書で応援!ふるさと大使・支部蘭蹊さん(書家) 釜石で個展「言葉との出合いを」
「釜石応援ふるさと大使」で宮城県仙台市在住の書家、支部蘭蹊(はせべらんけい=本名・一郎)さん(73)の個展「見る・観る・魅る-書・響きあい展」は9月27日~29日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。昨年に続く2回目の開催で、ずらりと並んだ約100点はほぼ新作。つづった言葉に込めた思いや表現世界を、独創性という“味”を加えた文字で伝えた。
支部さんは中学、高校時代を釜石で過ごした。東日本大震災後、釜石市内の仮設住宅を回って書を届けたり、高校の同期生でつくった復興支援グループ「釜南44」の活動(作品展示や音楽イベントなど)を通じて古里応援を続けている。2022年に同大使に就任。今年から、「脳活書道」という手法で文字を書くことや創ることを楽しんでもらう講座を月に1回開いている。
会場に多く並んだのは額入りや掛け軸、帯地を利用したタペストリーなど日常生活で目にできる形に仕上げられた作品。はがきや置物もあり、心に寄り添う言葉のほか、宮沢賢治や石川啄木、金子みすゞらの詩、井上ひさしの言葉、種田山頭火の句などを書で表現した。
ひと味違う―のが、支部さんの作風。書道は「筆と紙があれば」と思うが、半紙のような白っぽい紙を使っているものは少ない。紙ではないものも多く、着物など布、壁紙を使い、表面の凸凹を生かした立体表現を見せる。硯石に刻字(すかし彫り)した作品は震災被災地で石の産地・石巻市(宮城)を応援、「一緒に頑張ろう」と気持ちを込めて使い続ける“書紙”の一つだ。
立体との視点では、独自の技法「墨彩書(ぼくさいしょ)」も紹介する。表面には普通に文字を書くが、裏面から油分を含んだ墨を吹きかける手法。墨の黒文字の外側に白い枠線がついた“袋文字”的なものだが、色彩のコントラストで文字が浮かび上がっているように見える。
墨をつけたら筆になるー。「何を求める 風の中ゆく」としたためた作品はたばこのフィルターを使い、「はばたき」と記したものは金色のインクが入ったチューブで字形を絞り出している。使う素材を生かす支部さんが残す文字は自然体。「書道は言葉との出合い。手紙文なようなもので、読めて、相手に伝わらなければ」と一文字ごとに思いを乗せている。
書道は「難しい、次元が違う」「書いても下手」と思われがちだと話す支部さん。「違う世界がある」と、会期中に書のパフォーマンスを見せた。来場者の好きな言葉を書いてプレゼント。その際に見せたのが脳活書道で、文字を分解して書き順を変えながら書き上げた。「絵を描くように文字を創り上げる。書はデザイン。アートしようよ、ということ」と楽しそうに笑った。
支部さんは、鑑賞をきっかけに「何かやってみよう」という人が増えることを期待する。「だまされたと思ってやってみてほしい」と呼びかける脳活書道講座は10月13日、11月24日(会場はいずれも釜石情報交流センター)に開催予定。「文字に対する新発見を糸口に発想を転換させ、脳に刺激を。若々しく元気に、人生、いきいき楽しみましょう」。個展のタイトルに込めた“響きあい”を待つ。