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出口の見えない自閉症息子の登校しぶり、仕事も家庭も限界に…救いになった「意外な存在」

LITALICO発達ナビ

出口の見えない自閉症息子の登校しぶり、仕事も家庭も限界に…救いになった「意外な存在」

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

息子の登校しぶりに翻弄され、仕事もプライベートもボロボロの状態に……

ASD(自閉スペクトラム症)の長男あーは小学3年生の時、コロナ禍での全国一斉休校措置が終わった後から登校しぶりをするようになりました。親が教室までついて行くこともあれば、急に早退してくることもあり、時にはどうしても行けなくて休むことも……。

あーがそんな状態で、私は仕事にもあまり行けず、つられるようになんとなく夫婦関係も悪くなり……そんなボロボロの状態のまま、放課後等デイサービスなどを利用するための通所受給者証の更新で役所に行ったときのことです。

毎年少しの質問と書類を書けば通るその場で、担当してくれた窓口の方から、「何か困りごとはありますか?」と聞かれました。

初めて第三者に打ち明けることができた、苦しい胸の内

いつもならば、「特にありません」と決まり文句のように返していた質問でした。普段あーを見ていない人に相談してもなあ……という思いもありました。

しかしその時は、一人で抱えていたものが我慢の限界を超えていたのか……ポロリとこぼれてしまったのです。

「子どもが、学校に行けない日があって……」

あーの登校しぶりについて、家族である夫以外に話したことはあまりありませんでした。この頃のあーは、放課後等デイサービスにもあまり行けていなくて、また、病院で話しても、「不登校というほどではないよね」ということであまり問題視してもらえず。

あー自身ではなく、こんなことで悩んでいる私に問題があるんだ、困りごとだなんて思うほうが悪いんだ……と、一人で胸の内に抱え込んでいたのです。

しかし、役所の窓口の方の対応は意外なものでした。

「それはお母さん大変ですね。お母さんお仕事されてるの?普段どうされてるんです?」

と熱心に耳を傾けてくれたのです。

熱心に話を聞いてくれた担当者。寄り添いで救われた気持ちに

聞けば、その方のお子さんもかつて学校に行きづらかったことがあったようで、周りの人の助けを借りながら子育てしていたとか。

「放課後等デイサービスもいろいろ回って、ほかの事業所を見てみてもいいかも」
「役所には各学校の担当職員がいるから、一度学校に伺って様子を見てもらうようにしましょうか?」
など、具体的な方策を提示しつつ、

「お母さん大変かもしれないけど」
「お母さんは仕事を辞める必要はないです。一緒に方法を考えていきましょうね」

と心から親身になって話を聞いてくれたのでした……!

そこから特に状況が分かりやすく好転したわけではない。けれど、その時寄り添ってもらえて、私自身がとても救われたのを覚えています。

子どもが学校に行けず家にいる、という状況が続くと、その親も知らず知らずのうちに、心身共にこもりがちになります。子どもが元気に登校しているママ友にはなんとなく言いづらいし、親の会は敷居が高い。そんな時、思い切って公の機関に相談してみるのは一つの手だなと思いました。

我々が知らない情報を持っている可能性もあるし、専門機関に繋いでもらえることもあったり。実際、あーが通う小学校を担当している職員の方が、あーの様子を学校まで見に行ってくださったりもしました(学校では楽しそうに過ごしていましたよ、との回答で安心した記憶があります)。

もちろん、思い通りの回答が得られる保証はないし、自治体によって対応も異なるとは思うのですが、相談するだけなら無料だし、いろいろな方向にアンテナを張っておくと、意外なところから救いの手が差し伸べられる……かも?と感じた出来事でした。

執筆/よいこ

(監修:初川先生より)
長男あーくんが小学3年生の頃に登校しぶりを呈した際に、役所の福祉課窓口でその旨話してみたら、「救われた気持ち」になられたエピソードをありがとうございます。コロナ禍の際は、ただでさえ緊張感や閉塞感のある時期でした。そんななか、お子さんが登校しぶりを呈し、お仕事もされていて、本来心強いパートナーたる夫婦の間の関係もぎくしゃくして、とても大変だったと思います。今回、よいこさんは思わず、困っていること・悩んでいることが福祉課の窓口でぽろっと漏れ出たような感じかなと思いますが、私も自治体の一職員なので窓口でそうした話をしてくださったこと、そしてそこから現実的な動きとしても気持ちの面としても前に進めたこと、本当に良かったです。

自治体にもよりますが、基本的には、子どもに関する各種窓口は、その窓口で担える事柄のみならず、他部署で担えること・地域資源についての情報を持っていることが多いです。困りごとについて、こういうサービスがあるとか、あそこで相談を受けつけてくれますよといった情報提供をしてくださることが多いと思います。民間支援機関に関する情報は自治体からだと取りづらい面はありますが、しかし、民間支援機関の探し方については「皆さんこんなふうに探しているようですよ」といった情報をもらえるかもしれません。

保護者の方にとっては、まずは学校が一番身近な機関にはなりますが、そのほかの情報が欲しい、学校外で相談したいという場合には、自治体の教育支援センター、教育相談(学校外にいる、スクールカウンセラーと同じく子どもの心理についての相談を受けてくれる部署)、子ども家庭支援センター、保健相談所、民生委員・児童委員さん、かかりつけの小児科、障害福祉に関する窓口や福祉事務所、(お子さんに障害がある場合は)相談支援事業所などがざっと考えただけでも思い浮かびます。どこが一番適しているのか、ご自身で判断がつきづらいと思いますが、まずは敷居の低そうなところに話してみて、そこで情報をもらうのも1つです。最近は自治体の役所に子育ての総合インフォメーション窓口を設けているところも増えました。おひとりで、あるいは家族だけで考えているとどうにも行きづまってしまうことがあります。それは、状況が苦しいから、精神的につらいからだけではなく、もしかしたら、どうしたらいいかを考えるための情報が不足しているからかもしれません。自治体の相談窓口は無料です(皆さんが納めてくださっている税金で運営しています)。情報をもらってこようかなくらいのつもりでも構わないので、ぜひお話ししていただけるとうれしいです。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に
公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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