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谷のばら、私の新章のタイトルは「そしてのばらもまわる」

Pop’n’Roll

谷のばら、私の新章のタイトルは「そしてのばらもまわる」

表現者として新たな活動に臨む人物の現在地に迫るインタビュー連載「new chapter -私の新章-」。

第9回目に登場するのは、シンガーソングライターであり音楽クリエイターとしても活躍する谷のばら。高校時代から楽曲制作を始め、アイドルグループ『放課後プリンセス』での活動を経て、現在はHAPPY CREATORSやいつかの夜に僕たちが、などのアイドルグループに楽曲を提供しながら、シンガーソングライターとしての表現も追求している。異色のキャリアを歩んできた彼女は、これからどのような音楽を生み出していくのか。

自身のルーツ、創作のこだわり、そしてこれから描く“新章”について、谷のばらが語る。

・谷のばらの写真 8枚

編集協力:竹内伸一

コードが弾けるようになったら“曲作れそうだな”って思ったんです(笑)

――谷さんのキャリアは、もともとシンガーソングライターをやっていて、その後、放課後プリンセスでアイドル活動をスタート。グループ卒業後に音楽クリエイターとしても活動しているという流れですよね?

谷:
そうですね。

――シンガーソングライターとして活動することになったのは、どういった経緯だったんですか?

谷:
中学2年生でギターを始めたんですけど、コードとかが弾けるようになったら“曲作れそうだな”って思ったんです(笑)。中学3年の時に“1年かけて自由研究をする”というプロジェクトみたいなものがあって、それで私は“オリジナル曲4曲を入れたCDを作る”っていうテーマにしたんです。その頃に、ヤマモトショウさんがやっていたふぇのたすというバンドがすごく好きになって、いろいろ調べていたら、Twitterでショウさんが“音源を送ってくれたら聴きます”みたいなツイートをされてて。

――それは“誰でも音源なり動画なりを送ってくれたらアドバイスしますよ”みたいなことだったんですか?

谷:
そうです。で、送ってみようかなって思って。カバーだったか、自分の曲だったかはよく覚えていないんですけど(苦笑)、“歌をやりたいです”みたいなことを書き添えて、動画を送ったんです。そうしたら“声がいいですね”ってお返事をいただいたんですよ。当時私は山梨に住んでいたんですけど、ショウさんに会いに母親と東京に行って。で、“何か一緒にやりましょうよ”って言ってくださったところから、シンガーソングライターをやることになったというか、やってみようと決めたっていう感じです。

――それが中学3年生?

谷:
そうです。

――話が戻ってしまいますけど、ギターを始めたきっかけは?

谷:
もともと音楽も好きだったんですけど、それとはちょっと違う軸で、吉本新喜劇に松浦真也という芸人さんがいるじゃないですか。松浦さんがすっちーさんという方と、すち子&真也というユニットを組んで、歌ネタをされてて。松浦さん、ギターでポテトの揚がる音とかをやってたんです。それを観て“ギターって、こんな使い方もできるんだな”って思って、やってみたくなって(笑)。父親の実家が徳島なんですけど、中2の夏休みは、けっこう長めに徳島に遊びに行っていたんです。やることがなくて、どうしようかなって思っていたら、おじがギターを買ってくれました(笑)。エレキだったんですけど、すっごく松浦さんみたいなことがやりたいと思っていた時期だったので、それがギターの始まりです。

――いわゆる“シンガーソングライターのあいみょんさんに憧れて”みたいな感じではないんですね。

谷:
あ、でも、もともと長渕剛さんは好きでした。だから、ギターを持って歌うってことに憧れはありました。とはいうものの、長渕さんは大物過ぎて、目指そうという気にはなりませんでした。“ギターって面白いこともできるんだな”っていう好奇心から始めた感じでしたね。

――買ってもらったエレキギターは、どこのメーカーでした?

谷:
エピフォンでした。レスポールですね。でも、今もそうなんですけど、楽器についてはあまり詳しくなくて。とりあえず、“これがエレキか”みたいな感じでしたけど(笑)。弾き語りの初心者ブックみたいなものも買ってもらったので、それを見ながら練習をしていました。

――どんな曲を弾いていたんですか?

谷:
あ、長渕さんもやりました! 本に載っていたので、「とんぼ」が。“あ、長渕さんの曲が載ってる!”って思って弾いてみたりしていました。あとは、阿部真央さんとか。本に載っている曲で、知っている曲を片っ端からやってみるっていう感じでしたね。

――“Fコード”の壁はすぐに超えられました?

谷:
すぐにできたんですよ! Fが難しいっていうことは知っていたので、初めてギターを触った日から挑戦したんです。そうしたら“あれ、鳴るなあ”って(笑)。でも、そこからは成長していないんですけど(笑)。

――それで、ある程度コードが弾けるようになった時に、曲を作ろうと思ったわけですね。曲は最初からウマく作れました?

谷:
いや、それはやっぱり今は聴けないレベルですね。一応、音楽はずっと聴いていたんです。同世代の中では音楽が好きな方で、いろいろな音楽を聴いているっていう、ちょっと根拠のない自信みたいなものがあったんですよね。それで、自分も曲が作れるんじゃないかって思ったんですけど、自惚れでした(笑)。全然できませんでした。ホント、今では聴けないくらいの感じです(笑)。

――最初に作った曲の音源はあるんですか?

谷:
あります。祖母が持っていると思います。

――その後、ヤマモトショウさんと接点ができて、シンガーソングライターとして活動し始めるんですね?

谷:
そのへんがちょっとあやふやというか……ショウさんと出会ってすぐに<ミスiD 2018>っていうオーディションを受けたんです。最初の書類選考の締切数時間前にショウさんから“面白そうだから受けてみれば?”って言われて、慌てて書類とかを送ったら受かってしまいました(笑)。ショウさんとは一緒に音楽を作ってはいたんですけど、特にライブをしていたわけでもなくて、私とショウさんだけが知っている曲がどんどん増えていくだけというか……特に世に出すつもりはなくて、自分が考えたメロディをショウさんにアレンジしてもらったり、みたいなことをやっていたんです。今思うと素晴らしく貴重な時間だったと思いますけど、特に表立って活動していたわけではないので、シンガーソングライターとして活動していたという実感はないんですよね。

――ただ、曲を作って歌っていたのは事実なので、肩書としては“シンガーソングライター”だったんですね。

谷:
1曲だけMVを出したんです。だから何もしていないわけでもないんですけど、そんなに“活動していました”って感じではなくて。<ミスiD>の後、すぐにアイドルになったので、ホント実感はないです。アイドルをやる前に音楽をやっていたという意味で“シンガーソングライター”だったと言っているんですけど。

――そこからアイドルになるというのも、すごくユニークなキャリアですよね。

谷:
そうかもしれないですね。今も“アイドルから作家になるって珍しいよね”みたいなことをよく言われます(笑)。

谷のばら
谷のばら

いろいろなアイドルの曲を聴けたことは、今の活動にもすごく役立っている

――放課後プリンセス加入への経緯を教えてもらえますか?

谷:
<ミスiD>の選考委員に(放課後プリンセスの所属事務所の)社長さんもいらっしゃったんです。アイドルとは関係なく、“何か手伝えることがあったら言ってね”みたいなことを言ってくださって。それで“アイドルをやってみたいんですよね”みたいなことを言ったら、“放課後プリンセスの新メンバーオーディションがあるよ”って教えていただいたんです。

――いつ頃からアイドルをやりたいと思っていたのですか?

谷:
中学生の時に、バンドじゃないもん!が好きで。キラキラしているけど、ちょっとサブカル要素のあるアイドルが好きでした。放プリは王道という感じだったので、バンもんとはかなり色の違うグループに入りましたね(笑)。あ、でも、高校1年生の時に<TIF>に行って、放プリを観ました。高校生のうちにどうしてもやりたかったんですよね、アイドル。私、そう思ったらすぐに行動に移しちゃうタイプなんです(笑)。

――行動力がありますね。実際、アイドル活動はどうでした?

谷:
楽しかったです! ただ、めちゃくちゃヲタク目線でアイドルが好きだったというより、YouTubeとかを通じてバンもんを観たりするのが好きだったので、地下アイドルの活動をまったく理解していない状態で入ったんです。“こんなにライブがあるんだ!?”“対バンってこんなにたくさんグループが出るんだ!?”みたいな驚きばかりでした。ファンの人との距離も近いじゃないですか。“友達よりも話すんだ!?”って、それも驚きましたね。

――ステージに立っている時間より、特典会の時間の方が長かったりしますからね。

谷:
そうなんですよね。びっくりでした。でも、それもめちゃめちゃ楽しかったです。

――アイドル時代に学んだことは何でしょうか?

谷:
学んだこともいっぱいありますよ。対バンで、いろいろなアイドルさんの曲を近くで聴けたっていうのは、今の活動にもすごく役立っているのかなって思います。それはすごくよかったです。

――谷さんは、アイドルソングに必要なものは何だと思いますか?

谷:
7人のグループだったら、7人で歌うと映える曲を作ることが大事なのかな。やっぱりシンガーソングライターから始まっているので、最初の頃は“シンガーソングライター過ぎる”曲ができちゃって。1人で歌えるというか……ショウさんに“これどうですか?”って曲を聴いてもらうと、“ちょっとシンガーソングライター過ぎるかも”って言われることが何度かあって。そう言われると自分でも“確かに”って納得できる感じでしたし、それだとアイドルには合わないんだなって思いました。7人いるなら、7人で最大によくなる曲が作れたらいいですね。7人いれば、1人では歌えない曲も歌えますから。それでなお、キャッチ―になったらいいなって思いながら作っています。

――なるほど、自分の曲を作る時とはアプローチがまったく違うんですね。

谷:
そうですね。HAPPY CREATORSは今のところ全曲作詞と作曲を担当させてもらっているんですが、カラオケに入っているので、この前歌いに行ったんです(笑)。でも1人じゃ歌えませんでした。自分が作ったのに、これは歌えないぞって(笑)。“メンバーのみんな、ごめんね”って思いました。でも、1人では歌えないけど、7人だったら歌えるっていうことは、いい曲が作れたのかなって思います。

▲HAPPY CREATORS「ばれたい..!」MV

――いつかの夜に僕たちが、や、なみだ色の消しごむの楽曲も手掛けていますよね。どれもガールズグループということがあるのかもしれませんが、キーが高い曲が多い気がしました。ハイトーンが映えるというか。そのあたりのこだわりはありますか?

谷:
けっこうギリギリを攻めてます(笑)。なんとなくですけど、アイドルはキーが高い方がいいかなって思うので。高い方が聴き心地がいいというか、自分的にはキャッチーに聴こえる気がするんです。なので、“高くてごめん”って思いながら作っています(笑)。

――すごく純粋な質問なんですが、アイドル曲のキーはどうやって決めているんですか?

谷:
うーん、私は仮歌を自分でやっているので、自分が歌えたらいいだろうって思っちゃってます(笑)。自分が歌えて聴き心地もよければいいだろうって。たまに“高すぎる”って言われることもあるんですけど(苦笑)。でも基本的には自分の基準で決めていますね。私は男性グループに曲を作ったことがないんですけど、男性グループだったらどうなるんだろう?(笑)

――アレンジに関しては、どういう意識を持っていますか?

谷:
今はアレンジまでしていなくて、アレンジャーさんに任せています。めちゃくちゃシンプルなデモを作って、それをアレンジャーさんに送っていますね。あとはマネジメントからリファレンス曲とかをいただいていたら、それも一緒に送ります。私もその曲のイメージから作詞と作曲をしているので、それは伝えた方がいいと思いますけど、あとは“お願いします”って感じです。

――曲作りで使っているのは、アコースティックギターですか?

谷:
基本的にはそうですね。ただ、最近はピアノでやってみたりとか、いろいろ挑戦しています。ピアノは片手でしか弾けない……というか、コードしか弾けないです(笑)。今ちょっと練習しています。ピアノはちっちゃい時に3回くらい挑戦したんですよ。3回とも別の教室に通って。でも、どれもすぐに辞めちゃいました(笑)。ホント、今になって続けておけばよかったって思いますね。

――DAWは(PreSonusの)Studio Oneを使っているんですよね?

谷:
そうですね。Studio Oneはショウさんが使っているので、それに合わせて使っているんです。あと(表示が)カラフルなので好きです。“色がついてる! 青くて可愛い!”って(笑)。Studio Oneは色を割り振れるじゃないですか。あの作業にすごく時間をかけちゃいますね。可愛い色にしようって……全然集中できていないんです(笑)。

谷のばら
谷のばら

ちゃんと結果を残してショウさんに何かを返せたら

――谷さんは、2020年3月にアイドルを卒業しました。その理由はなんだったんですか?

谷:
アイドル活動していたのは1年ちょっとだったんですけど、私は1人の方が世の中のためにできることがあるんじゃないかなって思ったんです。アイドルが好きだからこそ、客観的に見て、自分はアイドルでいるよりも、シンガーソングライターとして曲を作ったりとか、もの作りをした方が世の中のためになるのでは、さらには自分のためにもなるのではと思って、辞めちゃいました。

――高校卒業と同時くらいですか?

谷:
そうですね。もう思ったらすぐに行動しちゃうので、なかなか短い期間だったんですけど、アイドルの経験が今活きていればいいなって思います。

――卒業してから最近まではどんな活動を?

谷:
いろいろやりました。別名義で弾き語り音源を出してみたりとか……私だって言っていないものもけっこうあります(笑)。それで、“谷のばらとしてできることはないかな”って去年(2024年)くらいから考えるようになって。私自身として何かをやりたいな、貢献したいなって思って、ショウさんに相談して楽曲提供をやらせてもらうようになりました。それまでも曲はずっと作ってはいたんですけど、今思うとそれまでの期間は考える時間だったのかなって思ったりもします。

――卒業してからの約4年間は、自分のことを見つめ直したり、いろいろなことをインプットするような時間だった?

谷:
そうですね。ボイトレに通って歌の練習をしたり、歌の表現について教えてもらったり……ボイトレの先生に作った曲を聴いてもらったりもしました。“何もしていない自分ごめん”って思いつつ、今後はどうしようかな?って思いつつも、今後のためになる期間だと信じて過ごしていたっていう感じです。けっこう、なるようになるかっていう精神なので(笑)。ダラダラしちゃったなとも思うし、それが4年も続いちゃったなとも思うんですけど、昨年、ショウさんに相談して今があるので、相談してよかったなって思います。

――ヤマモトショウさんの存在は、師匠と呼ぶくらい大きなものだと。

谷:
そうですね。私が音楽を続けていられるのは、ショウさんと出会ったからなんだろうなって思います。

――ヤマモトショウさんとの想い出で、特に印象に残っていることは?

谷:
なんだろう、難しいな……一緒にご飯を食べている時に“自分のあとを任せられるように大きくなってね”みたいなことを言われて、それは覚えています。だいぶハードルが高いですけど(笑)。でも、頑張るしかないって思いました。ショウさんのようになれるように……作家としてもですけど、自分で歌いたい欲もあるので、それもできたらいいなと。そこはショウさんとはちょっと方向性は違いますけど、楽曲提供をやりつつ、自分も歌ったり、曲を作ったりできたらいいなと思います。それで、ちゃんと結果を残してショウさんに恩返しじゃないですけど、何かを返せたらいいなと思っています。

――先ほどアイドルの楽曲はメンバー全員の色が出るように作曲するという話が出ましたけど、作詞という面ではどうでしょうか? アイドル楽曲の作詞をする上で気をつけていることはありますか?

谷:
グループのコンセプトは意識します。HAPPY CREATORSやいつかの夜に僕たちが、はデビューから携わさせていただいているんですけど、それってすごく重要な役割だと思うんです。デビュー曲を作るにあたって、どういうグループにしていきたいのかというお話を聞いたりして、やっぱりそれを曲にしないといけないと思うので……1曲目でグループの色や方向性が決まると思うんです。なので、みなさんが思い描いているグループ像にハマるように作らなくちゃと思います。HAPPY CREATORSだったら、“HAPPY”というすごくシンプルだけど大きなテーマなので、いろいろなアプローチができると思うんですけど、「きみのせいではっぴーです!」は、TikTokとかでバズを狙えるような曲を求められている気がしたので、振り付けのこともちょっと意識して書きました。

――なるほど。

谷:
《嬉しい 悲しい 楽しい おこです はっぴーです》という歌詞があるんですけど、そこは顔芸もいけるかなとか(笑)。結局、いろいろなハートを作るというような振りになって、すごく素晴らしいものにしていただいて。そんなふうに、詞を作る時点では、振り付けのしやすさみたいなものも考えましたし、セリフから始めるのはTikTok的なバズを狙いました。

▲HAPPY CREATORS「きみのせいではっぴーです!」MV

――谷さんの楽曲は細かい符割りのメロディが多い印象もありますが、そこも意識していますか?

谷:
だいぶ細かくしています。それが今は聴いていて楽しいし、流行りでもあるのかなと思って。ショウさんもそういう曲が多いので、だいぶ影響されているというのもあるんですけど(笑)。

――流行という意味では、日本で流行っているものを意識しているのですか? それとも海外のトレンドも意識してしますか?

谷:
私の目指すべき頂点はヤマモトショウさんなので、日本のバズってことになるのかなと。ショウさんみたいにキャッチーなメロディと素晴らしい歌詞を作りたい……間近で見ているからこそ、私もそうなりたいと思っています。バズといったら今はショウさんなので、目指すのはそこになっちゃいますね。

――先ほどグループのコンセプトやカラーを大事にして曲を作るという話が出ましたが、谷さん自身の色はどう考えていますか? グループの個性と谷さんの個性のバランスはどうするべきだと思いますか?

谷:
やっぱり自分から出てくる言葉なので、歌詞とかには特に自分が出ちゃう時があると思うんですけど、もともと自分の心情を描くということを、シンガーソングライターの時からあまりやっていなくて。今までフィクションでずっと考えていたんです。なので、軸は同じです。アイドルの楽曲なのに、谷のばらのことを歌っていたら、それはおかしいので。シンガーソングライターとして作ってきたものと、そんなに遠くはないですね。ただ、歌詞でいえば、耳に残る言葉は意識します。それと、メロディを歌う時に楽しい口の形でありたいというか、言いたい口の形というか……。

――そこまで考えているんですね。

谷:
でも、けっこうみなさん考えていると思いますよ。言いたくなるフレーズって、やっぱりメロディと重なってできるような気がするので、そこはちょっと考えますね。

谷のばら
谷のばら

武器は……曲が早くいっぱい作れること

――日本語の言葉を紡ぐという意味で、ヤマモトショウさん以外に影響を受けた人はいますか?

谷:
影響はどうかな……あまり考えたことなかったです。もちろんいろいろなところから影響されているはずなんですけど。これっていう人は浮かばないですね。

――音楽作家ではなく、小説家やアニメーション、映画などから影響を受けることはありますか?

谷:
それは影響を受け過ぎています(笑)。でも、これっていうのは難しい……けっこうアニメも観るし、小説も読むんですけど。ヤマモトショウさんしか出てきません、やばいですね(笑)。うーん、何か出したいな、なんだろう……好きなものはあるんですけど、影響されているかといったらよくわからないんですよね。

――では、好きな音楽というと?

谷:
JITTERIN'JINNが、すっごい好きです。小学生の頃に1番聴いたCDはたぶんJITTERIN'JINNなので、JITTERIN'JINNで育った気がしますね。

――谷さんの世代には、なかなかリンクしない時代の音楽ですね。

谷:
でも大好きなんです。あとはアニソンでいうと、「めてお☆いんぱくと」っていう曲がめちゃくちゃ好きです。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』というアニメの劇中歌なんですけど、魔法少女みたいな現実とかけ離れた歌詞が好きで。私の中ではJITTERIN'JINNもそうなんですよね。当時聴いていた人からしたらそうじゃないかもしれないけど、私にはめちゃめちゃファンタジー。「プレゼント」とか、“これどういうこと?”って思うんですけど、ファンタジーを感じます。あと、昔の曲ってタバコがよく出てくるじゃないですか。あと、自転車も。私は自転車には乗れないし、タバコも吸わないんですけど、そういう曲がめちゃくちゃ好きです。だから想像で楽しめるタイプなんでしょうね。

――そんな谷さんの音楽家としての武器は何だと思いますか?

谷:
武器は……いっぱい作れる。早くいっぱい作れることです(笑)。テーマやタイトルが決まったら早いんですよ。ショウさんも同じらしくて、それこそ私も影響されたんだと思うんですけど、どういうテーマで書こうかな、タイトルはどうしようかなって考えて決まったら、早い時は1コーラス30分か1時間くらいでできますね。で、早ければ早いほどいい曲なんですよね。やっぱり長考すればするほど、彷徨ってしまいます。早くできて自分でもしっくりきた曲をショウさんに聴いていただくと、“いいと思います”って言われることが多いです。

――ちなみに曲を作る時間帯はありますか?

谷:
私、夜しか頑張れないんです(笑)。深夜の3時とか4~6時とかに作っています。部屋のカーテンがちゃんと遮光しないやつなので、朝になると部屋に光が入ってくるんですけど、そんな中で、これじゃあ寝れないよって思いながら寝るっていう感じです(笑)。あ、でも昼とか夕方とかにお散歩しながらテーマを考えたりはしています。ただ、曲にする作業はめちゃめちゃ深夜なんですよね。

――今年はどんな活動をしていきたいですか?

谷:
今年からソロもやっていきたいなと思っていて。ただ、今はアイドルさんにたくさん曲を作らせていただいている状況なので、ウマく両立できればいいですね。アイドルのみなさんのバズと自分の曲のバズ、どっちも出したいなと思っています。と言いつつ、自分の曲は難しいです(笑)。なんだか全然いいものにならないんですよね。自分としてはこれが自分らしいのかなと思っても、ショウさんに客観的に聴いてもらうと“なんか違うんですよね”と言われてしまうこともあって。今は自分の曲の方が苦戦していますね。

――自分のことの方が客観視しづらいんですかね?

谷:
それもあると思うし、またバズ的な視線になりますけど、アイドルのバズとソロシンガーのバズって違うと思うんです。私は今までアイドルの方ばかり考えていたので、ソロのバズがよくわかっていないというか、ソロシンガーの今の流行りやこういう曲が聴かれやすいといった状況の情報収集に時間がかかっている感じなんです。

――そんなふうに分析することも好きなんでしょうね。

谷:
好きと言えば好きですけど……でも、結局最終的には感覚でやっている気はします。さっきも言ったように、考えれば考えるほど、曲が“う~ん”って感じになっちゃうので、ちょっとリサーチもしつつ、自分の感覚的にもばっちりくる曲を作れたらいいですね。

ーーありがとうございます。それでは、最後に現在活動中の谷さんの新章のタイトルを教えてもらえますか?

谷:
「そしてのばらもまわる」です。今までの経験が、これからもずっと繋がっていくから、このタイトルにしました。

谷のばら

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