ブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラ 〜 毎日の食卓に小麦本来の力を引き出した食事パンを。食事パンの魅力とおいしさを広める
日本でパンといえば、菓子パンの多い印象がありませんか。
食事で食べるパンは、食パンやフランスパンなど、菓子パンに比べると思い浮かべる種類が少ないかもしれません。
しかし、食事で楽しむパンもいろいろなものがあるのです。
食事で食べるパンにこだわったパン店が、福山市にあります。
「ブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラ(boulangerie et traiteur Fujiwara)」です。
食事パン以外にも、いろいろな具材が楽しめる総菜パンも人気があります。
さらに、クロワッサンや菓子パンなど定番パンもラインナップ。
ブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラのパンやこだわりについて迫ります。
ブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラとは
ブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラは、福山市東部の春日町五丁目にあるパン店です。
2019年(令和元年)7月に、市内北部・加茂町でカフェを併設したパン店「ソウモクコーヒー・ブランジェリー・ブラッスリー・フジワラ(SOUMOKU coffee BOULANGERIE BRASSERIE Fujiwara)」として創業しました。
2023年(令和5年)2月に加茂町の店舗を製造拠点(パン工房)に特化させるとともに、販売拠点を「ブランジェリー・エ・ブラッスリー・フジワラ」として大黒町に移転(2024年(令和6年)9月に閉鎖)。
2023年12月には製造拠点を春日町に移転するとともに、同所で「ブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラ(以下「フジワラ」と記載)」として販売を開始しました。
フジワラは、ハード系などの食事パンや総菜パンを看板とする店です。
フジワラは店内撮影禁止です。取材時は特別に撮影許可をいただきました。
店内にはさまざまなパンが陳列されるとともに、おいしそうな香りが漂っています。
食べごたえのありそうな食事パン、いろとりどりの具材が特徴的な多くの総菜パンが目を引きます。
もちろん、定番のパンやデザート系のパンなどもラインナップ。
どれを買おうか迷ってしまいそうです。
ほかに、イベント出店などもおこなっています。
ブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラの人気・おすすめのパン
2024年(令和6年)9月時点、春日店の情報。日によっては取り扱っていない商品あり
フジワラのパンのなかから、お店のおすすめの商品や人気の商品を紹介します。
パン・ド・カンパーニュ
食事パンを得意とするフジワラの商品のなかでも、お店のイチオシなのが「パン・ド・カンパーニュ」です。
北海道産キタノカオリ(小麦の品種)の全粒粉とライ麦を使っているのがポイント。
さらに石臼挽きの小麦粉と自家製酵母を使って、長時間熟成させています。
「湯種仕込み」で、うまみのある食事パンです。
食べると、表面(クラスト)は香ばしく歯ごたえがあります。
いっぽうで、中の生地(クラム)はモッチリとした食感であるとともにシットリ感もあり、噛みしめると少しずつ口内にパンのうまみが広がってきました。
バゲット
食事パンの代表格である「バゲット」、いわゆるフランスパンもフジワラの人気商品です。
パン・ド・カンパーニュと同じくキタノカオリの全粒粉とライ麦を使用し、石臼挽きの小麦粉と自家製酵母による長時間熟成で、湯種仕込み。
食べると表皮はパリッとしていて香ばしく、中の生地はモッチリとした弾力のある食感で、シットリ感もあります。
噛むほどに感じられるパンのうまみと、かすかな甘さが印象的でした。
バゲットは、形状が2種類あります。
どちらも細長いのですが、ひとつは先端が丸まった棒状で、もうひとつは先端が尖った形状です。
また、サイズも通常サイズとミニサイズがあります。
食Pain(パン)
食事パンの定番である食パンの「食Pain(パン)」は、フジワラでも人気があります。
食Painも高加水・長時間熟成・湯種仕込みです。
食Painの上部には、粉で葉の模様が描かれていて、おしゃれです。
まずそのまま食べてみると、モッチリとした弾力が楽しめる生地で、パンのうまみとほのかな甘さ、かすかに感じる酸味が印象的でした。
トーストにしてみると、サクサクとした食感と香ばしさが加わり、さらにおいしくなりました。
なお、食Painはミニサイズも販売しています。
また、食パンには食Painのほかにもう1種類「ONE(角食パン)」があります。
こちらはバターと生クリーム・ハチミツを使用したリッチな食パンです。
フワフワッとした食感をしています。
サンドイッチ フィグログ
多数ラインナップしているサンドイッチのなかで、お店のおすすめが「フィグログ」です。
名前のとおり、フィグログをメイン具材として挟んでいます。
フィグログとは、ドライイチジクをメインにプルーンやクルミ・ハチミツを練り合わせて丸太状にしたものです。
フジワラのフィグログは自家製で、それをスライスして使用。
フィグログとともにスペインの生ハムであるハモンセラーノ、イタリア産ブルーチーズのゴルゴンゾラも挟んでいます。
挟むパンは、バゲットです。
食べるとバゲットの歯ごたえある食感と、ネットリとしたフィグログの食感と甘味と塩味、生ハムの弾力と塩味、チーズの塩味と特有の風味が一体となり、独特の味わいを楽しめました。
フィグログのサンドイッチは、ワインとの相性が抜群です。
サンドイッチ プーレロティ
サンドイッチの「プーレロティ」も、バゲットを使っています。
具材はタップリと挟まれたニンジンのラペ、そして細切れにしたプーレロティです。
バゲットのしっかりとした歯ごたえと噛みしめると感じられてくるうまみに、ニンジンのやさしい甘味、丸鶏のシットリとした舌触りと塩味と鶏肉のうまみが混じり合い、最高のハーモニーを楽しめます。
翌日以降は「リベイク」でおいしく食べられる!
フジワラは、パンの「リベイク(RE BAKE)」を推し勧めています。
パンを買った当日および翌日は、軽く霧吹きをしたあとアルミ箔につつんで、オーブンを使用してお好みで3〜5分焼きます。
時間は、好みで調整してください。
なお、焼いたあとさらにアルミホイルを開いて1〜2分焼くと、表面がパリッとします。
好みでやってみてください。
翌日までに食べられない場合は、買って帰ったらすぐ、パンをラップでくるんで冷凍保存しましょう。
食べるときは、食べる前に冷凍庫から取り出して冷蔵庫内、または室内でパンを解凍します。
解凍後、さきほどの方法でリベイクしましょう。
食事パンや総菜パンを中心に、こだわりのパンを提供するブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラ。
代表の藤原建作(ふじわら けんさく)さんに話を聞きました。
ブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラの代表・藤原建作さんにインタビュー
食事パンや総菜パンを中心に、こだわりのパンを提供するブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラ(boulangerie et traiteur Fujiwara)。
代表の藤原建作(ふじわら けんさく)さんに話を聞きました。
親戚がパン屋でパンが身近だったが、パン屋になりたい気持ちはなかった
──パン屋を目指したきっかけが知りたい。
藤原(敬称略)──
実は、おじがパン屋をやっていたんです。
だからパン屋もパン自体もとても身近な存在でした。
ただ、だからといってパンが特別な存在ではなくて。
パンが好きだったとか、パン屋になりたいとかは思っていませんでした。
最初はオートバイのロードレーサーになりたくて、その次は総合格闘家を目指し、ひたすら練習する日々を送っていましたね。
でも年齢的なことなどがあって断念して、働くことにしたんです。
それで、どんな仕事をしようかと考えたとき、まっさきに思いついたのが、子どものころから親しんでいたパンだったので、おじがやっているパン屋で働くことにしました。
──そのころから自分の店を持ちたいという気持ちがあった?
藤原──
いいえ。まだこのころは自分の店を持ちたいという気持ちはありませんでした。
ただ、おじの店でパンづくりの基礎を習得できましたし、そのときの経験は今でもとても役に立っています。
おじのパン屋は全国のいろいろなところに店があったので、働く場所もいろいろ。
北海道を皮切りに、横浜など各地で仕事をしました。
ある程度働いたあと、別のこともやってみたいと思って、おじのパン屋を辞めて地元の福山に帰省することに。
でもやっぱりパンの仕事をやりたいと思って、大阪に住んでいたときに気になっていたパン屋で働くことにしました。
自分の店を持ちたいなと思い始めたのは、ここで働いていたころです。
そしてだんだんと「食事パンがメインの店をしたい」「食事と楽しめるパンをもっと広めたい」など、具体的な構想やコンセプトが定まってきました。
開業資金の確保やパン研究の期間を経て創業
──開業したときのことを教えてほしい。
藤原──
すぐ開業したわけではありません。
その前に開業資金を蓄えるため、給与の良いトラック運転手に転職しました。
トラックの運転手で稼ぎながら、休日などのプライベートを使って、自宅でパンづくりの研究を重ねたんです。
いろいろなパン屋をめぐって、パンの勉強もしました。
ほかにも料理の勉強や練習もがんばりましたね。
その後、経営や資金の融資方法などを勉強するため、福山商工会議所の創業塾に参加しました。
そして2019年(令和元年)7月に、福山市北部の加茂町に「ソウモクコーヒー・ブランジェリー・ブラッスリー・フジワラ(SOUMOKU coffee BOULANGERIE BRASSERIE Fujiwara)」として創業したのです。
この店はパンの製造・販売に加え、食事も楽しめるベーカリー・カフェというスタイルでした。
2023年(令和5年)12月には現在地・春日町に移転するとともに、「ブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラ」として営業を開始。
今はパンの製造・販売に特化して営業しています。
こだわりは高加水・湯種仕込み・長時間熟成によるモッチリとしたパン生地
──パン製造のこだわりを教えてほしい。
藤原──
コンセプトのとおり、食事系のパンに力を入れています。
一番のおすすめは、カンパーニュですね。
当店は、生地がモッチリとした弾力のある食感の食事パンが多いんです。
その理由は、高加水・湯種仕込み・長時間熟成の三つがポイント。
高加水というのは、パンの生地に含まれる水分の量を、通常より多めにしていることです。
湯種仕込みは、パンの生地となる小麦粉にお湯をかけたもの。
こうすることで、まるで餅のようなとってもモッチリとした食感を生み出せます。
生地は一晩寝かせて、長時間熟成させているんです。
そうすると、小麦の風味がより感じられ、小麦のうまみや甘味を引き出せます。
ちなみに長時間熟成は食事パンだけでなく、菓子パンなども同様です。
ほかのこだわりは、自家製酵母を使っていること。
自家製の酵母を使うことで、当店ならではの味わいや個性を出せます。
生地のpH(ペーハー)<※>などの調整がしやすくなるのもメリットです。
また酵母は、小麦粉やレーズンでつくっています。
あと、小麦粉にもこだわっていますね。
北海道など国産のものや、海外のこだわりの品種など、パンに合わせていろいろ選んでいます。
※パン製造工程における生地の酸性度のこと
食事パンの魅力やおいしさを知ってもらい、日常の食卓で楽しんでほしい
──今後の抱負ややってみたいことを知りたい。
藤原──
パン屋ってとても多いので、個性とか店の独自のコンセプトがハッキリしていなければいけないなと考えています。
日本でパンといったら、菓子パンや惣菜パンが多いですよね。
最近ではバゲットなども日常的に食べる人も多くなりましたが、まだまだ食事系のパンは根付いていません。
食事パンもおいしいものがたくさんあるので、多くの人に味わってほしいと思いました。
海外、とくに欧州のように食事パンを日常的に楽しんでもらいたいんです。
そのためには、実際に食事といっしょにパンを食べてもらうのがいいと思うんですよね。
だから、食事パンのおいしさを知ってもっと楽しんでほしい、という当店のコンセプトが定まったんです。
ぜひ当店で食事パンの魅力やおいしさを知って、日常の食卓で食事パンを料理とともに楽しんでほしいですね。
あとは、当店のパンを使っていただける飲食店ができればうれしいですね。
原材料や製造法にこだわって食事パンの魅力を伝えるブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラ
「食事パンの魅力を知ってもらいたい」という思いのもと、こだわりの詰まったパンを楽しめる店は大変貴重です。
ブランジェリー・エ・トゥレトゥール・フジワラで、ぜひ藤原さんのこだわりが詰まったパンの数々を味わってみてください。