お茶の間に響くハイエナジー!荻野目洋子「NON-STOPPER」1987年の年間1位獲得アルバム
荻野目洋子が脚光を浴びた「「ダンシング・ヒーロー」
今年(2024年)、歌手デビュー40周年を迎えた荻野目洋子。『NHK紅白歌合戦』5回出場、『日本レコード大賞』金賞を4年連続受賞というシンガーとしての輝かしい経歴を残し、結婚後は育児に専念。しかし、2014年にデビュー30周年記念アルバム『ディア・ポップシンガー』をリリースし、「ダンシング・ヒーロー」をセルフリメイク。ここが再ブレイクの布石となった。
2017年に大阪府立登美丘高等学校ダンス部が「ダンシング・ヒーロー」をバックに第10回日本高校ダンス部選手権夏の公式全国大会のビッグクラスで準優勝。その時のいわゆる “バブリーダンス” の動画がYouTubeで爆発的な再生回数を記録し、リバイバルヒット。その後のマイペースな肩肘張らない活躍ぶりからも、80年代アイドルの中でも当時の輝きを保ち続けているひとりと言えるだろう。
周知の通り、荻野目洋子は1985年にリリースした「ダンシング・ヒーロー」で一躍脚光を浴び、17歳にしてメインストリームに躍り出たシンガーだ。確かに当時の荻野目は、アイドル的な立ち位置であったが、今となっては、新宿、渋谷のディスコを沸かせていた “ハイエナジーサウンド” をお茶の間に持ち込んだ第一人者という印象が強い。
当時のディスコシーンの輪郭をリアルに浮かび上がらせた「NON-STOPPER」
「ダンシング・ヒーロー」はオリコン最高5位を記録。そして、このヒットから1年。荻野目のダンサブルな魅力を凝縮したアルバムとして1986年12月にリリースされたのが『NON-STOPPER』だった。
まさしく、曲を絶え間なく繋げスピンするDJを思わせるタイトルの本作は、当時のディスコシーンの輪郭をリアルに浮かび上がらせながら、シティポップにも通じるアーバンな雰囲気を醸し出す内容になっている。特筆すべきは、オープニングの「ダンシング・ヒーロー」からノンストップで畳み掛けるようなディスコビートの連打だ。当時のヒットメイカーNOBODYが作曲を手がけた「Dance Beatは夜明けまで」と「フラミンゴ in パラダイス」。
そしてバナナラマがリメイクし、世界的ヒットとなった「ヴィーナス」。さらには70年代から長きに渡りディスコ、クラブでヘビーローテーションされているシェリル・リンの大名曲「ガット・トゥ・ビー・リアル」のイントロを引用した「Melting Point」と、ダンスフロアを沸かせるに相応しいナンバーが続く。
売野雅勇ワールドともいえる「フラミンゴ in パラダイス」
しかし、機械的でスペイシーなビートが主体なハイエナジーサウンドをそのまま楽しむといった趣きではない。そこには情感豊かに、リリックの世界観を描き出し、伸びやかで張りのある荻野目の歌声が全面に打ち出されている。つまり、このアルバムは、ハイエナジーサウンドにポピュラリティを加味して、お茶の間に届けるという新境地を確立していると言っていいだろう。
収録曲のひとつでオリコン最高7位を記録した「フラミンゴ in パラダイス」にしても、80年代前半までのシティポップ的な世界観を継承しながら、まさしく売野雅勇ワールドともいえる哀愁のある日本語のリリックを際立たせている。同じく哀愁系の「六本木純情派」にしても歌詞に潜むドラマ性を最大限に引き出している。また、アルバムタイトルを引用した「NONSTOP DANCER」が荻野目の声質を最大限に活かしたミディアムテンポのティーンポップであることからも、このアルバムの多様性が伺える。
そして「ヴィーナス」同様に、ディスコシーンから火がついたフィンツィ・コンティーニの「CHA-CHA-CHA」も収録。当時この曲をカバーし、ヒットチャートへ押し上げた石井明美のバージョンとは異なる日本語歌詞で収録するなど、歌謡曲からJ-POPへと移行しつつある時代の彩を象徴するエポックメイキングなアルバムでもある。本作が80万枚以上の売り上げを記録し、オリコンで翌1987年の年間1位を記録したことが荻野目にとって大きなモチベーションになったことだろう。
40周年イヤーのライブを兵庫・大阪・京都で開催
現在もシンガーとして、着実にキャリアを重ねる荻野目洋子だが、来年の1月には兵庫・大阪・京都にて『40th Anniversary - 荻野目洋子 SPECIAL LIVE 2025』の開催が決定。「ダンシング・ヒーロー」や「六本木純情派」など、当時のヒット曲を中心としたセットリストが展開されるという。10代でシンガーとしてのスタンスを見出し、アップデートを重ね続ける現在の荻野目洋子を堪能して欲しい。