「休刊?休むわけねえよ!」ヤングマシンは続くよどこまでも
1972年創刊と、日本の老舗モーターサイクル専門誌としてバイクメディア業界を牽引してきた「ヤングマシン」が、オンライン事業に一本化してさらなるパワーアップを図るという変革期を迎えました。これまで精力的に情報発信してきた「ヤングマシン」Webサイトでの記事をはじめ、電子版記事やSNS、さらなるPR活動、オンラインサロン事業など多岐に渡ってアプローチしていくそうです。50年以上に渡ってバイクファンを楽しませてきた「ヤングマシン」が今後どのような歩みを見せていくのか、その先頭に立つ統括編集長の山形悠貴氏に話を伺いました。
ヤングマシン編集部 兼Webチーム
統括編集長
山形 悠貴 氏
1984年生まれ
大学卒業後、大手自動車部品メーカーにて勤務。生産管理部にて新製品の生産準備、製造ラインの立ち上げや子会社への移管業務を行う。その後は内外出版社の自動車バイヤーズガイド「月刊自家用車」編集部へ。「オートメカニック」編集長、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」実行委員を務める。その後「ヤングマシン」へ。現在はヤングマシン統括編集長。クルマもバイクも丸目が好き。房総の温泉やサウナ、居酒屋でよく見かけることができる。
ヤングマシンのこれまで
内外出版社と「ヤングマシン」の成り立ちについて教えてください。
「内外出版社の設立は1959年、『月刊自家用車』という専門誌の創刊とともに創業しました。創業者である初代社長は新聞社の出身だと聞いております。『これからモータリゼーションの時代が来る』との考えから、内外出版社を立ち上げたのではないでしょうか。現在は紙媒体や電子書籍を含む多種多様な専門誌や書籍を発行していますが、元々はモビリティ関連を得意とする出版社として生まれたのです」
「バイク専門誌『ヤングマシン』が創刊したのは1972年で、当時のバイク人気の高さから、バイクメディアの必要性を感じたことが発端だと聞いています。創刊当初は、バイヤーズガイドを中心とした総合情報誌といった位置付けでしたが、『ヤングマシン』の代名詞でもあるスクープ情報が人気となり、それが後に『ヤングマシン』らしさへとなっていきました。
2017年にはWebメディア『Webヤングマシン』がスタートしまして、紙媒体である『ヤングマシン』は2025年5月公開の2025年7月号から『ヤングマシン電子版』へと移行しました」
現在のヤングマシンの取り組み
「ヤングマシン」を愛読してきた読者にとっては、紙媒体がなくなるのは寂しいことかなと思ってしまいます。
「そういった声は多くいただいていますし、私たちも思うところがないわけではありません。電子化に踏み切った一番の理由は、『ヤングマシン』をよりパワーアップさせることにあります。これまで、紙媒体の『ヤングマシン』と『Webヤングマシン』を並行して制作してきましたが、それらのリソースを電子版移行によって、より集約できる体制にできたので、より力の入ったコンテンツをお届けできるかと思います」
「ヤングマシン」の電子化に踏み切る決め手になった出来事は何でしょうか。
「『Webヤングマシン』が、事業として成立するまでになったことですね。社内では数年ほど前から、紙媒体から電子媒体への移行について議論が交わされていました。この頃からWebの情報量が圧倒的に多くなり、Webメディアが紙媒体を凌ぐようになっていましたからね。『Webヤングマシン』が非常に好評だったことから、タイミングよく電子化に踏み切れたというのが率直な思いです。
紙媒体とWebメディアの編集部を分けずに一本化していたのも、この頃から電子化を視野に入れていたこともあります。速報性が求められるWebと作り込みが必要な紙媒体の両方をこなすのは大変でしたが、結果的に培ったノウハウを最大化できるような仕組みができたと思っています」
これからのヤングマシン
「ヤングマシン電子版」の魅力とは何でしょうか。
『ヤングマシン電子版』は、現時点では完全無料になります。いわゆるフリーペーパーの形でして、『Webヤングマシン』をはじめ、一部電子書籍サイトからもご覧いただけます。
電子化したことで、『Webヤングマシン』からご覧いただければ、動画の埋め込みや大きなサイズの画像のスライドショーなど、紙媒体ではできなかったことが可能になりました。音を聴く、音を楽しむこともバイクの魅力のひとつなので、この機能でサウンドをお届けできるようになったのは嬉しいですね。
『ヤングマシン電子版』第1号では、特別付録として『北信州の絶景ツーリングガイド“小川アルプスラインガイドブック”』と、1988年5月号の2スト250レプリカ特集を抜粋した『復刻版ヤングマシン』です。特に復刻版は、当時を知るライダーには喜んでいただけると思っています。
電子書籍という形式は、新しい発想というわけではないので、ヤングマシンならではの仕掛けをしていこうと考えています」
バックナンバーは老舗専門誌の強みだと思います。昔からのファン以外の方も楽しめるでしょうね。
「過去から積み上げた資産は、大きな武器だと考えています。今回初の試みなので、『復刻版ヤングマシン』への反応を見ながら継続を検討したいと思っています。
『ヤングマシン電子版』は始まったばかりで、『復刻版』と同じくご覧くださる皆さんの声や反応をいただいて、より良い形に進化させていきたいんです。
電子版という形になって、より多くの方に見ていただけるようになりましたが、『ヤングマシン』というメディアの本質を変えるつもりはありません。『Webヤングマシン』に一本化する選択肢もあった中で、電子版という形態を選んだ理由が“ヤングマシンというメディアとしての軸を大事にしたい”からなんです。『ヤングマシンってどんなメディア?』と問われたときに『これです』と答えられる母艦となる存在ですね」
これまでの「ヤングマシン」は変わらない、ということですね。
「『ヤングマシン』らしさが溢れるような記事は、ずっと続けますよ。作り上げてきた人たち、そして媒体を愛読してくれた方たちによって『ヤングマシン』というブランドが作り上げられたのですから、その系譜を守りつつ、攻めの姿勢でさらに進化させていきたいんです。
『ヤングマシン』は定期刊行物ではなくなりましたが、今後は不定期に紙媒体として発行していく予定です。こちらにも期待していただきたいですね」
ヤングマシンが大事にしたいライダーとの接点
ライダーにとって「ヤングマシン」はどんな存在であり続けたいですか。
「創刊からのポリシーである“ヤング・アット・ハート”をお届けする媒体であり続けたいと思っています。“年齢に関係なく、心身ともに若々しい”を意味した言葉でして、『ヤングマシン』の名の由来がここにあります。今聞いても気恥ずかしい媒体名ですが、創刊当時も同じような空気感だったそうです。でも、これほどふさわしいライダーのための言葉はないな、と思っています。
定期刊行物であることを卒業するときに『休刊?休むわけねえよ!【ヤングは続くよどこまでも】』と銘打ったWeb記事をアップしました。負け惜しみでもなんでもなく、ヤングマシン編集部員の想いをそのまま表現したんです。『ヤングマシン電子版』は、パブリッシング(出版)の未来の形を模索するひとつのトライ、次のステップへの挑戦です。大変ですが、紙媒体では実現できなかった新たなコンテンツをお届けできるので、取り組んでいて楽しいことが多いですね」
生まれ変わったヤングマシンに期待!
紙媒体の需要減、書店の減少といった状況から、紙媒体を発行し続けるのが難しくなり姿を消したバイク専門誌は少なくありません。そんななかで届いた定期刊行物としてのヤングマシンが終わるとの一報に「あの歴史あるヤングマシンが……」と思われた方もいることでしょう。しかし今回のインタビューで山形統括編集長から発せられた言葉にはネガティブな要素はなく、新しいことに取り組める楽しみに満ちたものばかりでした。生まれ変わったヤングマシンがこれからどんなコンテンツを発信するのか、楽しみにしましょう!
お問い合わせ先:ヤングマシン