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発達障害息子、中3で突然の進路変更!?推薦枠を目指して親子で挑んだ高校受験

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発達障害息子、中3で突然の進路変更!?推薦枠を目指して親子で挑んだ高校受験

監修:藤井明子

小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医/どんぐり発達クリニック院長

突然の進路変更で未知の土地、北海道へ……(大汗)。息子が選んだ道なら母も頑張ってみるしかない……か??

中学受験を経て、学びの多様化学校である私立中学に通っていたコチ丸。ほぼ不登校だった小学校時代と比較すると、大きく成長を感じてはいたものの、勉強の遅れはなかなか取り戻すことができませんでした。私は、コチ丸の適性や成績などを熟慮した結果、本人の好きなゲーム制作を学べる専門学校と通信制高校が一緒になったA学校を進学先として考えていました。中2の頃から親子で入学説明会などにも参加して、A学校に進学すると疑いもしなかった私。いよいよ中3になって、A学校の入試の申し込みをしようかという矢先、コチ丸は突然、住んでいる愛知県から北海道の公立高校に進学すると言い出したのです。まったく予想もしていなかった進路変更でしたが、コチ丸に詳しく聞いてみると、それには意外な理由がありました。

コチ丸が小学校を休んでいた時期、仕事がある私に代わって家で面倒をみてくれていたのは私の祖父(コチ丸にとっての曽祖父)でした。コチ丸は、祖父が好きだった競馬番組を一緒に見ているうちに、「馬を育てたい」という気持ちを抱くようになったと言うのです。そして、馬について学べる公立高校が北海道にあると知り、そこへ行きたいという思いを持つようになった……と話してくれました。とはいえ、北海道という場所に距離を感じていたのはコチ丸も同じで、どこかで夢物語みたいな思いがあり、言い出せなかったようです。しかし、中3になり、いよいよこれが最後の進路希望調査……という時になって、思い余って私にその気持ちを話してくれたのでした。

しかし、公立高校なんてそもそも視野に入れていなかった上に、学校があるのはまさかの北海道。一体どうやって受験をすれば良いのか……?右も左も全く分からず、志望する学校や北海道の教育委員会のWebサイトを見ても小難しい言葉が並んでいて、しっかり理解できないままでした。

でもまぁ、とにかくやりたいと思ったんなら気が済むまでやる!という、いつものわが家のモットーで、コチ丸が「北海道」という言葉を出した2週間後には飛行機に乗り、見学に向かった志望校。私はどこかでコチ丸が「実際行ってみたら遠いし、公立高校は規則が厳しいからやっぱりあきらめる」とか言い出すのではないかな……とも思ってもいたのです。

……が、現地に向かって教頭先生に学校を案内されると、行きたい思いはコチ丸の中でさらに強くなり(笑)、進路は結局、北海道の公立高校に変更になったのでした。

勉強は全くできなくても、大丈夫!?馬への熱い想いで勝ち取った学校推薦枠。

当然、親子の心配は学力試験でした。立ちはだかるのは偏差値の高い壁……。
保険だけはかけておこうと、秋頃にはもともと予定していたA学校を受験。そちらは無事に合格しました。面接のみの試験でしたが、第一志望校の前に受験がイメージできたということと、とりあえずこれで行き場がないということはなくなるなと安心しました(一部戻ってはきたものの、入学金と1年分の授業料も泣く泣く振込みました……)。

そして1月、コチ丸は第一志望校の道外からの推薦選抜枠を受験しました。通っている中学校からの推薦があれば、受験内容は内申点と面接のみで良いということだったので、心配していた学力試験は回避することができました。

しかし、通っている中学校から推薦してもらうために、コチ丸は中3の1年間はほぼ休まず学校に通い、生徒会長も務めました。小学校ではほぼ不登校、中学入学後も1・2年のうちは週3ほどしか学校に行っていなかったコチ丸にとっては、学校からの信頼を勝ち取るために頑張った努力の1年でした。学校に行けなかった彼にしてみたら、休みたい時も体がだるい時もやりたくないことがある時も……何度も葛藤があった1年だったと思います。親の私は側にいてあげられても、代わってあげることはできない、本人がやるしかない試練でもあり、目標のために本当に頑張ったと思います。

当時はコロナの影響もまだ残っており、道外の受験者はオンライン受験もできたのですが、わが家は現地に乗り込んで受験。雪道の中、千歳空港から60駅停まるバスに乗って現地入りしたのは今でも笑える経験です。冬の北海道、半端ない……(笑)。後にコチ丸にわざわざ道外から受験に来たのはうちくらいだったと聞かされました。

バスでたどり着いた市内から学校まではさらにタクシーで30分程度かかり、試験が終わる時間も読めないため、コチ丸は1人で学校へ向かい、受験をしてホテルまで戻ってきました。母はホテルで待機している間、不安で落ち着かない時間を過ごしていましたが、当の本人は面談待ちの間に道内の受験生と友だちになり、連絡先の交換までして楽しそうに戻ってきました。

北海道へは入学式までなかなか来られないこともあり、まだ合格も分からない入試の日のうちに制服の採寸など一通りのことも街で済ませて帰宅しました。県内だったら私もある程度流れも分かっていたのでしょうが、ルールも全く違う県外の、それも北海道での受験。息子以上に私のほうが戸惑いっぱなしでした……。

落ち着いて座ることもままならなかった小学校時代を経て、高校生になるまでに大きく変わったこと。

結果は無事に合格。
4月、私は会社から1週間ほど休暇をもらい、入学式の数日前から北海道に乗り込みました。これからしばらく会えないコチ丸と3日ほど北海道を旅しながら親子水入らずで過ごしました。入学式の前々日には学校のある市内に入り、寮生活に必要なものをひとしきり買い揃え、その翌日からはコチ丸の寮生活が始まりました。

先輩方の視線もあったからか、「もう帰っていいよ」と15年繋いできた手がスルリとあっけなく離れ……そして今、コチ丸は学業成績も上位に入り、学校活動も寮生活でも充実した日々を送っています。

授業の受け方1つとっても、小学校の時は落ち着きがなく、座っていることすら困難なコチ丸でしたが、中学では(たまに眠りながらも)席に座ることができるようになり、授業が聞けるようになり、高校では丸1日しっかり勉強に取り組めるようになりました。

小学校では自分のことしか見えず、学校の中を縦横無尽に歩き回っていましたが、中学では他者の視点を意識することができるようになってきたコチ丸。席に座って授業をちゃんと受けてみたら、持ち前の興味があることへの集中力と探求心を発揮し、成績はぐんと伸びました。マイペースさはそのままに、穏やかな性格と評されるようになり、今では周りを引っ張っていける存在になってきたようです。気がついたら、短所だと思っていた部分は長所になっていた、そんな気がします。

小学校の不登校から学びの多様化学校を経て公立高校へ。順調に聞こえますが、そのなかには常に迷い、悩んで決断してきたコチ丸の姿がありました。発達障害と診断された時は、将来はどうなるのかと母は案じていましたが、自分なりの道をしっかりと模索して、そこへ向けてちゃんと進んでいました。親の私がやれたことといえば、自分も勉強をしてコチ丸に選択肢を示すこと、決断した先に何があっても一緒に受け止めようという覚悟くらいで、結局は見守ることしかしてこなかった気もしますが……。

ただ、私もコチ丸が落ち着いていくにつれ、この変わった子育てが面白いと楽しむ余裕が出てきて、今はお互いの相乗効果になっている気がします。ハラハラさせられながらも楽しい進路選択をしてくれたコチ丸に感謝です。

執筆/あき

(監修:藤井先生より)
コラムの続きを楽しみにしておりました。コチ丸さんの悩みながらも、ご自身で決断し、成長した姿をうかがうことができとてもうれしく思います。医師としてまだ20年程度ですが、多くのお子さんと出会ってきました。発達障害と診断され、これからの子どもの将来が心配だと、話される親御さんがいらっしゃいます。しかし、子どもたちは、その子のペースで、親や周囲の大人、学校の友だちなどとの生活を通して、育っていくものだと多くの子どもたちの成長する姿を通じて教えられています。見守るというのは時に難しいですが、必要な支援は整えつつ、お子さんの成長を信じて支えていきたいですね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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