映画マイクラの「四角い村人」は衣装もガチ手作りだった!デザイナーが明かす『マインクラフト/ザ・ムービー』制作秘話
衣装にも注目!『映画マイクラ』大ヒット中
日本公開初日から5日で興行収入10億円を突破し、週末公開作品の実写映画初登場1位、さらに2025年公開洋画実写オープニング1位を記録する大ヒットスタートを切った映画『マインクラフト/ザ・ムービー』。全世界興行収入は8.16億ドル(約1,166億円)を突破し、今年最大のヒット作としてまだまだ記録更新中の“異世界転送ファンタジー”超大作だ。
本作は、ゲーム「マインクラフト」の何もかも四角でできたユニークな世界を本気で完全再現し、世界中のマインクラフターも納得の一本に仕上がった。そしてメインキャラクターたちはビビッドな衣装を身にまとい、何から何までヘンテコなマイクラワールドでも個性が際立っている。
ということで今回は、カラフルな衣装の数々を手掛けたデザイナーが明かす制作秘話を交えつつ<衣装デザインの秘密>、映画『マイクラ』の裏側に迫ってみよう。
それぞれのアイデンティティを衣装で表現
本作で人間のみならず、マイクラワールドに登場するすべての生き物やキャラクターが身に着ける衣装を手掛けたのが、衣装デザイナーのアマンダ・ニール(『MEG ザ・モンスター』、『ピートと秘密の友達』)だ。
彼女はマイクラワールドに転送されたギャレット(ジェイソン・モモア)、ナタリー(エマ・マイヤーズ)&ヘンリー(セバスチャン・ハンセン)姉弟、ドーン(ダニエル・ブルックス)、そして先住民・スティーブ(ジャック・ブラック)の5人の主要キャラクターを“スパイス・ガールズのようなもの”と表現し、それぞれの個性を際立たせる衣装作りにこだわったことを明かす。
衣装デザインをするうえで、5人それぞれが持つ独自のアイデンティティを衣装で表現すべく、色彩のバランスを考えながら、彼らがひとつのグループとしても調和することを大切したというニール。また、現実世界とマイクラワールドの両方で違和感なく映えるよう意識しつつ、個性的なマイクラワールド内でも埋もれずに登場人物たちが生き生きと際立つことが、最大の課題だったと語っている。
「マイクラ」といえばスティーブ! 衣装はちょっとレトロ?
まず、ジャック・ブラック演じるマイクラワールドの先住民・スティーブの衣装。スティーブというキャラクター自体はゲーム「マイクラ」でもデフォルトプレイヤーキャラクターとして登場しており、ターコイズブルーのTシャツにブルージーンズ姿がゲームファンの間では認知されている。その姿をいかに映画『マイクラ』のセットに溶け込む姿で表現するか? そこがニールの腕の見せ所だった。
ニールは、ゲーム「マイクラ」を開発した<モヤンスタジオ>に所属し本作のプロデューサーの一人でもあるトルフィ・フランス・オラフソンから、スティーブが1970年代からゲームに登場したキャラクターだったことを明かされる。そこからヒントを得て、衣装のシルエットを少しユニークでレトロなものにし、さらにジャック・ブラックにもぴったり合う形を見つけていく形でデザインが進められていった。
80’s野郎ギャレットのコスチューム誕生秘話
一方で、スティーブとは対照的に、過去の栄光にすがる男・ギャレットは完全に“1980年代の男”としてデザインされている。自分の栄光の時代である80年代に取り残されている彼の衣装は、鮮やかで個性的でありながら、現代の視点から見ても受け入れられるデザインに仕上げられた。
ニールはギャレット役のジェイソン・モモアに、タッセル付きのシャンブレーブルーのデニムジャケットとピンクのTシャツを着せ、もうひとつのスタイルとしてタッセル付きのピンクのレザージャケットも用意したところ、モモアからも衣装に関して意見をもらったという。ひと際目を引くギャレットの衣装には、やはり普段からピンク大好きで知られるモモアの意見も盛り込まれたようだ。
ジェイソンは自分のスタイルについて非常に明確なイメージを持っていて、彼はジャケットにタッセルを付けたいと考えていました。シャンブレーブルーの色合いは80年代の美しい雰囲気を反映し、軽やかでどこか懐かしさを感じさせます。ジャケットのタッセルやピンクのTシャツ、そしてジャケットの動きが楽しく演劇的。また、Tシャツはとても繊細でありながら少し享楽的なキャラクターを象徴しているんです。
エマ・マイヤーズ演じるナタリーは、マイクラワールドと現実世界をより分かりやすく対比する人物として機能することを念頭に仕上げたという。「彼女は自分自身と弟の世話をするという大きな責任を背負っています。そんな彼女を、ギャレットやスティーブと同じマインクラフトのカラフルで演劇的な世界に違和感なく溶け込ませつつ、理知的で落ち着いた雰囲気を保つにはどうすればいいのかを考えました。彼女の円形のTシャツは、彼らがもともといた丸い現実世界と、四角いマイクラワールドとの対比を表しており、彼女にとっての変化と新たな始まりを表現しました」と、衣装に込めた思いを説明した。
あの「四角い村人」の衣装もイチから作成!?
また、マイクラワールド内のキャラクターたちの衣装については、素材選びから徹底的にこだわっているという。「ゲームの中では、ウールや織物、自然素材が基本になっています。だからこそ、カメラに映るすべての衣装には手作り感があり、家庭で手織りされたような雰囲気を持っていることを目指しました。機械で刺繍されたような量産的な衣服に見えない、マイクラワールド内で実際に作られたように見えることを重要視しました」と、ゲーム「マイクラ」の特徴から大きなヒントを得たようだ。
例えば、村人のブロック状の衣装をデザインすることは、彼女にとって大きな挑戦だったが、非常にやりがいのある仕事だったという。それは、村人の分厚いボディスーツを着たエキストラたちに、そのまま実際に衣装を着せて演技をさせ、VFXと組み合わせるというチャレンジングな撮影方法。まさに映画『マイクラ』ならではと言える手法だが、ニールは「関節のあるボディスーツを作るために、出演者それぞれにフォーム製の型を作り、それに合わせて動き方や歩き方、話し方、手の使い方を学んでもらいました。そのうえで衣装と組み合わせるというプロセスを取りました」と、困難かつ挑戦しがいのあったデザインを振り返る。
この研究開発には11週間もかかりました。どのように動きをつけるか、どうすれば快適に着られるかを考え、試行錯誤しました。衣装は見た目が素晴らしいだけでなく、実際に動けるものでなければなりませんでした。この映画を通じて私が学んだ最大のことは、機能性と素材の重要性です。ただ見栄えの良い衣装を作るだけではなく、それが動けるものであること、重量を支えられること、そして実際に役立つものであることが不可欠でした。
すべてをゼロから作り上げるマイクラワールドのように、職人たちが考え抜いたアイディアや細部へのこだわりを結集させ作り上げられた映画『マイクラ』の衣装の数々。質感や色彩、デザインなど追及し尽されたディテールは大スクリーンで観てこそよく分かるというもの。ぜひ劇場で二度、三度『映画マイクラ』を楽しもう。
映画『マインクラフト/ザ・ムービー』は全国の映画館で大ヒット上映中