【たつの市】淡口醤油の文化を守りたい。自家製天然醸造が自慢の『末廣醤油株式会社』 たつの市
「醤油の街」として栄えているたつの市は、醤油の日本三大名産地として古くより知られています。特に“うすくち醤油”については発祥の地として知られ、関西の出汁文化とも密接な関係を築いています。
せっかくなので地元の醤油メーカーについて知りたいと思った筆者、自分の足で醤油の会社を巡ってみることにしました。
今回訪れたのは明治12年創業の『末廣醤油株式会社』。天然醸造にこだわる昔ながらの製法を守り続けている醤油メーカーとして知られ、地元の飲食店や個人の消費者からも熱く支持を寄せられている会社の一つです。
さて、ここで頭の中に疑問が沸いた筆者。“天然醸造”とは、いったいどんな製法なんでしょう?
その疑問に答えて下さったのが、末廣醤油株式会社の代表取締役社長の末廣さん。
「天然醸造というのは、麹菌を始めとする微生物の働きによって醸造されるもので、原材料は大豆、塩、小麦のみ。また、明治から引き継がれてきた醤油蔵で、時には窓を開けて自然の風を通し、季節の温暖差を利用しながらゆっくりじっくりと丁寧に時間をかけて作っていくんですよ」と教えてくれました。
通常、工場見学は、仕込みが開始される10月から5月の間のみ。6月~9月にかけては、通常見学出来ませんが、今回は特別に工場の一部のみ見せて頂けることに。
まず、最初に訪れたのは、原材料となる麹を作る「製麹場」。大豆と小麦に麹菌をまぶして麹を作る大事な作業を行う場所です。
製麹場前には、末廣醤油の看板商品でもある、「本造りうすくち醤油」の小麦と大豆が置いてありました。
「実は、皆さんの知っている淡口醤油と濃口醤油の原材料はまったく同じものなんです」と末廣さん。いったい何が違うのか…というと、実は熟成の期間なのだそう。
(※ちなみにたつの市を中心とした関西圏では、醤油の”濃淡”を表す”淡口”(うすくち)と表記するそうです!なるほど!)
次は、麹を熟成させる「仕込み蔵」の一部を見せて頂けることに。
大きな樽の中には先ほどの「製麹場」で製造された“麹”と“食塩水”を合わせで仕込んだ“諸味(もろみ)”がいっぱいに貯蔵されていました。
醤油になる前の、諸味の熟成された濃厚な香りが漂います。
「実はこの“パイプ”の中に先ほどの『製麹場』で作られた麹が入っているんです。仕込みの時には、このジョイント部分を外して、樽に直接麹を挿入するんです」と部屋の中心にあるパイプを指さす末廣さん。
末廣醤油の場合は、通常、濃口醤油に関しては、樽で1年半~2年ほど熟成させます。それに対して淡口醤油はというと、早くて4~5ヶ月、長くて10~11ヶ月ほどで完成するとのこと。季節によって仕込み時間が変わっていくそうです。
また、若干薄口醤油の方が仕込みの際に使用する塩の量が多い為、“淡口醤油の方が塩味が強い”という仕上がりの違いが生まれるそうです。
他にも、工場内の醤油の圧搾機や、実際に絞った火入れ前の生揚げ醤油。出荷前の商品など、末廣醤油のリアルな現場をを見る事が出来ました。
何よりも、筆者が感じたのはこの建物から感じることの出来る、古い歴史の名残。現代に残る煙突や蔵の梁を目の当たりにすると、まるで自分が明治時代にタイムスリップしてきたかのような、そんな気持ちになりました。
入口の売店では、同店自慢の醤油がずらり。筆者も以前からよく購入している人気の淡口醤油や、かけて楽しむ醤油シリーズの「薫紫」「淡紫」「濃紫」もあります。
また、2017年には創業当初から親交のあった「カネヰ醤油」ブランド事業を継承。ブランド・社員・お客様を引き継ぎ、末廣醤油株式会社と共にその事業を守り続けているそう。今後はカネヰの醤油蔵を生かした文化的事業も来年度からスタートするそうです。
「実は淡口醤油の使用量は年々減り続けています」と話す末廣さん。昔は煮物やつゆにも淡口醤油が使われていましたが、今では麺つゆなどの醤油加工品も出回り、薄口醤油の消費量は減少傾向とのこと。
たつの市の醤油業界を若い世代にも知ってもらいたい…という強い思いが、末廣さんの語る言葉の全てから感じ取れました。
末廣さんの熱い思いを知り大好きな醤油を応援したいと思った筆者。
取材の次の朝、購入した薄口醤油を使い作ってみたのはお弁当に入れる出汁巻き卵で、綺麗な色と味わいに、とっても嬉しくなりました♪
さあ、次はどの醤油を使って何を作ろうか…と思いを巡らせるのは本当に楽しいこと。醤油探しの旅はまだまだ続きます♪
場所
末廣醤油株式会社
(たつの市龍野町門の外13)
時間
9:00~17:00
定休日
土曜日、日曜日
TEL
0791-62-0005