【記者ノート】「新JAえちご上越」を牽引する羽深真一会長の願いや目標は?「組合員にとっても、職員にとっても“日本一”の農協」
新JAえちご上越の本店
昨年3月1日に、JAえちご上越と(上越市および妙高市)JAひすい(糸魚川市)が合併し、新「JAえちご上越」が誕生した。県内全体の農協の再編に合わせたものでもあるが、組合員数が本年7月末現在、48、055人(正組合員17、163人准組合員30、892人)であり、何よりも地域農業の発展と持続可能な経営基盤の確立のためであることは言うまでもない。
この大組織を牽引する羽深真一経営管理委員会会長(68)は「この大合併は20数年来の悲願であり、行政との連携も含めて充実した農協組織を目指した。同時に規模ということだけではなく、組合員にとっても職員にとっても一番良い農協という意味で、『日本一の農協』でありたい」との願いを吐露する。併せて各部署間の一層の連携強化と、職員の自己改革、自己変革も打ち出して来た。
農業構造の大転換期を迎えて
JAえちご上越の羽深真一経営管理委員会会長
羽深会長は日本大学を卒業後、県農協中央会で20年間働き、JAえちご上越に移り、監査や経理畑を経て、総務部長や監査部長などの職務を経験して、専務理事や代表理事(理事長)を経て、経営管理委員会会長に就いた。最初に今回の高温少雨に伴う水不足について尋ねると、「私は牧区という中山間地の生まれなので、水不足で苦しむ中山間地域の巡回に出て、現状把握に努めた。その後ようやく雨に恵まれ、農家の皆さんが安堵されることになり、とても嬉しかったし、有難かった」と話す。
コメの高騰という令和の米騒動とも言われる事態については「農協が悪いみたいな報道も一部されたが、備蓄米も放出されてコメの価格が下がったことは良かったものの、消費者と生産者の両方が大事であり、いずれにせよ農業構造の大転換期を迎え、大規模農家だけでなく6~7割が小規模農家という実態を踏まえたコメ政策が求められている」と今後の農業政策の在り方にも苦言を呈する。
新規就農含め農業後継者問題が深刻だ
その上で後継者問題も深刻であり、何よりもコメ作りはじめ農業分野にチャレンジしてくる新規農業者が求められている。コメ作りの平均年齢が70代に近づく現状もある。「平場の農業法人の人達も『このままだと、私達の後が続かず、立ち行かなく事態がまもなくやって来そうだ』と訴えており、その意味でJAの役割や使命が一層重要になって来る。この当たりについても羽深会長は「私達農協も3年間職員として採用し、その後独立して貰う取り組みなども行ったものの、中々実が結ばなかった」と深刻に捉え、今後の対策も模索している。
コメは当然とし野菜の品目増やし更に果物も
その上で地域農業の発展にとって最大の戦略は何と言っても上越産コシヒカリ生産は勿論のこと、えだまめのブランド化や野菜や果物ㇸの取組みも進めており、「えだまめの生産農家が増えており、少しずつ生産高・売上高も増え、米に続く品目になりつつある。更にアスパラガスや雪下ニンジンなどの雪下野菜も評価が高まっており、こちらも拡充・拡大したい。新潟県内で上越地域が一番生産量の多いピーマンにも頑張りたい。また糸魚川地域(能生地区)で栽培が開始した越の丸茄子や、同じ糸魚川地域で始めている日本なし(新碧)にも力を入れたい」とも、品目の拡大にも取り組むところだ。
ブランド化を目指すえだまめの選果場
地産地消の「上越あるるん村」の更なる拡充
JAえちご上越が平成30年から先駆的に取り組んできた「上越あるるん村」については、魚などにも取り組み、今は全体で12億円に発展した。あるるん畑の売上高は8億円。羽深会長は「今は“地産地消”という考え方が定着し、安心と新鮮との観点から多くの消費者から支持を得ている」と直売所(あるるん畑等)の成功を分析する。
賑わいを見せる「上越あるるん村」のあるるん畑
経営安定化のため金融機関等としての理解
経営基盤の確立、経営の安定化についてお聞きする観点から、昨今農協のことを金融会社や商事会社と見る向きもあるようだが、反論も含めて聞いてみたいと思ってマイクを差し向けると、羽深会長はすかさず「確かにそうした意見や捉え方をする人達も多い。しかし、農協としていわゆる農業協同組合の役割でもある相談業務である『営農指導』を行うにも、金融分野や商事分野などの多彩な事業経営が重要であることを理解して戴きたい。
新たな分野への投資も含めてやはり、資金がなくては前に進めない。また当然、JA職員の待遇面、給料面などを考えると、どうしても安定的な“稼ぎ”を持続させなくてはならない。この当たりについては特に組合員の皆さんから分かって戴きたい」と強調した。
ライスセンターの修繕コスト等が最大課題
併せて今から遡ること30年前後に造られたコメ出荷のためのカントリーエレベーターやライスセンターが老朽化して来ており、「この修繕や建替えなどが一番頭の痛い課題であるかも知れない。コメの分野では集荷競争が激しくなっており、組合員農家の皆さんから集荷を受けるにはどうしてもライスセンターはじめそれらの施設の機能性を高めることが一層必要性になって来る」と経営管理委員の立場から、付け加えた。
修繕や建替の大きな課題のカントリーエレベーター
組合員数の減少や農家出身の職員数低下
最後に、今後の総括的な課題についても2点挙げた。「一つはやはり高齢化による組合員数の減少が際立って来るのではないかという懸念であり、もう一つが今後やはり農家出身の職員が減ることによるマイナス面も心配だ。JAの本来的な業務は農家組合員と歩む機関であるということから、この当たりをどうカバーしながら持続的な農協を目指していけるかも大きな課題であろう」と最後に結んだ羽深会長だ。
竜哲樹
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問
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