

――DAY2のタイムテーブルは既に発表されています。トッパーはSPARK!!SOUND!!SHOW!!で、The BONEZを経て、3組目がcoldrain。SCANDALを挟んで、5組目がSiM。その次がHEY-SMITHなので、ここはTRIPLE AXEのバンドが連続している。トリ前は同年代のgo!go!vanillasで、全バンドが繋いだバトンを受け取ったオーラルが一日を締め括るという流れです。

山中:タイムテーブルを組む時に一番悩んだのは、TRIPLE AXEの3バンドをどう離すかということですかね。The BONEZのあとにSCANDALっていうのは、俺的になんかしっくりこなくて。だったら、coldrainに上手いことバトンタッチしてもらおうと。

Masato:なるほど。だったら全力で、SCANDALが出てきづらくなるようにライブをしようかと思います(笑)。

山中:SiMは2019年にトリ前をやってもらって。その時のライブが強すぎて、 俺ら4人「ちょっとヤバいかも」って言ってた記憶があるんですよ。MAHさんがMCで言っていたことの中には、今でも継続して自分の心に残っているものもある。イベントとの関係性の濃さを考えたら今年もトリ前でよかったのかもしれないけど、やっぱり初年度にやってもらっているからということで、今年はタイムテーブルの真ん中の位置をお願いしました。イベントって全部がきれいに流れてくれてないと、上手いこといかないじゃないですか。SiMが真ん中にいてくれたらイベントも絶対ダレへんやろうし、すごく安心感がある。その次のヘイスミは初出演ですけど、2019年に『PARASITE DEJAVU』を始める時に、俺らは泉大津でやりたいと思ってたから、(ヘイスミ主催、同じく泉大津フェニックスにて開催の)『HAZIKETEMAZARE FESTIVAL』があったので猪狩さんに相談したんですよ。

――そうだったんですね。

山中:タイムテーブルは、イベント全体の流れやお客さんの動きも想定しつつ、出てもらうバンドとのストーリーも踏まえて組んでます。トリ前のバニラズは、メジャーデビューしたばかりの頃からツーマンしてたし、ずっと一緒にやってきたバンドで。だけど毎回一緒にやるわけでもなく、お互いの道を行きながらときどき一緒にやるみたいな、適度な距離感のある関係性。前回一緒にやった時からの成長をトリ前で俺らに見せつけてほしい。バニラズがこのメンツの中でライブをやることってそんなにないと思うんですよ。俺らが好きな先輩のあとに、バニラズがどんなライブをしてくれるのかもめっちゃ楽しみ。いつものバニラズのライブとはまた違う、さらに上のライブをしてくれるんじゃないかと期待してます。

山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)

――初年度と同じ泉大津フェニックスに、ロックバンドだけを集めるという原点回帰は、最近のオーラルの活動を見ていると納得できる流れだなと思いました。MAHさんは最近のオーラルのことを、どのように見ていますか?

MAH:大変素晴らしいんじゃないでしょうか(笑)。

山中:あははは!

MAH:俺からすると、オーラルって出会った頃からわりと今の感じだった。ステージが大きくなっていっても、印象はいい意味でずっと変わってないんですよね。大きい会場でのライブを観ても、「そういえばあの時から変わってないな」と感じる。バンドを始めた時って、夢しかないじゃないですか。だいたいの人は現実を知らないまま夢だけ持って楽器を始めて、自分の憧れているバンドのステージを想像しながら、「俺もあそこに立つぞ」ってバンドを始める。だから最初は、見合っていないサイズの服を着ているようなライブになっちゃうんです。だいたいのバンドは途中で「あれ? 違うかも」「俺にはこの服まだ早いわ」と気づいて、自分に見合ったライブをするようになる。そうやって「目の前のお客さんに対して何をするか」を考えられるようになってからが、本当のスタートだと思うんです。だけどオーラルは同じサイズの服を着続けてきたんだろうなって。それって大変なことだったと思うんですよ。突き通し続けたからカッコ良い。稀有な存在だと思ってます。それはすごいなーって思う。

山中:ありがとうございます。恥ずかしいー!(笑)

――Masatoさんは「DUNK feat.Masato (coldrain)」でのコラボがあったので、最近はオーラルと一緒にライブをする機会も多かったと思いますが。

Masato:今までずっとプロフェッショナルという印象を持っていたんですよ。決めきっていくところも抜くところもちゃんと計算してライブしてるんだろうなと。だけど今年バックヤードも含めて見て分かったのが、めちゃくちゃ波があるってこと(笑)。

山中:怖いなー。見られてるなー。フェスで何回か「助かったっす、危なかったっす」ってことがあって(笑)。

Masato:ハハハ(笑)。その波がどこから生まれるのかというと、演奏の良し悪しじゃなくて、人を巻き込みたいという気持ちから生まれている感じがしたんですよ。アリーナとかデッカいところでやってるやつらのわりには、最前のお客さんに伝わってなさそうな空気だったら、気にしちゃって、めちゃくちゃダメなライブするんだろうなと。最初は固いライブをするメジャー感のあるバンドだと思っていたけど、いつまでもインディーズバンドらしくて、人間味があるなと感じたんですよね。

MAH(SiM)

――『PARASITE DEJAVU 2024』も人間味溢れるイベントになりそうな予感がします。最多出演者のMAHさんは、『PARASITE DEJAVU』に対してどんな印象を持っていますか?

MAH:俺らの世代には全くない発想を感じますね。俺ら(SiM)が初めて出た2019年はSKY-HIがいたんですよ。正直「上手く馴染まないんじゃないか?」と思ってたんですけど、ちゃんとオーラルが上手いこと絡んでいて。アートカルチャーとの絡み方を見ていても、「ああ、俺には真似できないな」って思いました。ポーカーでもただ強いカードを揃えるだけだと、「役は何もできませんでした」という可能性もあるじゃないですか。俺も自分でフェスをやってるから、そういう危険性があることは分かっているけど、上手く1つの空気にまとまっていたからすごいなって思いました。それは呼んだ側の気遣いや種蒔きがあってこそだと思う。普段からいろいろなところを見て、いろいろな人と絡もうとしてる拓也たちならではのイベントだなと感じましたね。

――そういえばこの3人には、フェスやイベントを主催しているバンドマンだという共通点がありますね。仲間のバンドと一緒にライブをやる場を、どういう思いで作っているんでしょうか?

Masato:僕らより少し上の世代の人からしたら、バンド主催のフェスといえば『AIR JAM』だと思いますけど、僕はそこを見られていなくて。その下の世代である10-FEETが作った『京都大作戦』に出してもらった時に、「バンドが主催するフェスって、他のフェスとは空気が違うな」と感じたんですよね。出演者は全員主催のお墨付きをもらっているということで、お客さんの雰囲気も違って。自分は洋楽が好きで『SUMMER SONIC』や『FUJI ROCK FESTIVAL』を目指していたんですけど、『京都大作戦』に行った時に、血の通っているイベントの力を感じて、憧れるようになりました。「自分たちの地元にもそういうイベントがあったらいいな」と思って作ったのが『BLARE FEST』なんですよね。

MAH:俺も『大作戦』に出たのがデカかったです。MCではみんな10-FEETに向けて喋ってて、テレビに出てる人とか超有名な外タレが出てるわけじゃないのに、お客さんがパンパンに入ってて。いろいろなライブやステージ裏の雰囲気を見て、「こういうフェスもあるんだ」って感じました。俺にとっては、フェスといえば『サマソニ』だったんですよ。だけど実際に出てみたら、思っていたのと違って。みんな出番が終わったら帰っちゃうし、対バンを観ようという感じも全然ない。さっきMasatoが言っていたように、みんなお決まりのライブをして、曲をやったらパッと帰っていくような感じだったんですよね。だから『大作戦』で対バンのライブを観て、バックステージで酒を飲んで喋りながら、「俺の好きなフェスって、こっちだ」と思った。『大作戦』は牛若ノ舞台というサブステージがあって、「デカい方に出たいな」という気持ちを持ちながら若手バンドが上っていくんですけど、俺らも最初は牛若ノ舞台に出演したんですよ。試練というか夢を与えてもらった立場だったので、神奈川にバンド主催のフェスがないなら、俺らがやるべきなんじゃないかなと思って『DEAD POP FESTiVAL』を始めました。あと、これは俺の個人的な感覚ですけど、「人のふんどしで戦いたくない」みたいな気持ちもあるんですよ。誰かが作ったデカいフェスに出て満足するだけじゃなくて、自分の作った場で戦うことこそがロック、だからフェスをやりたい、という気持ちもあった。自分で作れば、ルールも自分で決められますから。俺らが『DEAD POP』を始めた2010年ごろはフェスが乱立していたし、ライブのルールがどうこうみたいな話って今でもあるじゃないですか。「これが俺の思う正しいロックフェス」というものを作ることで提示している感覚もあります。

山中拓也、Masato、MAH

――そしてSiMやcoldrainの世代に憧れてきたTHE ORAL CIGARETTESが、今は『PARASITE DEJAVU』を主催していると。

山中:俺は2人とはちょっと違う感覚でやってますけどね。『BLARE』にも『DEAD POP』にも出させてもらって、あと今の話を聞いていて思いましたけど、俺らはもっとお客さん目線。誰を呼ぶか考えている時も、当日にメンバーと袖でライブを観ている時も、完全にキッズの気持ち。「憧れてた人たちが出てくれて、嬉しい!」みたいな(笑)。

MAH:そもそも『PARASITE DEJAVU』ってフェスなの?

山中:形としてはフェスっぽくなってきちゃってますけど、フェスだとはあんまり思ってないですね。

MAH:対バンだよな。

山中:そう。サブステージを作らない理由も、そういうところにあって。

――その上で『PARASITE DEJAVU』は、どんな空間を目指していますか?

山中:バンド同士の関係性、相関図が見えるイベントにしたい。節目節目のタイミングで「今、オーラルの周りにはこういう人がいて、こういう雰囲気だよ」というのをお客さんに共有したいんですよね。出演者が気になったら調べてほしいし、「オーラルの好きな人たちなら私も好きかも」「帰ったらディグってみよう」というふうに楽しんでもらえたら嬉しい。自分自身、そういうふうに音楽をディグっていくことが多かったんですよ。ヒップホップで言うと、エミネムからドクター・ドレーに行って、50セントに行くみたいな。バンドで言うと、バンアパ(the band apart)を好きになって、「K-PLANって誰が所属してんやろ?」って調べてみたり。シーンごと好きになる楽しさみたいなものを、自分のファンにも知ってもらいたいんですよね。

Masato:1日でいろいろなバンドを観られる環境があると、シーンをより感じやすいよね。ONAKAMAと言われる3バンド=オーラル、ブルエン(BLUE ENCOUNT)、フォーリミ(04 Limited Sazabys)はSiMとHEY-SMITHとcoldrainの1つ下の世代という印象があるけど、いろいろなバンドがいて、浮こうと思えば自分だけ浮くことだってできるのに、シーンについてしっかりと考えているバンドたちが、どの世代にもいる気がするんですよ。

山中:そうですね。

Masato:必ずしもどこかに属する必要なんてないけど、「ここにいたいな」って何となく思う瞬間があるから一緒にいる。一旦抜けて自分たちのことだけをやる時期もあるけど、シーンをずっとどこかで意識している。そういうバンドがどの世代にもいるおかげで、お客さんも好きな音楽がどんどん増えていくと思うんですよね。……ただ、僕らも『BLARE』をやりながら困っていることがあって。お客さんが休憩する時間がない。「このバンドが観たい」ってタイムテーブルに丸を打った画像を上げている人の投稿を見てみると、みんな全部に丸を打ってるんですよ。それはもちろんいいことなんですけど、そのせいで協賛がとれないという。いろいろな企業のブースを作りたいと思っても、みんなずっとライブを観るのに忙しくて誰もブースに行かないとなったら、協賛にも失礼になるので。だから毎年、自分で自分の首を締めるような感じになっちゃっているんですよね(笑)。

Masato、山中拓也、MAH

――嬉しい悲鳴と言いますか。主催者ならではの声もいただいたところで、そろそろ締めに入りましょう。ライブ当日の意気込みをお一人ずつお願いいたします。

Masato:The BONEZとSCANDALに挟まれているので、おじさんたちにも、キラキラした子たちにもできないライブで魅せたいなと思います!

MAH:今年『RUSH BALL』が台風で飛んじゃったので、『RUSH BALL』の分までやろうかなと。俺、泉大津フェニックスが大好きなんですけど、去年はアメリカに行ってて『ハジマザ』にも出られなかったので、ちょっと間が空いちゃってるんですよ。めちゃくちゃ楽しみにしてるし、そういう時の俺らはいつもいいライブをする。 期待しててください。

山中:『PARASITE DEJAVU』の2日目は、僕らにとってご褒美タイムみたいなところがあって。仲間がいると安心感とともにご褒美タイムを楽しみつつ、「これだけのバンドを呼んだからには」という責任感もあるので、自分たちが呼んだバンドたちに「クソみたいなライブやったな」と思われないように、しっかりと準備していきたいなと思ってます。あと、最近対バン相手から「オーラルのファン、ノリ方知らなくても頑張ってついてきてくれようとしてるやんって思った」と言われることがあって。音楽に対して前のめりでいてくれるファンがいるんやなって、最近になって改めて自分たちのファンの性格を知れたんですよ。そういう人たちに「オーラルの周りにいる人たちの空気感、最高やな」「これからもオーラルと仲良くしてほしいな」と思ってもらえるような、あったかい日にしたいですね。そういう空気をしっかりと作れるように、頑張りたいなと思います。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=大橋祐希

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