総務は自身の成功よりも組織の成果を重視。総務経験年数が長いほど「総務を続けたい」意欲あり
『月刊総務』は、全国の総務担当者を対象に「総務のキャリアについての調査」を実施し、160人から回答を得た。
・調査結果 概要
・3割以上が入社時から総務一筋
・総務になったきっかけは「会社の方針」が約6割
・総務職での転職経験がある人は3割未満
・総務経験年数が長いほど「ずっと総務を続けたい」と答える割合が増加
・将来のキャリア意向は「総務の現場を続けたい」が35.6%で最多
・約8割が総務部門の役割や重要度は今後増していくと感じている
・コロナ禍以降、総務部門の業務量は増加傾向も人員は変わらず
・約6割が総務部門の人材は「足りていない」と回答
・総務のやりがいは「社内全体のサポート」が最多
・仕事のモチベーションは「従業員からの感謝の言葉」が最多
・総務は「自身の成功」よりも「組織として成果を出すこと」を重視
・役職がない総務ほど「会社からのキャリア成長のサポート不足」を感じる傾向が顕著に
・現在の職場で総務のキャリアパスが明確だと感じる人は2割未満
・リスキリングや自己啓発では「ビジネススキルの向上」が最多
・キャリアアップに必要なスキルは「専門知識の深堀り」が最多
・4割の総務が生成AIを業務で利用
3割以上が入社時から総務一筋
どのように総務部門に配属されたかを尋ねたところ、「他の部門を経て総務部門に異動」が40.6%で最も多く、「入社時から一貫して総務部門」が34.4%と続いた(n=160)。
・他の部門を経て総務部門に異動:40.6%
・入社時から一貫して総務部門:34.4%
・総務の専門職として中途採用:17.5%
・ジョブローテーションの一環:7.5%
総務になったきっかけは「会社の方針」が約6割
総務になったきっかけについて尋ねたところ、「会社の方針で配属された」が60.6%、「自ら志願した」が30.6%という結果となった(n=160)。配属の決定において、企業側の意向が強く反映されていることがうかがえる。
・会社の方針で配属された:60.6%
・自ら志願した:30.6%
・その他:8.8%
また、自ら志願した人の方が、キャリアに対する満足度が高いことがわかった。
総務職での転職経験がある人は3割未満
総務職として転職経験があるか尋ねたところ、「ある」と答えた人は28.1%、「ない」と答えた人が71.9%となった(n=160)。総務職として長く同じ企業でキャリアを積む人が多く見られる。
総務経験年数が長いほど「ずっと総務を続けたい」と答える割合が増加
総務の仕事に対する今後の意向を尋ねたところ、経験年数が長いほど「ずっと総務を続けたい」と答える割合が高まる傾向が見られた。また、どの経験年数の層でも「特に意向はない」と回答した割合が存在し、特に「1年未満」と「6~10年」の経験者ではそれぞれ42.9%と25.6%と高い傾向が見られた。(n=160)。
将来のキャリア意向は「総務の現場を続けたい」が35.6%で最多
将来のキャリアについて尋ねたところ、「総務の現場の仕事を続けたい」が35.6%で最多、次いで「今の会社で経営層になりたい」「別の会社で違う職種のキャリアを積みたい」がそれぞれ22.5%となった(n=160)。総務としてキャリアを深めたいと考える人が多い一方、他職種や経営層へのキャリアチェンジを志向する人も一定数いることがうかがえる。
約8割が総務部門の役割や重要度は今後増していくと感じている
総務部門の役割や重要度について尋ねたところ、「とても増すと思う」と「やや増すと思う」が合わせて78.8%となった(n=160)。企業全体における総務の重要性が高まっていることが示唆されている。
コロナ禍以降、総務部門の業務量は増加傾向も人員は変わらず
コロナ前と比較して、現在の総務部門の業務量について尋ねたところ、「やや増加」と「大幅に増加」を合わせた割合が56.9%に上り、多くの総務担当者が業務量の増加を実感していることがわかった。一方で、51.3%が、人員が「変わらない」と回答しており、業務負担が増えている可能性があることがわかった(n=160)。
約6割が総務部門の人材は「足りていない」と回答
現在の総務部門の人材の充足状況について尋ねたところ、「大幅に不足している」と「やや不足している」が合わせて60.1%で、6割が「人員が足りていない」と感じていることがわかった(n=160)。
総務のやりがいは「社内全体のサポート」が最多
総務の仕事で最もやりがいを感じる部分については、「社内全体のサポート」が37.5%で最多、「業務の効率化や改善」が18.8%と続いた(n=160)。
仕事のモチベーションは「従業員からの感謝の言葉」が最多
仕事をする上でのモチベーションについては、「従業員からの感謝の言葉」が45.6%で最多、「社内からの評価」が43.1%、「スキルの向上」が41.9%と続いた(n=160)。
総務は「自身の成功」よりも「組織として成果を出すこと」を重視
仕事をする上で重視する点については、「組織として成果を出すこと、メンバーと成功を分かち合うこと」が62.5%、「自分自身の成功やスキル・キャリアアップ」が37.5%と、組織全体の成功を優先する姿勢が見られた(n=160)。
役職がない総務ほど「会社からのキャリア成長のサポート不足」を感じる傾向が顕著に
会社からのキャリア成長のサポートについて尋ねたところ、役職なしの総務担当者では「全くサポートしていない」「あまりサポートしていない」と回答した割合が70.2%と高く、サポート不足を感じる傾向が際立った。役職が高いほどサポート満足度が上昇する傾向が見られた(n=160)。
また、役職が高いほど現在のキャリアに対する満足度が高い傾向が見られた(n=160)。
現在の職場で総務のキャリアパスが明確だと感じる人は2割未満
総務部門でのキャリアパスについて尋ねたところ、「とても明確だと思う」が4.4%、「やや明確だと思う」が13.1%で、合わせて17.5%に留まった。一方で「あまり明確ではない」「全く明確ではない」と回答した人が82.5%に上り、キャリアパスの不透明さが課題として明らかとなった(n=160)。
<キャリア形成の課題/一部抜粋>
・社内の何でも屋という感じで、キャリアというより目の前の仕事をただこなしているだけになっており、社内の評価も低く、重要な職務と思ってもらえていないためモチベーションが上がらない。
・他部門と兼任しているので、総務のみでのキャリア形成は考えにくい。
・会社が総務職へ求める明確なビジョンが足りない。
・AIの導入が進む中 作業としての総務は業務量が減るので人員は減るけれど マネジメントとしての総務は管理能力が問われるので、経験者不足になると想定される。
・ロールモデルのようなものがいないので、目指すべき姿、目標とするものがない。
・総務は裏方という認識が色濃く残っているため、昇進も難しい。
・一度総務系に配属されるとそのまま総務系に長くいることになりがちである。新卒で総務に配属になると現場を知る機会がない。
・企業によって「総務」に求められる役割、担う業務が大きく異なり、ある一社で経験を積んでも、偏ったものになりがちであること。
リスキリングや自己啓発では「ビジネススキルの向上」が最多
リスキリングや自己啓発の取り組みについて尋ねたところ、「ビジネススキルの向上」が53.8%で最多、次いで「社外セミナーや展示会への出席」が50.0%、「新しい業務ツールの習得」が36.3%と続いた(n=160)。
・ビジネススキルの向上:53.8%
・社外セミナーや展示会などへの出席:50.0%
・新しい業務ツールの習得:36.3%
・コミュニケーションスキルの向上:23.8%
・リーダーシップの強化:23.1%
・チームビルディングの強化:16.3%
・他社のベンチマーキング:13.1%
・他社の総務との交流:18.8%
・語学の学習:9.4%
・その他(自由記述):3.8%
・特に取り組んでいない:6.3%
キャリアアップに必要なスキルは「専門知識の深堀り」が最多
キャリアアップに必要だと感じるスキルについては、「専門知識の深堀り」が65.0%で最多、続いて「マネジメントスキル」が60.6%、「プロジェクト管理能力」が44.4%と続いた(n=160)。業務を支える専門性や管理能力が重視されている。
4割の総務が生成AIを業務で利用
生成AIの業務利用について、「とても利用している」と「やや利用している」を合わせて40.0%が利用していると回答した。利用用途としては「情報収集」が65.6%で最も多く、次いで「資料・文章の校正」や「企画・アイディア出し」が上位に挙げられた(n=160)。
総評
今回の調査結果から、総務部門におけるキャリア成長や働き方の現状が明らかとなった。特に、役職がない総務担当者ほどキャリア成長のサポートが不足していると感じている一方で、役職が高い層ではサポート満足度が高く、認識に大きな差があることが浮き彫りとなった。役職者は自身のチームメンバーの現状や要望をしっかりと把握し、適切な支援を行うことが重要だ。
また、総務経験年数や役職別に今後のキャリア意向を分析したところ、経験年数が長いほど「ずっと総務を続けたい」と答える割合が増加する一方で、経験年数が短い層では他職種への転換意向が強いことが明らかになりました。さらに、総務部門の人材不足や業務量の増加が多くの企業で課題となっており、これらの課題への対応が総務部門の持続的な発展に不可欠だ。
キャリア成長の支援策をより充実させることは、総務担当者のモチベーションを高め、企業全体の組織力を向上させるための重要な鍵となる。総務部門が組織内で適切に評価され、その価値が十分に発揮される環境づくりを進めることが求められている。
【調査概要】
調査機関:自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間:2024年10月9日〜2024年10月16日
■調査結果の引用時のお願い
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例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など