フードコートで大泣きする11か月の娘に「やかましいんじゃー!」 怒鳴られ絶望した父親を救った、見知らぬ男性の忘れられない一言
どれだけ親が気をつけていても、公共の場で小さな子どもが泣き出してしまうことはある。そんな時、周囲の冷たい視線に焦ったことがある人も多いだろう。
三重県に住むエンジニアの小野さん(仮名、40代男性)も、10年前にそんな辛い経験をした。しかも、近くにいた人に怒鳴られたという。
フードコートで11か月の娘が大泣きしてしまい……
「周りにはたくさんのお客さんがいることは認識していたので、抱っこしながら食事を取り、早めに席を立とうと思っていた矢先の事でした」
この後、一体何があったのか。編集部は小野さんに詳しく話を聞いた。(文:天音琴葉)
怒鳴り声で目が点に……「誰も微動だにしていませんでした」
夜20時頃、大阪の岸和田サービスエリアのフードコートで夕食をとっていた時のことだ。
小野さんの子どもは年子の兄妹で、その夜は11か月になる娘がぐずって大泣きしていた。抱っこしながら、そばをかきこもうとしていた、その時だった――。
2列ほど後ろの席にいた、サングラスをかけた体の大きな男性が立ち上がり、とんでもない大声で叫んだのだ。
「やかましいんじゃー、静かにさせろやー」
その場にいた4〜5人のグループの一人で、小野さんによると、「明らかに通常の職業ではない」と感じる風貌だったという。
突然の怒鳴り声によって、フードコート内は一瞬で静まり返った。周りの客は恐怖からか、「目が点というか、誰も微動だにしていませんでした」という。誰も助けに入れない雰囲気だったようだ。
小野さんは驚きと恐怖を感じながらも、すぐにその場に一礼し、食事を中断して泣き続ける娘を抱いてフードコートの外へ出た。
「うちの娘よりうるさかったな」恐怖と憤りの15分間
だが小野さんは悔しかっただろう。年子の子育ては毎日が大変だったというが、
「保育園には預けずに家で見ておりました。親と接する時間が長いほど、成長に良い影響をもたらす事は知っていましたので、たくさんの言葉をかけていました」
と、真摯に子育てに向き合っていた。この夜も、泣き止まない娘を放置していたわけでは決してない。
外に出て15分ほど娘をあやしながら、小野さんの頭には様々な思いが巡っていた。
「やはり怖かったなという気持ちと、もう少し小さい子どもでも気軽に食事できる場所があったらな、なんて考えていました」
少しして、上の子の食事の世話をしていた妻が合流した。二人は「確かにうるさくて迷惑をかけてしまったけど、あの行動は大人として恥ずかしいな」「うちの娘よりうるさかったな」などと、やり場のない憤りを分かち合うように言葉を交わした。
絶望の中でかけられた言葉に、涙が溢れそうに……
肩を落としていた、その時だった。通りすがりの一人の男性が、小野さんに優しく声をかけた。
「『子どもは泣くものですから、気にしなくていいですよ』と。 涙が溢れそうになった瞬間でした」
「先輩パパ」と思われる、見知らぬ男性の温かい一言は、張り詰めていた小野さんの心を溶かした。その男性の姿を今でも覚えているという。
「40代くらいの方でした。とても優しい目で、すごく余裕を感じられました」
この経験を経て、小野さんは子育てに対する考えを新たにしたという。
「あくまでも子どもは泣く生き物です。ただし、泣いたまま、放ったらかしてもいいというわけではありません。しっかり躾をして、あやして、注意する。それらを心掛けて公共の場に行こうと思いました」
とは言え、公共の場では毎回、緊張感を強いられるという子育て中の親は少なくないだろう。小野さんは、そんな親たちを思いやるかのように、最後にこう語った。
「小さいお子さんがいらっしゃるご家庭は、公共の場へ行く際、覚悟を決めて行っている人も多いと思います。育児と向き合って、しっかり親という職業を全うしている人ほど気にしていますから」
社会全体がもう少しだけ寛容な視線を持てたらいいのだが……。それは子育てに限ったことではないだろう。
※キャリコネニュースでは「あなたが目撃した衝撃クレーマー」をテーマにアンケートを行っています。回答はこちらから。https://questant.jp/q/BNPYRIJ9