THE RAKEが考える、長持ちする服を買う方法
何年にもわたって着ることができる仕立て服に投資するために、知っておくべきことをお教えしよう。
bychristian barker
ラポ・エルカンは、祖父のジャンニ・アニェッリのオーダーメイドのカラチェニのスーツのコレクションを遺贈された。ラポ・エルカンは、自らの仕立て屋であるルビナッチの新作と一緒に着続けている。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のパートIとIIで、主人公のマーティ・マクフライは、デロリアンで2015年にタイムトリップする前、1980年代から50年代に行った際に、着ているものでトラブルを起こしている。
しかし実際のところ、彼には50年代風のクールな服や、未来の自動で紐が締まるスニーカーなどは必要なかった。 たったひとつの衣装で70年間、ずっと通すことができたはずだ。それはクラシックなスーツである。
ファッションはその間、激しく変動したかもしれないが、伝統的な仕立て屋によって作られたクラシックなスーツ、ジャケットは、第二次世界大戦の終わり以来、ほとんど変わっていない。その外観は、数十年間経っても不変なのだ。
しかし、時の試練に耐え、本当に価値を持つ服に投資するつもりなら、心に留めておくべき事柄がある。常に非の打ちどころのない着こなしを披露したケーリー・グラントは、彼のワードローブにある服について、次のように述べている。
「つまるところ、ひとつだけルールがある。私の服はすべてにおいて“中庸”なのだ。そんなにファッショナブルなわけでもないし、古臭いわけでもない。過度に保守的でもないし、時代遅れでもない。言い換えれば、ラペルは広すぎず、狭すぎず。トラウザーズはきつすぎず、ゆるすぎず。コートも短すぎず、長すぎず、だ。私にとっては、“シンプル”こそが、常にグッド・テイストの本質だったのだ」
1959年の名作『北北西に進路を取れ』において、ケーリー・グラントが着用したグレイのスーツは、60年後の今日も、完全に現代的に見える。
プロポーションの完璧なバランスをどのようにとるか? アラン・フラッサーは、自ら著した仕立ての教科書『Style and the Man』で、“ちょうどいい按配”について次のように述べている。
「最初に目を惹かれるのは、生地とパターンだが、スーツで考慮すべき最も重要なことは、そのシルエットだ。ほとんどのスーツは、数年間は廃れないよう作られているが、多くの場合、スーツの比率によってその有効寿命が決まる。
シルエットが極端なスーツは、流行遅れになる可能性が高い。間違ったものはクローゼットの悩みのタネとなる。逆に、適切な選択は、長年の喜びを与えてくれる。(中略)パッドを入れて誇張した肩は避ける。歴史の中でも、最も身なりのよい男性のほとんどは、肩を自然でスマートに見えるように仕立てていた」
フラッサーは、正しい長さのジャケットで、ダブルベンツの普遍的な形を選ぶことを提案している。
「短かすぎたり、長すぎる丈は避ける。ほとんどすべての状況で、上着の裾丈は上着の上襟から地面までの長さの半分になるはずだ」とフラッサーはアドバイスしている。
ラペルは細すぎず、太すぎず。ゴージラインの位置に関しては、特別な注意が必要だ。
「ゴージは上襟と下襟が交わるポイントだ」とフラッサーは説明する。
「上着のデザインがその位置を決定する。配置にはある程度の柔軟性があるが、この領域の外側に移動してしまうと、そのデザインはすぐに陳腐化する。かつてのアメリカ人デザイナーは、ゴージを高く切り過ぎており、上着はまるで今にも飛び立つかのように見えた。逆に、1980年代後半の“ソフトスーツ”では非常に低くなり、今では所有者のクローゼットの奥深くにしまいこまれている」
「極端なゴージの配置はジャケットの寿命に致命的な影響を与える」とフラッサーは言う。
「クラシックなデザインのすべての要素と同様に、ゴージの配置は、ファッションの恣意性ではなく、幾何学的ロジックに従う必要がある」と彼は主張する。
フラッサーが警告するもうひとつの罠は、フィットしすぎているテーラードだ。
「フィットはタイトすぎても、ルーズすぎてもいけない。よいジャケットなら、上着のボタンをしたままでも、快適に座れるはずだ」と彼は言う。
「あなたの服が、あなた自身を拘束して不快にさせるなら、自然に見せることは不可能であり、したがって決してスタイリッシュにはならない。残念ながら今日、タイト・フィットが流行している。そのようなワードローブは、時の試練に耐えることはできないだろう」
メンズウェア評論の巨人G.ブルース・ボイヤーは、1985年の著作『Elegance: A Guide to Quality in Menswear』において、次のように書いている。
「いい服でも、それがフィットしない場合は、着用しないことがルールだ。しかし、あなたが体型を保つなら、その服をずっと着続けることができる。時間は上質な服には、とても優しいからだ」
「はじめから良い服を購入すれば、常にスタイリッシュに見える。それは流行のファッションの軽薄さを、はるかに超えたものになるだろう」とボイヤーは述べている。
もちろん、適切なフィット感は非常に重要だが、もしあなたが、何年にもわたって少しずつ太っていったとしたら、「あなたの過去のワードローブは、“肉の道”のように見えるだろう」とボイヤーはジョークを飛ばす。
クラシックな衣服は、そのほとんどが、1インチ程度のお直しが可能な縫い代を施してある (購入プロセス時に探すべきものだ)。
ショッピングをするとき、またはオーダーメイドの仕立て屋を訪ねるとき、「上質な服は、安くて粗雑な商品よりも10倍長持ちし、肌触りとフィット感が良く、もちろん見た目も良くなる。安いスーツは新品の場合でも安っぽく見えるが、優れたスーツは何年着用しても変わらない。すべてはクオリティの問題だ」とボイヤーはアドバイスしている。
ケーリー・グラントは、1960年代に、次のように書いている。
「私の父が靴に関して私に与えたアドバイスを思い出した……。彼は4つの安い靴よりもひとつの良い靴を買うほうがいいと言った。上質な革で作られたひとつのペアは、4つの劣ったペアよりも長持ちする可能性があり、十分に世話をすれば、何年経ってもグッド・ジャッジメントとグッド・テイストを表現し続けるからだ。
同じことがスーツにも当てはまる。安く買うことよりも、許される中で、最高のものを買うようにしたい。それは株式市場に似ている。普通、1ドルの株を150株買うよりも、優良株1株を購入する方が賢明なのだ」
グラントが述べていることは重要だ。シルエットがどんなに普遍的であるとしても、生地や縫製がどれほど精巧であっても、服を適切にメンテナンスしなければ、長持ちはしない。だから、頑丈な木製ハンガーを使用してほしい。仕立て服を着た後、ブラッシングをしてほしい。汚れやほこりが、摩耗や変色の原因になる。クリーニングをし過ぎないでほしい。クリーニングする場合は、信頼できる業者を選んでほしい。
「よい業者とは、クリーニングだけでなく、プレスについてもよく知っている業者のことだ」とボイヤーは示唆している。
正しいメンテナンスは衣服の寿命を倍増させ、あなたを明るい未来へと導くのだ。まるでデロリアンのように。