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「好きな自分になるために、登る」日本人女性初、8000m峰14座制覇まであと1座。渡邊直子さんにインタビュー【後編】

Sitakke

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こんにちは、HBCアナウンサーの堀内美里です!
この連載では、山登り初心者でも楽しめる、お手軽✕絶景の山をご紹介しています。

連載「堀内美里の言いたいことは山々ですが」

今回は、特別版!登山家、渡邊直子さんのインタビュー記事をお届けします。

この記事は【後編】です。
→【前編】ヒマラヤ山脈で”焼きたてクロワッサン”!?8000m峰14座制覇に挑む登山家、渡邊直子さんにインタビュー

【後編】日本人女性初8000m峰13座登頂! 看護師、兼 登山家 渡邊直子さんインタビュー

ベースキャンプでのようす~イタリア人の男性看護師と

看護師 兼 登山家の渡邊直子さん。

世界に14座しかない、標高8000mを超える山のうち、13座の登頂を達成しました。
標高8000mを超える山は、酸素濃度は地上の1/3、「デスゾーン」とも呼ばれます。渡邊さんは、2024年4月から、全14座・最後の1座 ヒマラヤ山脈のシシャパンマ(8027メートル)へ出発予定。これに登頂すれば、日本人女性として初の記録になります。

「8000m峰が休息の場」「8000m峰がなければ生きていけないと思う」

看護師、兼、登山家として…普段はどんな生活を?

以前は施設の夜勤業務を主に仕事していましたが、今は健診業務や予防接種業務を主にしています。その他、ヒマラヤ登山を企画したり、トークイベントを企画したり、講演会
に招かれたりしています。

2年位前は一日2.3時間しか寝ずに働く生活で…。ヒマラヤに行く前日まで働き、そのまま向かって、ヒマラヤで寝る!みたいな生活でした。
ある意味、私にとっては、8000m峰が休息の場ですね。早起きして朝焼けを眺める、なんてこともする人が居る中「12時まで起こさないで!」みたいな。(笑)

ハードスケジュールをこなしてでも、やはりヒマラヤに行きたいんですね。

その為に、ほぼ休みなしで働いてお金を稼ぐ。そしてヒマラヤに行くのにうん百万使って、帰ってきたら、ゼロ円かマイナスみたいな。それを繰り返す感じ。
でも、そこまでしても行きたいんです。仕事をして、飲まないとやってられない!って人いるじゃないですか。私はそれと同じように8000m峰に行かないとやってられない。それがないと精神のバランスが保てない。生きていく意味がないと感じてしまいます。

日本での生活は?

自然は好きだけど、虫にはびっくりするし、ゴキブリは苦手(笑)地上ではオシャレなカフェに行きたいし、この後も行く予定です。
今はもったいないと思って家も引き払っちゃったけど、自分の好きな空間を作って、山とは切り離して生活していました。
あとは普段からトレーニングするの?ってよく聞かれるけど、全くしません。

食事制限もしないし、タクシーやエレベーターも駆使します。ヒマラヤって意外と、トレッキングでは平坦な道のルートが沢山あるんですよ。ずっと登っている訳じゃないし、休憩ポイントもたくさんあるし。皆が思っているほど、敷居は高くないと思います。

好きな自分になるために、8000m峰に行く

とてもパワフルな渡邊さん…ご自身の性格についてはどう思いますか?

自分は、社会には不適合かな…少なくとも協調性が無いタイプだと思います。日本だと、誰かと一緒にいるのに疲れて、一人になりたいって思っちゃう。よくよく考えてから発言しなきゃいけなかったり、小さいことを気にしたりしないといけない、社会の雰囲気が苦手なのかもしれない。だから日本にいる自分は嫌いです。

でも、ネパールにいると逆になります。現地のスタッフたちとワイワイ話すのが楽しい、もっと話していたいと思うんです。ネパール人は考えがシンプルだし、どんな人でも受け入れて許す文化があって好きですね。

アンナプルナ1峰で韓国隊の朝ごはんに招待された時
2013年エベレスト登頂後に同じ隊のシェルパ(ヒマラヤの案内人)たちと

本格的な登山を始めたことで、性格は変わったと思います。昔の方が引っ込み思案で目立たない子どもでした。でも看護師と登山の経験で、強くなって意見を言えるようになりました。もっと可愛らしい方がモテるんでしょうけどね(笑)良くも悪くも変わったかな。

でも、まだまだ自分に自信がないです。自分に満足が出来ていない。だから素直な自分に戻るために、もっと自分を好きになれるように、ヒマラヤに行っているんだと思います。

仲間との生活と、「死」について

ヒマラヤでの暮らしで、印象的だったことは?

ヒマラヤに行く中で色んな仲間が出来ました。キッチンスタッフやシェルパ(ヒマラヤの案内人)達と多く過ごす間に、自然とネパール語も身につきました。一番信頼している友達は、エベレストで出会ったシンガポール人のおじさん。

エベレストとマカルーに登頂できたのは彼のおかげです。小さな悩みでも聞いてくれます。彼とは地上で出会っても仲良くなれていたと思います。
でも同じ遠征で仲間が亡くなったり、救助したりしたことは、何度もありますよ。各々が「何かあっても仕方ない」という覚悟を持って、ヒマラヤに来ているんですよね。自分も死ぬかもしれないと思ってその場に居ますし。

私は長く生きることだけが良いことじゃないと思っているんです。短い人生でも、その人が満足ならそれでいいと思うし、運命だったんだろうなって。だからあまり引きずらないですね。
私もヒマラヤに行く時は、部屋を全部綺麗にします。遺書のようなものも書いて、自分が居なくなっても困らないような準備はしておきますね。母親にも仕方がないと思われています。応援半分、心配半分、みたいな(笑)

渡邊さんが登り続ける理由って?

私、いまだに学生みたいな精神なんですよ。常にやりたいことにむかって頑張っていたい。死と隣り合わせになることで自分の知らない自分が出てくる。もっと自分を知りたい。
一番は楽しい遠征をすること。楽しくないと意味がないですから。そして今は新しい夢に向かって、準備をしています。


「変えたい自分がいるなら、いま行動を」新たな挑戦へ

今後、山登り以外で挑戦してみたいことはありますか?

これからは、世界中の子どもたちがヒマラヤで冒険を楽しめる活動をしたいと思っています。
私は、幼い頃に、自然の中で色々な経験ができたお陰で感性が豊かになりました。子どもの頃に体験するのと、大人になってから体験するのでは、感じることが違うと思うんです。コロナの影響もあって段々そういう機会が少なくなっていると感じるので、私がその機会を作りたいです。

小学4年生で初めて冬山登山企画(八が岳)に参加したとき

(具体的には)私が子どもの頃に参加していた登山では大人のスタッフたちは時々ロッジに泊まり、子ども達は常にテント泊でしたが、いつか大人になってロッジに泊まることが目標になりましたし、テント泊も忘れられない思い出になりました。自分達でご飯を作りましたし、自分の荷物も共同で使う装備も持たされて登っていました。日本から親もついてきませんでした。過酷な経験の方が印象に残りますからね。自分が体験したことを今の子ども達にも体験してもらいたいです。

小学生で冬の穂高を縦走する企画に参加した時

そして子どもだけじゃなくて、大人にも気軽にヒマラヤを楽しめる経験をしてもらいたいですね。
ベースキャンプにいるだけでも楽しめるので、疲れている大人にこそ、ヒマラヤに来てほしい。登らなくてもヘリコプターで来てもいいですしね。あと、ヒマラヤ来たら、モテますよ(笑)


最後に、読者へのメッセージはありますか?

自分を変えたいなって思っている人のひと押しになれたらって思っています。
7座くらい終わったころに、この夢が出来ました。自分にしかできないことなんだろうなって思って。

それを実現するために、いまは14座登頂を目指しているのもあります。「日本人女性初」というタイトルが付くことで信頼してもらうきっかけになれば。
いまなにか人生にモヤモヤしている人にこそ、思い切ってなにかに挑戦してみてほしい。

ヒマラヤに挑戦するのも、アリですよ!年末にヒマラヤトレッキングを募集した時も、ほとんど全員、初心者の人が来ました。みんな楽しかったって言って、延長して帰っていきましたよ。いつかやろう、60歳になったらやろう、って思っても結局やれなかったりするので。
まずは行動を起こしてみてほしい。挑戦。堀内さんも、ぜひ挑戦を!ヒマラヤでもお待ちしています!

渡邊直子さんへのインタビューを終えて…

溢れんばかりのバイタリティーの渡邊直子さん。話しているだけでパワーを貰えました。インタビューをするまでは、遠い存在の人だと思っていました。
でも、根源にある「自分を好きになりたい、自信が欲しい」という気持ち…。それを実現できる手段が、渡邊さんにとってはヒマラヤだったというだけで、私たちと大きく変わらない、一人の女性だと感じました。

でも、渡邊さんの行動力はやっぱりすごいです。
私も「出来ることは今のうちにする」「自分を変えるチャンスは勇気を出して掴む」。

この2つは日常生活でも実践していきたいと思います。
この記事を読んでいるあなたが、あと一歩を踏み出せない時に、この記事や渡邊直子さんのことを思い出していただければ嬉しいです。
いっそのことヒマラヤに行ってみるのもありかもしれません。その時は一声かけてください。有給をためておきますね!(笑)

山ポーズ!一緒にやっていただけました!

今年、最後の一座の「シシャパンマ(チベット8027m)」に挑戦する予定の渡邊直子さん。

日本人女性初の8000m峰全座登頂まで、あと一座。
夢の実現に向けて渡邊直子さんのホームページでは支援者を募っています。https://naoko-watanabe.jp/

連載「堀内美里の言いたいことは山々ですが」

※北海道の山に登るときは、クマについても知っておきましょう。「クマに出会ったら」「出会わないためには」の基本の知恵は、HBCのサイト「クマここ」で、専門家監修のもとまとめています。

文:HBCアナウンサー・堀内美里(ほりうち・みさと)
北海道生まれ・北海道育ち。2021年入社。HBCテレビ「グッチーな!」「吉田類 北海道ぶらり街めぐり」、HBCラジオ「平野龍一のミライの扉」を担当。登山歴3年。おいしくごはんを食べるために山に登っています。登山の魅力は[インスタグラム](https://www.instagram.com/hbc_misato_horiuchi/
編集:[Sitakke編集部ナベ子]

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