ビックリ箱でもあり“性癖のるつぼ”でもある。どこか縁を感じる一本の筋が通ったドラマーードラマCD「腐男子召喚~異世界で神獣にハメられました~」第2巻 合津原琴音役・石谷春貴さんインタビュー
BLドラマCD『腐男子召喚~異世界で神獣にハメられました~』第2巻(出演声優:石谷春貴さん 佐藤拓也さん 他)が、スマホ向けドラマCD配信サービス「ポケットドラマCD」にて、2025年2月28日よりダウンロード販売開始となります。
販売開始を記念して、アニメイトタイムズでは合津原琴音役・石谷春貴さんのインタビューをお届けします。キャラクターについてはもちろんのこと、第2巻のエピソードの中で印象的だったシーンや聴きどころをお伺いしました。
“ビックリ箱”という言葉がしっくりくる本作
――はじめに、第2巻の台本をお読みになられた際のご感想をお聞かせください。
合津原琴音役・石谷春貴さん(以下、石谷):琴音くんをずっと地続きで演じている感覚なので、巻数は跨いでいるけれど第1巻・第2巻という区切りの概念があまりないですね。
僕自身、ひとつのある家庭(凪と琴音)の様子をドラマCDという形で演じさせていただいていく中で、元々あった(凪と琴音の)形からどんどん発展しているなと感じています。そんな琴音くんの物語をずっと演じることができるのは、役者としてとても嬉しいです。
そして、関係が深まるにつれて、藤咲先生の性癖が色濃く反映されているなと感じます(笑)。それがまた個人的にはすごく良いなと思いますし、自分を出している作品だなと。以前、先生から「(好きなものは)描けばいい」という言葉を聞いて、「ああ、そうか」と納得したことがあります。そんな好きを詰め込んだ物語が地続きで、今も続いている巻数に反映されているのでしょうね。
――ちなみに先ほど話に出た性癖の部分について、ドラマCD第2巻では凪の発情や凪と琴音の入れ替わり、新たな命の誕生などのお話が収録されておりますが、特に色濃く感じられたところを教えてください。
石谷:(即答で)全部ッ!
――(笑)
石谷:どのページを読んでいても先生がやりたいことが詰め込まれている印象があります。入れ替わりのシチュエーションひとつをとっても、思いついてすぐできるものじゃないと思います。そういった意味では、表現する僕たちの仕事と通ずるものもあるのかなと。先生が思いついたことを形にした結果、こういう性癖を感じる作品になったのだと思いますし、どのページを読んでいても面白いですよね。“ビックリ箱”という言葉がしっくりくるかもしれません(笑)。
毎回収録する度に、「今のBLジャンルはこういうのが流行っているんだな」と感じることが多いです。例えば、「執着攻め」とか「オタク受け」。僕が思うに、「オタク受け」は先生ご自身の性癖だと思うんですよね。琴音くんはまさにその性癖を体現しているキャラクターだと思うから、その琴音くんの物語を紡いでいくための舞台装置として凪や周囲のキャラがいるようにも感じます。
なかでも、第2巻の物語で一番性癖を感じたのは“卵”かな?
――そこから育てるという流れになりますものね。
石谷:父と母という概念は男同士には本来ないはずなのに、それを感じさせられたのが子供が生まれた場面かなと。やっぱり、卵が生まれて新たな命を育てていくというのは母性を感じる部分ですよね。
ドラマCDの中では時系列が前後していて、既に子供が生まれていて、一番新しいシーンで子供を授かるという展開になっていたので、「どういう気持ちで演じればいいんだ……?」と考えさせられたことも結構ありました。
――琴音を演じる上でキャラクター分析をされたのかと思いますが、彼についてどう捉えてお芝居されていますか?
石谷:僕自身も元々オタクなので共感できる部分が多かったです。しかも、琴音くんは「認められないオタク」だと思うんです。
僕らの世代は「認められないオタク」というものが概念としてあって、クラスの陽キャたちに「お前、アニメ見てんの?」っていじられたりする時代で……。自分のオタク的な面を隠したくなるような感覚はすごく分かるので、(琴音のキャラクター性に関する)インプット・アウトプットの面ではそんなに苦労しなかったです。オタク特有の早口は意識しました。
あとは、琴音くんは感情の起伏を自分の中で完結させるタイプなので、そこは役作りとしてしっかり表現する必要があるなと感じました。それこそ、佐藤さんが低いところでしっかり土台を作ってくださるので、「その上で遊ぼう!」というイメージで。
一番最初に表現した琴音くんと今の表現は変わっていないので、それが良いと言っていただけたのはすごく嬉しかったです。20代後半・30代の方なら共感してくださる方もいらっしゃるかもしれませんが、昔オタクが迫害されていた雰囲気はちゃんと意識しました。
――客観的に琴音というキャラクターを見てどう思われますか?
石谷:『腐男子召喚』というタイトルにも書いてある通り、めっちゃ腐男子だなと思います(笑)。親しみが持てるキャラクターだなと思います。
――第1巻で琴音が現世に戻り、死ぬ前をやり直すシーンで、自分の姉に「俺の部屋の本とPCのデータ処分よろしく」とメッセージを送っているのを見て、「分かる……!」という気持ちになりました。なにかを推している方は特に共感しやすいのではないかなと。
石谷:僕もPCの美少女ゲームを3桁くらいプレイしていたので、同じ状況に追いやられたら「データ消しておいて」って言うかもしれません(笑)。いや、でもデータを消したら後世に残せなくなるな……っていう葛藤もあったりすると思います(笑)。そういう部分はすごく共感しながら演じていました。
――逆に、似ていないからこそ尊敬できる部分はありますか?
石谷:BLを全く知らない相手に腐男子トークをぶつけて、その話の内容が相手に通じなくても、理解されなくても自分の中で完結できる部分です。琴音が凪に対してオタク語りをした時に、凪はその話の内容が分からなくても返事をちゃんと返してくれるじゃないですか。その返事を聞いて琴音は納得できてしまう。
やっぱりオタクとしては、相手を沼に引きずり込みたいじゃないですか……(笑)。でも、琴音はそれをしないんです。そこがまた、良いなと思います。話を聞いている時の凪の態度もすごく優しいですからね。
――キャラクターで気になるのは誰ですか?
石谷:隠している部分が絶対にあると思うから、凪かなぁ。そんなミステリアスな部分よりも他の部分に目線が行っている琴音くんも彼らしいなと思います(笑)。
聴きどころは凪と琴音の“入れ替わり”シーン
――先ほど収録の話が少し出ましたが、現場はどのような雰囲気で進んでいたのでしょうか。
石谷:佐藤さんがとてもフランクな方なので、僕も自由にやらせていただいています。佐藤さん演じる凪がしっかりと収録をまとめてくれているというイメージで進んでいますね。これは音響スタッフさんも含めてですが、お互いの呼吸がある程度分かっているので、たとえ台本が分厚くても「ああ、大丈夫だろう」と思うぐらいの信頼感があります。
先生も収録現場に来てくださって、「ありがとうございます」とおっしゃっていただいたのですが、「こちらこそありがとうございます」という気持ちでいっぱいです。
――第2巻のエピソードの中で、特に「ここが聴きどころ」という場面はありますか?
石谷:「入れ替わり」のシーンでは、(佐藤さんと)2人ですごく苦労しました。一発OKでできたけれど、収録の時に「どうすればいいですか?」と悩んだところです。
お互いのお芝居を第1巻から聴いてきていて、その積み重ねがあったから一発でできたことで、普通だったら、時間内に終わらないんじゃないかと思うレベルで難しくて……。
――どういうところに難しさを感じたのでしょうか?
石谷:凪と琴音の声帯は変わらないけれど、芝居が変わる部分が一番難しかったです。
いつもの落ち着いている凪から、突然、琴音のような「なんで?!」みたいな高いトーンの言葉は出てこないので……。佐藤さんもテンションの上下をどこまでやって良いのか探っているところもあり、2人で試行錯誤しながら進めた収録でした。
――ドラマCDとアニメでは、やはり画の有無にも声の表現の仕方に違いが出るのかと思うのですが、その点はどのように捉えていらっしゃいますか?
石谷:ドラマCDは芝居の全てが出ると思っています。アニメだと「ボールド」といって、掛け合いの中で自分の台詞をしゃべるタイミングになると、画面上に明示されるサインがあるのですが、ドラマCDには存在しないため、掛け合いの中で自分で尺を決めてもいいし、口調も自由に調整しても良いんです。だから、僕は台本チェックは細かくせずに、現場で生まれる相手との掛け合いを大事にしています。
そのため、声以外の情報量が多いアニメーションの一方で、ドラマCDは声の情報量を増やすことを特に意識しています。
例えば、起床するシーンがあるとして、アニメなら映像で目をこする動きや寝ぼけた表情があるから「おはよう」ってシンプルに言えば成立します。でも、ドラマCDでは効果音(SE)でチュンチュンという鳥が鳴く音はあるかもしれないですが、画がない分、「ふぁあ(あくび)、おはよう」というように大きな表現になっていきます。そこが一番の違いですかね。
――現場で生まれる生の芝居感はドラマCDならではなんですね。
石谷:僕はそういったお芝居が楽しいなと感じますし、一番声優になりたかった理由でもあります。この作品でも、佐藤さんのお芝居を聞いて瞬発的に言葉を返してしまうこともあるのですが、その言葉に対して佐藤さんがまた返してくれるから次の台詞にいきやすいんですよ。
凪のお芝居もですが、佐藤さんはバレーでいうとレシーブをしてくださる方なので、どのシーンの掛け合いもそういった部分があり、やっぱり凪あってこその琴音だなとすごく感じます。
あとは、凪がちょこちょこツッコミも入れてくれますよね(笑)。あのツッコミがいいなと思います。毎回、会話劇として見ている部分が大きくて、どこかの場面が特別というよりは会話のテンポの気持ち良さが心地いいなとこの作品に関してはすごく感じます。
――アドリブは入れられたりしたのでしょうか?
石谷:「琴音」と呼ばれた時に、台本にはないけど「ん?」と軽く返すような、自然な反応としてのアドリブは入れています。
――改めて琴音を演じていて楽しいなと感じられるところを教えてください。
石谷:感情の上下をしっかり表現できるところは、すごく楽しいですね。僕自身、わりと冷静なキャラクターを演じることが多いのですが、琴音は感情の浮き沈みがはっきりしているので、演じていても楽しいです。
飛龍と浅葱の恋愛模様に「早くくっつけ!」
――第2巻では飛龍と浅葱のエピソードもあり、琴音はそんな2人を見守るような立ち位置にいました。「遅咲きの恋の花が芽吹きつつあります」という台詞もあるのですが、この2人の恋愛模様をご覧になっていかがでしたか?
石谷:僕自身はさっぱりと言ってしまうタイプなので、2人を見ていると「早くくっつけ!」って思っちゃいます(笑)。だけど、琴音くんの立場としては2人を俯瞰で見ていて、僕自身も俯瞰で見ているから琴音くんと同じ目線です。
僕の本筋としては琴音くんと凪のカップリングの部分ですが、僕も琴音くんも腐男子みたいな感じで見ている分には、飛龍と浅葱の関係は本当にもどかしくなっちゃいますね。もちろん、そこでドラマが生まれているのは分かっているのですが、「ちゃんと言葉で伝えて!」って思っちゃうんです。でも、その関係性がゆっくりと確定して進んでいくのが、この作品の魅力なのかなとも思います。
(凪と琴音の関係性的に)「早くくっつけ!」はめっちゃブーメランなんですけど……。
――(笑)。凪と琴音は結婚していますが、この2人のカップリングに対する印象もお聞かせください。
石谷:結婚後の方が苦労が多いですよね。やっぱり凪が言葉足らずなので、「もっと言ってよ!」って思うことが多いです(笑)。結婚をする前から「結婚してから関係が深まっていくんだろうな」という感じがすごく強くて。
凪のミステリアスな部分を、驚きながらも琴音が「なんで?!」「まあいっか」「なんで?!」「まあいっか」の繰り返しで受け入れていくんだろうなという雰囲気がありましたし、それが2人の関係性なのかなと。
――タイトルからも分かるとおり、腐男子・異世界・神獣というさまざまな要素がある本作の魅力的に感じる部分や面白いと思う部分を教えてください。
石谷:誰かの“性癖”には確実に刺さる、というところが一番かな? だけどそれだけではなく、しっかりと一本の筋が通ったドラマとしても面白いんです。
それでいうと原作漫画のロゴデザインも好きで、横の一線が巻数を横に並べると一直線に繋がっているんですよ。これは全部、「この作品は地のところで繋がっているよ」ということを表現しているみたいで、“縁(えにし)”みたいで僕は好きですね。横に並べた時に「良いなぁ」ってずっと思っていました。
異世界転生ものはたくさんありますけど、そこに腐男子という要素と組み合わせたのも面白いと思うポイントです。しかも、現代のデジタル機器がない世界でも、これだけ話が成立するんだなと。本当に開けたらビックリ箱というか、開けば性癖のるつぼなので、そこがこの作品の魅力です。
――お話いただきありがとうございました! 最後にファンの皆様へメッセージをお願いします。
石谷:どこかしらに刺さるポイントがあると思うので自分の性癖を確かめるためにも、ぜひ読んでほしい、聴いてほしいです。
原作片手にドラマCDを聴くのも楽しいと思いますし、BLの入門編としてもおすすめです。もちろん、玄人の方々も存分に楽しめる内容になっていますので、ぜひ皆様よろしくお願いいたします!
そして、これまで応援してくださった方も、これからの物語を楽しみにしていただければと思います。よろしくお願いいたします!
[取材・文/笹本千尋]
Xキャンペーン情報
ドラマCD「腐男子召喚~異世界で神獣にハメられました~」第2巻DL発売開始記念RPキャンペーンを、アニメイトタイムズ公式Xにて実施中!
抽選で1名様に出演キャスト10名+原作者 藤咲もえ先生の寄せ書きサイン色紙をプレゼントいたします!
応募方法:@animatetimesをフォロー&該当ポストをRP
応募期間:3月5日(水)23:59まで
ドラマCD「腐男子召喚~異世界で神獣にハメられました~」第2巻
アニメイト限定セット
6,050円(税込)
【特典】
アニメイト限定版特典:藤咲もえ先生描き下ろし凪&琴音イラスト使用アクリルキーホルダー
アニメイト特典:ジャケットイラスト柄 ポストカード
通常盤
4,950円(税込)
【特典】
アニメイト特典:ジャケットイラスト柄 ポストカード