【「ストレンジシード静岡2025」開幕】 10回目の「ストリートシアターフェス」。立体音響作品「naraka」、太めパフォーマンス、 「大熊隆太郎/壱劇屋」…
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区の駿府城公園、青葉シンボルロードなど各所を会場とする「ストリートシアターフェス ストレンジシード静岡2025」のリポートをお届けする。同フェスは3日に開幕し、5日まで開催。(写真・文=論説委員・橋爪充)
今年で10回目を迎える「ストレンジシード静岡」が開幕した。この楽しくもとんがったパフォーミングアーツのフェスティバルが、地元静岡で開かれていることが、単純に誇らしい。
ストレンジシード静岡の魅力は、野外音楽フェスティバルに通じると思う。タイムテーブルを握りしめ(今はスマートフォンで確認することも多いだろうが…)、さまざまな会場を回遊する。そうすると、見たことも聞いたこともないアーティストとの衝撃的な出会いがある。
私はそうやって、音楽フェスで幾多の音楽を知った。これまでのストレンジシード静岡でも、さまざまな素晴らしい演者との出会いがあった。自分の人生が豊かになった実感がある。
今年も、過去に見た演者、初顔合わせのグループ、さまざまあった。静岡の街角で彼らは叫び、踊り、走り、笑っていた。演じ手のエネルギーが初夏の日差しと溶け合い、観客に押し寄せるのが確かに見えた。
今年は「なんだ?シアター」と題したショー観劇が10演目、「なんだ?ワークショップ」と題した参加イベントが12演目の計22演目。業務の都合を繰り合わせて見た3演目を、写真を交えて紹介する。
午前中の駿府城公園で行われた「LINDA×金光佑実×naraka」の「とぶ...とばない...とぶ...とばない...と.....あっ。」は、人の動きをセンサーが感知して音の大きさや位相を変える立体音響作品「naraka」と道化師の装束をまとったLINDAさんのコラボレーション。一辺2メートルほどのキューブ状のセットに設置された「naraka」によるアンビエントな音空間の中、時にしなやか、時にシャープなLINDAさんのダンスは孤独感と開放感の両方をにじませた。
2021年にも出演経験がある「太めパフォーマンス」はメンバーの急死を経ての「シワノヴァパレード」。結成メンバーの乗松薫さんが市川まやさんを加え、観客を「平和を愛する民族シワノヴァ」に仕立ててパフォーマンスに引きずり込んだ。「神」と名付けた2.5メートル四方の大きな紙を先頭に青葉シンボルロードを疾走。水辺ベンチでの乗松さんのソロダンスの後は、観客を交えて「翼をください」の合唱。歌詞は「シワ」だけで、観客のほぼ全員が参加。自然発生的な拍手が感動的だった。
常磐公園では野球の内野ほどのスペースを区切って、「オールスタンディング演劇」と銘打った「大熊隆太郎/壱劇屋」の「末待奉祭(まつまつたてまつりまつり)」。日本の神話エピソードを援用しながら、人が神々と交わる「祭り」を執り行うに至るまでの歴史をダンスパフォーマンスやラップ、日用品を使った打楽器演奏で表現。まさかと思ったが、最後には本当に祭りの櫓(やぐら)が出現し、
観客は盆踊りよろしく周囲をぐるぐると巡った。
オリヴィエ・グロステットさんのワークショップ「ダンボール天守閣 建築パーツをつくろう!」は順調に建築が進んでいた。2階から上を持ち上げ、全体を立たせる場面に遭遇。奏功が分かると数十人の参加者が拍手で互いをたたえ合っていた。
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■ストリートシアターフェス ストレンジシード静岡2025
会場:駿府城公園、青葉シンボルロード、常磐公園など(静岡市葵区)
会期:5月4日(日)、5日(月・祝)
観覧無料、一部予約制・有料の場合あり