目標達成に役立つSMARTの法則。メリットや方法、具体例を解説
目標設定のための重要なフレームワークである「SMARTの法則」。有効な目標を策定し、それを達成するために努力することで、個人や組織の成長が促進され、人事評価やキャリア設計にも大きな恩恵をもたらします。
この記事では、SMARTの法則の基本的な概念やそのメリット、目標設定の具体例について分かりやすく説明します。
SMARTの法則とは?
効果的な目標設定を行うためのフレームワーク です。これを使用することで達成状況を測りやすい目標を掲げられ、チームメンバーが目標に向かって行動しやすくなるのが利点です。実際に多くの研究によって、SMARTの法則に基づく目標設定が従業員のパフォーマンスを大幅に向上させることが示されており、さまざまな企業で取り入れられています。
SMARTの法則を構成する5つの要素
以下の5つの要素から成り立っており、これらを満たすことで達成しやすくなります。
Specific(具体的):内容がはっきりしている Measurable(測定可能):進捗を確認できる指標がある Achievable(達成可能):現実的に果たせる内容 Relevant(関連性):組織の大きな目標や個人のキャリアに合致している Time-bound(期限):いつまでに達成するかの期限がある
SMARTの法則はジョージ・T・ドラン氏が提唱
この法則は1981年に経営コンサルタントのジョージ・T・ドラン氏によって経営者向けに提唱され、その後ビジネスパーソンに広く普及しました。提唱から40年以上が経った今では「時代遅れ」といった評価を受けることもありますが、具体的かつ測定可能な目標を設定するための有効性は依然として高く、多くの企業で積極的に活用されています。
また、これまでの間にさまざまな経営コンサルタントや専門家によって発展型も生み出されました。新しい発展型とともに、これからも目標設定の基本的なフレームワークとして広く使われ続けるでしょう。
SMARTの法則を活用するメリット
この法則を利用することによって得られる4つのメリットについて解説します。
具体的な目標設定により業務が効率化
具体的で明確な目標があることで 業務の優先順位や時間配分を効果的に管理でき、自分の役割も理解しやすくなる ため、従業員はそれぞれのタスクやプロジェクトに集中できます。これにより、業務効率や生産性が高まり、会社全体の成果に大きく寄与するでしょう。
モチベーション向上と維持につながる
達成できそうな目標を掲げることで従業員は主体的に動くようになり、 職務への意欲が持続しやすくなります 。また、自ら設定した目標をクリアすることで自己成長を実感しやすく、長期的にもモチベーションを維持し続ける基盤となるでしょう。
実績が可視化され評価基準が明確になる
内容が明確かつ達成度合いを測れる目標を決めることは、人事評価にも役立ちます。数値を伴った実績が可視化されるため、 上司は自信を持って評価を行うことができ、従業員も自分の成果を客観的に理解しやすくなります 。
習慣化すれば個人の成長度合いが大きく向上
SMARTの5つの要素を意識した目標設定を日頃から行う習慣が身に付くと、成果を上げやすくなるだけでなく、その過程で スキルの向上が期待できます 。目標に向かって着実に計画性を持って取り組める力が身に付けば、従業員自身がキャリアプランを設計する際にも役立ちます。
SMARTの法則を利用した目標設定の仕方
ここでは、5つの要素ごとに実際にどのような目標を設定すればいいか、事例を交えて解説します。
Specific(具体的)
曖昧な目標では、何をしていいのか分からず行動につながりにくくなってしまいます。 「何を」「どのように」達成するのかを明確にした目標 を立ててみましょう。
以下は、抽象的な目標をSpecificな目標に変換した例です。
営業成績を向上させる→来月のうちに新規顧客を3件獲得 新規事業を成功させる→半年以内に新サービスのユーザー数を1,000人に増加 英語力を向上させる→3ヶ月後にTOEICのスコア700点以上を獲得
Measurable(測定可能)
せっかく目標を立てても、できているのかを測定できなければ意味がありません。 指標となる数値(KPI)を決め、客観的に達成度を判定 できるようにしましょう。
以下にKPIの具体例を示します。実際に目標を立てる際は、明確な数値を設けることが重要です(新規顧客獲得数100件、WEBサイトへのアクセス数1300件、従業員満足度80%など)。
営業:新規顧客数、売上高、顧客単価 マーケティング:WEBサイトへのアクセス数、コンバージョン率、顧客獲得単価 人事:従業員満足度、離職率、採用コスト
Achievable(達成可能)
高すぎる目標はモチベーション低下や挫折を招く恐れがあります。着実に目標をクリアしていくことで自信や意欲も高められるので、 目標のレベルが適切かを見極めましょう 。
クリアできるレベルかどうかの判断には、以下の方法が役立ちます。
過去のデータの分析 競合他社の状況の参照 専門家への相談
例えば、「新規顧客を60人獲得する」という目標に対して、過去データを分析し、前々年度が30人、前年度が40人と増加傾向があれば、クリアできるレベルと判断できます。
Relevant(関連性)
その目標にした理由や 目標をクリアした先に何が得られる か、といったことまで考慮するのが重要です。
例えば以下のような視点が挙げられます。
会社のミッションやビジョンと一致しているか 部署の目標に貢献しているか 個人のキャリアプランに紐づいているか
Time-bound(期限)
「いつかできたらいい」というような期限のない目標は、ビジネス視点でも目標とはいえません。明確な期限がなければ、計画性を持って取り組むことが難しく、モチベーション維持も妨げます。Achievable(達成可能)な目標にすることが大切であると同様に、 適切な期限設定も重要 です。
期限を決める際のコツや注意点などは以下のとおりです。
短期的、中期的、長期的とフェーズをわけ、それぞれの期限を決める 目標の難易度に応じて適度な期限を設ける 必要に応じて期限の延長や短縮を行う
SMARTの法則の具体例
ここでは、実際のビジネスシーンでどう適用すればいいか職種ごとに具体例を紹介します。
営業
営業活動において明確な目標が示されると、具体的なステップで行動しやすくなり、チームでの協力体制も生まれやすくなります。
例えば、以下のような使用例が挙げられます。
顧客関連
来月中に新規顧客を3件獲得する。 今期中に既存顧客との取引額を10%増加させる。
チーム成績関連
今四半期中に営業チームの受注率を20%向上させる。 上半期の営業成績で部署内1位のチームとなる。
マーケティング
マーケティング分野で明確なKPIを設定すると、施策の進捗状況や達成度を把握でき、戦略の見直しが可能となります。
例えば、以下のような使用例が挙げられます。
集客関連
次回のウェビナーの参加者数を前回の150人から250人に増やす。 今月中にブログ経由の問い合わせを50件獲得する。
販売関連
今期中に新商品を500個売上げる。 下半期における定期購入者の割合を20%増やす。
採用(新卒・中途)
指標を数値化した目標を掲げることで、採用活動の有効性を評価する手助けとなります。
例えば、以下のような使用例が挙げられます。
採用人数関連
来年度の新卒採用で営業職を10名採用する。 半年以内に経理担当を2名中途採用する。
採用活動関連
今年度中にキャリア人材の採用面接を5名以上実施する。 キャリア採用の採用率を15%まで増やす。
SMARTの法則を活用するコツ
ここでは、SMARTの法則をうまく活用するためのヒントを紹介します。
目標設定に柔軟性を持たせる
目標設定は一度決めたら変更できないものではありません。市場環境やビジネス状況の変化に応じて、目標を柔軟に見直すことが重要です。また、 全ての要素を必ず満たす必要もなく、その時々の最適な目標設定 に努めましょう。
状況変化への対応を行う
設定した目標に取り組む中で、周囲の環境が変わることがあります。このような場合は、迅速に対応することが重要です。市場の動向や経済状況を把握したうえで対応したり、上司と部下が意識をすり合わせる機会を設けて、 進捗確認や目標の見直し を行ったりすることが大切です。
SMARTの法則の発展型
この法則にはさまざまな発展型が存在します。それぞれの概要と特徴を解説します。
SMARTERの法則
SMARTに「E」と「R」を追加したものです。
Evaluated(評価される):上司による評価がなされるか Recognized(承認された):上司の承認を得られる目標か
または
Rewarding(報酬を与える):報酬に結びついているか
このように、上司によって適切に評価・承認される仕組みが確立しているか、または報酬につながるかどうかという観点も目標達成を促進する重要な要素です。
SMARTTAの法則
SMARTに「T」と「A」を追加したものです。
Trackable (追跡可能な): 進捗を追跡できるか Agreed(合意された):チームや組織全体が合意しているか
これらの観点は設定した目標が形骸化せず、実際に機能するために欠かせないポイントです。より実効性のある目標設定が可能となり、チーム全体で一体となって成功に向かって進むことができるでしょう。
SMARRTの法則
SMARTに「R」を追加したものです。
Realistic(現実的):現実的で合理的な内容か
従来のSMARTよりもさらに具体的で合理的な目標を立案することが可能です。取り組む意義や達成感が得られやすくなり、高いパフォーマンスを引き出すことができるでしょう。
SMARTの法則と併用できるフレームワーク
SMARTの法則と組み合わせて効果的な目標設定を行うためのフレームワークを2つ紹介します。
OKR
Objectives and Key Resultsの略で、目標(Objectives)と成果指標(Key Results)を一緒に決めるフレームワークです。SMARTの法則に基づいた具体的な成果指標を設けることで、進捗の把握が容易になります。組織が挑戦的な目標を設定するのが特徴で、従業員が同じ目標に向け努力をすることで組織全体の一体感が生まれます。ただし、OKRは人事評価に連動させないのが一般的です。
MBO
Management by Objectivesの略で、個人が自らの目標(Objectives)を管理(Management)するために活用される、目標管理制度と呼ばれるフレームワークです。従業員が自身の目標を組織全体の目標と関連付けて設定することから、人事評価や賃金制度にも役立ちます。SMARTの法則を用いて、明確かつ測定可能な目標を設定することで、達成度を客観的に評価しやすくし、公正な人事評価が実現できます。
まとめ
今回は、目標設定に役立つ「SMARTの法則」について、その特徴やメリット、活用の具体例、発展型、関連するフレームワークを紹介しました。
進捗や達成度を明確に把握できる目標を掲げることは、組織や個人の成長を促し、正当な人事評価にも役立ちます。本記事を参考に、ぜひSMARTの法則を活用して効果的な目標を作成してみてください。
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