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春日大社の「源流」は大阪だった?枚岡神社が「元春日」と呼ばれる理由とは

草の実堂

画像 : 立派な中門・透き塀 著者撮影

大阪府東大阪市、生駒山の西麓にひっそりと鎮座する枚岡神社(ひらおかじんじゃ)。

河内国一宮として長い歴史を誇り、地元では古くから篤く信仰されてきました。

しかし、その存在は全国ではあまり知られていません。
さらに、この枚岡神社が「元春日」と呼ばれ、奈良の春日大社とも深い縁をもつことをご存じの方は少ないでしょう。

今回は、その知られざる由緒をひもときながら、枚岡神社の歴史と魅力をご紹介します。

枚岡神社の創祀と由来

画像 : 枚岡神社の本殿 著者撮影

枚岡神社の創祀は、初代天皇の神武天皇が即位される3年前と伝えられており、まさに神話の時代に遡ります。

神武天皇が東征に向かう際、天種子命(あめのたねこのみこと)が勅命を受けて国の平定を祈願しました。

そのとき、生駒山中の神津嶽(かみつだけ)に、天児屋根命(あめのこやねのみこと)と、比売御神(ひめみかみ)の二柱を祀ったのが、枚岡神社の始まりとされています。

画像 : 『神武天皇東征之図』 八咫烏に導かれる神武天皇 public domain

のちに社殿は現在の地へと移されましたが、神津嶽は今も創祀の地として神聖視されています。

その後、都が難波宮に置かれた頃、難波宮の鬼門を守護する役割も担い、社殿は現在の地へと移されました。

その後、社伝によれば、778年(宝亀9年)に武甕槌命(たけみかづちのみこと)と経津主命(ふつぬしのみこと)をお迎えし、四柱を祀る現在の体制が成立したといいます。

枚岡神社が「元春日」と呼ばれる理由とは

画像 : 枚岡駅の線路沿いにある元春日の石碑 著者撮影

枚岡神社が「元春日」と呼ばれるのは、奈良の春日大社との深い関わりによるものです。

世界文化遺産にも登録されている春日大社は、平城京の守護神として創建され、武甕槌命(たけみかづちのみこと)、経津主命(ふつぬしのみこと)、天児屋根命(あめのこやねのみこと)、比売御神(ひめみかみ)の四柱を祀っています。

このうち、天児屋根命と比売御神の二柱は、もともと枚岡神社に祀られていた神々であり、春日大社創建の際に分祀されたと伝えられます。

こうした経緯から、枚岡神社は「元春日」と称されるようになったのです。

春日神と総称されるこれら四柱は、全国の春日神社の祭神として広く祀られています。

枚岡神社のご祭神とご利益

枚岡神社の主祭神である天児屋根命(あめのこやねのみこと)は、天照大神が天の岩戸に隠れた際、祝詞を奏上して岩戸開きを導いた神として知られています。

古来より神職の祖神とされ、国家安泰や家内安全、開運招福を祈る信仰を集めてきました。

その配偶神とされる比売御神(ひめみかみ)は、良妻賢母の象徴とされ、安産や子授け、災難除けなど、特に女性の守護神として広く信仰されています。

これらの二柱は、すでに前述の通り、春日大社の創建に際して分祀され、春日神の中心を成しました。

のちに鹿島神宮から武甕槌命(たけみかづちのみこと)、香取神宮から経津主命(ふつぬしのみこと)が加わり、春日四神が成立しています。

枚岡神社でも、現在はこれら四柱すべてを祀っています。

枚岡神社の見どころと、ユニークな祭礼

近鉄奈良線の枚岡駅を降り、線路に沿って走る道路を東側に渡ったところに、石の鳥居があります。

そこから東に向けて、玉砂利の敷かれた参道が続きます。

画像 : 石の鳥居と参道風景 著者撮影

参道の奥の階段を上ったところに、拝殿があり、その奥に中門・透き塀と四祭神を祀る本殿が4つ並んで建っています。

画像 : 拝殿に向かう石段、右手に鹿の像の手水舎があります 著者撮影
画像 : 立派な中門・透き塀 著者撮影

枚岡神社は、生駒山の山麓でも比較的高い場所に位置しており、拝殿から南側へ進み、摂社・末社を抜けた広場からは大阪市街を一望する眺望が広がります。

参拝の際には、この景観も大きな魅力のひとつです。

枚岡神社の祭礼のなかでも特に特徴的なのが、毎年12月23日に行われる「注連縄掛神事(通称・お笑い神事)」です。

これは、主祭神の天児屋根命が天照大神の岩戸隠れの際、美声で祝詞を奏上し岩戸開きに貢献したという神話に由来するとされています。

神事では、神職が大声で「ワッハッハ」と笑い、続いて参拝者も声を合わせて笑い声を響かせます。
こうして繰り返し笑うことで、天照大神が再び岩戸に隠れることがないよう祈念し、注連縄を掛ける儀式が執り行われます。

年の瀬にふさわしく、笑いによって邪気を払い、新年を晴れやかに迎えようとする神事です。

長い歴史を刻む枚岡神社は、今もなお神話の面影を残しながら、人々の暮らしに寄り添い続けています。

参考 : 『枚岡神社 公式サイト』『境内説明板』他
文:撮影 / 草の実堂編集部

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