真田広之「SHOGUN 将軍」シーズン2は「もう自分のためではない」 ─ 単独インタビュー
世界を席巻したドラマ「SHOGUN 将軍」が、未開のシーズン2へと進む。エミー賞史上最多18冠に輝き、数々の快挙を打ち立てたシーズン1で、原作小説はすでに描き切った。激動の戦国時代を描いた熱き物語の“その後”を独自に描く野心とともに、2026年1月の撮影開始を目指す。
2025年11月には香港にてプレス向けラインナップ紹介イベント「・オリジナル・プレビュー 2025」が開催。シーズン1で主演・製作を務めた真田広之も登壇し、新キャスト発表とともに意気込みを語っている。
このイベントの後、真田はTHE RIVERによる貴重な単独取材に応じた。異例更新となったシーズン2と、さらにその先の日本と世界を見据える真田は「SHOGUN 将軍」を次世代のための“プラットフォーム”と表現。「もう自分のためではない」と、かつてない覚悟を語った。
「SHOGUN 将軍」シーズン2 真田広之 単独インタビュー
──「SHOGUN 将軍」シーズン2、おめでとうございます。実はをさせていただきました。プレビューイベントや新キャスト発表も行われ、いよいよシーズン2が表立って始動しました。今のお気持ちや、反響はいかがですか?
シーズン1のキャンペーンの時は、お世話になりました。みなさまのおかげで、世界的に良い成績を残すことができました。観客からも批評家からも良い評価を得られたというのは、すごく珍しくもあり、ありがたいこと。改めてお礼を申し上げます。
シーズン1のプロモーションをしているときは、まさかシーズン2があるとは思っていなかった(笑)。世界的な評価を得た後に、その期待に応えてシーズン2をやろうということになりまして。当初は、シーズン1で終わるつもりでいました。原作も使い切ったし、本当にいけるんだろうかという思い。
シーズン2を決意したのは、『SHOGUN 将軍』というプラットフォームを、スタッフ・キャストも含む日本の素晴らしい才能を世界に紹介できる貴重な場として残すべきではないかと思ったからです。気がついたら、スタートしていた。すでにバンクーバーに行ったり来たりしながら、エキストラの方々の訓練とか、スタッフとのミーティングも重ねて、来年の1月にはクランクインするというところまで来てしまって。本当に、気がついたらここにいた感覚。もうすぐ撮影が始まるんだという、自分でも信じられない。嬉しい気持ちと、いろいろ入り混じっている状況ですね。
(c)2025 Disney and its related entities
Courtesy of FX Networks
──シーズン1で、原作小説の全てを描き切りました。シーズン2では、日本の史実とオリジナルを織り交ぜながら描くことになるかと思います。そのバランスはどのように?
おそらくシーズン1と同じようなバランスです。シーズン1でも史実には基づきながら、実際にこの人とこの人が同じ場所にいることはあり得ない、ということもやってきましたし。それは原作の小説のテイストに基づいていたんですけれども。今回もそれをかなり踏襲します。
史実とオリジナル、フィクションの混ぜ合わせ方のバランスはシーズン1と同様にやっていきます。脚本家チームにシーズン1で学んでいただいたテイストをキープしたい。
でも、もう原作がない以上、そこに縛られずに、さらにオリジナリティを追求したい。「史実がこうだから」という制約をあまり与えないようにして、自由に書いて、膨らませてほしいという思いを託しました。
今回もシーズン1同様、史実に基づき、モデルもいるんですが、歴史を知っている方でも「え!そうきたか!」という意外性とか、捻りを散りばめていく。シーズン1のファンの方も、原作がない中でどう進んでいくんだろう、というところに良い形で応えられればという思いで、脚本作りも大詰めに来ているところですね。
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Courtesy of FX Networks
──ファンとして、シーズン1は“非の打ち所がない”作品でした(真田、「いえいえ……」と首を振る)。しかし、プロデューサーを手掛けられた真田さんの内に、もしも「実はもっとこうしたかった」「実現できなかった」という想いがおありであれば、シーズン2ではどう活かしていきたいですか?
数え上げればキリがないんですが……(笑)。やはり、全ての環境が整っていたわけではないですし、現場でできる限りのことをやり、足りないところはカメラワークや編集で補っていて、ギリギリ漕ぎ着けた感もあるんですね。
なので、スタジオとも話し合って、シーズン2では日本人クルーをさらに増やしました。まもなく発表になると思います。各部署に、シーズン1で好評を得た「authenticity(真正さ、本物らしさ)」をグレードアップするためにも、そういうことをしました。
これまで、どの作品でも「完璧だ!やり切った!」という感覚は1度もないんですけど、その反省があってこそ、次やる時にはこうしよう、こうしようと、毎回学ぶことが多い。今回も、シーズン1のチームワークはそのままに、新たなメンバーを加えて、さらに先へ進もうね、というところで戦っているところです。
<!--nextpage--><!--pagetitle: 「日本やアジアの才能が世界に向けて紹介できれば」 -->
──シーズン1ではプロデューサーとして、細かなところまで監修をされたとお伺いしています。足音の聞こえ方ひとつまで気を配られたと。今回のシーズン2では、プロデューサーとして担当範囲が増えたことは?
今回はエグゼグティブ・プロデューサーとなりました。プロデューサーとしての肩書自体、シーズン1の時が初だったんですけど、初のEP(エグゼグティブ・プロデューサー)ということで。
現場やスタジオに戻った時、周りの方の見る目や、耳を傾けてもらえる範囲が広がった。同時に、そこには責任が伴います。下手なことは言えないぞ、と。
やはり、言ったことが通ってしまう“良さ”と“怖さ”が同時に押し寄せていて……。言うからには、裏付けを取って発言しないと、それでカンパニーが動いてしまうという責任感はすごく感じますね。
今までは、プロデューサーとしての肩書きがないが故に、意見を言うことを躊躇したり、タイミングを見計らって、どんな言い方をすれば相手のプライドを傷つけずに作品を良くできるか、というのがテーマだった。シーズン1でプロデューサーの肩書きを頂いたことによって、意見が堂々と言えるようになった。プロデューサーとして日本人スタッフを雇えたことで自分の負担が軽くなった。
同時に、自分が呼んだスタッフの全てに対して責任を持たないといけない。そのやりやすさ、楽しさと同時に、責任も感じました。今回は、それが増幅したという感じ。意見が通りやすいが故に、発言に責任を持たなければいけない。
──「SHOGUN 将軍」を“プラットフォーム”だと表現されているのが印象的でした。本作をもって、アジアや日本の俳優やアーティストたちの世界的な注目度は一気に高まったと思います。「SHOGUN 将軍」を通じて、どのような未来や希望を見据えていらっしゃいますか?
この作品を撮っている時には、まさかこういう評価を得られるとは……、夢には描いていたのですが、ここまで評価されるというのは思ってもいなかった。とにかくやれるだけやって、アピールをして、日本やアジアの才能が世界に向けて紹介できればという思いでした。
今回のシーズン1の成功を受けて、その思いがより強まった。作品が評価されたことによって、可能性が広がったと思うんですね。アジアに向けて、日本に向けてのハリウッドの門がより広く開いた。橋をかけるという意味では、今はまだ木製かもしれませんが(笑)、(シーズン1で)木造りの橋が掛かった感覚はあるんです。
それをいかに幅広く、強固なものにしていくかというのがシーズン2の役目だと思っています。もともとシーズン2は考えずに作っていたので……、本当にできるのか、なぜやるのかと考えた時に、やはり“プラットフォーム”として、自分の俳優としての欲よりも、プロデューサーとしての使命感です。
私がシーズン1で味わった、あの思い……。素晴らしい才能を世界に紹介する、そして評価されるというプロセス。もう自分のためではなく、今後の日本のキャスト、クルー、アジアの人たちのために、この場を維持することが大事だと。それがシーズン2を引き受ける一番の原動力でした。
じゃあさらに、本当にオリジナルでどこまで行けるのか。このチームワークと新たなキャストで、もう一度世界にアピールしようよと。自分の中では、“プラットフォーム”として受け入れる場をキープすることが、シーズン2の大きな意味となりました。
「SHOGUN 将軍」シーズン1は、ディズニープラス スターで全話独占配信中。シーズン2の撮影は2026年1月に開始される。