毒があるのにヒグマが食べる植物…その理由は? 「危険な植物」から考える、森の楽しみ方
北海道では「世界で最も危険な植物」と呼ばれるバイカルハナウドに似た植物が見つかり、ニュースで話題になりました。
前編の記事では、ほかにもある「危険な植物たち」について紹介しましたが、この記事では、「危険なだけじゃない側面」についてご紹介します。
連載「森に行こう! ~身近な自然におもしろさが詰まっている~」
札幌にある「滝野すずらん丘陵公園」の「滝野の森ゾーン」から、森の住人KENTAが、自然の魅力や楽しみ方を伝える連載です。
危険な植物だけど…
前編で特徴をお伝えした、注意が必要な植物のひとつが「ウルシ」。皮膚に触れると痒くなることがあります。
このウルシの仲間は、秋になると1番最初に赤く紅葉します。
他の葉っぱがまだ緑の中、真っ赤に染まるのでとても目立ちます。滝野すずらん丘陵公園では、10月上旬に滝野の森ゾーン西エリアにある「カラマツの尾根」に行くと、カラマツに巻き付いたツタウルシの葉っぱがオレンジに染まり圧巻です!
春一番に咲く花の一つにミズバショウがあります。
春一番のまだ他に花がない時期に咲くので、ミズバショウを見て春を感じる人も少なくないのではないでしょうか。でも実はミズバショウには毒があり、根茎を食べるとお腹を壊すことがあります。
そして、森の中にはこの毒を利用している動物がいます。ヒグマです。
ヒグマは冬眠明けにわざわざ毒のあるミズバショウを食べて、冬眠中にお腹にたまった毒素を吐き出すそうです。様々な事件もあり怖いイメージもありますが、死なない程度の毒を利用するなんて、野生動物たちの知恵と勇気に驚かされます。
森の中には毒のある植物や、棘があったりして危険な植物がたくさんあります。
ただ、トリカブトやミズバショウのように、毒があってもとてもきれいで散策の楽しみになってる植物もたくさんあれば、ウルシのように漆器として使われるものもあります。さらには毒のある植物の中には薬として使われているものもたくさんあります。
毒を持つことは植物たちが生き残る為の戦略。ただ「危ない植物」としてくくってしまうのではなくて「毒のある植物にはどんなものがあるんだろう?」とか「それはどんな毒なの?」「どんな花が咲くの?」といったことを調べて植物たちの「生き様」を知ることも森の楽しみの一つです。
森の中にある危険は「知る」ことで回避できるようになったりなくせるものがあります。「備えあれば憂いなし!」。気になる植物や生きものがいたら図鑑やネットなどで調べてみて、安全に森を楽しんでください!
連載「森に行こう! ~身近な自然におもしろさが詰まっている~」
文:森の住人 KENTA
国営滝野すずらん丘陵公園 自然環境マネージャー。1978年札幌生まれ京都育ち。約6年間のサラリーマン生活を経て、森についての知識・経験ゼロの状態で滝野の森ゾーンの担当になり、様々なイベントの企画や広報、森づくりなどを担当。公園内にヒグマが侵入した際は専門家と一緒に現場の最前線で調査を担当。滝野の森staffXにて監視カメラを使った野生動物たちのリアルな様子などを発信中。
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は記事執筆時(2025年7月)の情報に基づきます。