「遥はいつまでも私の憧れで、尊敬する存在です」──『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』Blu-ray発売記念 MORE MORE JUMP!桐谷 遥役・吉岡茉祐さんインタビュー
アプリゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク(『プロセカ』)のアニメ映画『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』。本作のBlu-rayが2025年10月29日(水)より絶賛発売中です。
アニメイトタイムズではBlu-ray発売を記念して、キャスト&ボカロPへの連載インタビューを実施。第2回となる本稿は「MORE MORE JUMP!(モモジャン)」より、桐谷 遥役の吉岡茉祐さんが登場です。
劇場版を通して、改めて『プロセカ』の凄さを感じたと語る吉岡さん。アプリリリースから約5年と長い付き合いになる遥を演じるにあたり、とある違和感を覚えたそうで……?
吉岡さんが考えるモモジャンの魅力とは。『劇場版プロセカ』公開前に掲載された小倉唯さん、降幡愛さん、本泉莉奈さんのインタビューから約一年。昨冬からの伏線回収にもご注目ください!
【写真】『劇場版プロセカ』吉岡茉祐 BD発売記念インタビュー
言葉を介さずとも表現される“らしさ”
──『プロセカ』が映画になると聞いたとき、どのように思いましたか?
桐谷 遥役・吉岡茉祐さん(以下、吉岡):ファンの方の間でも「いつかアニメ化しそう」という空気があった中で「ついに待望のアニメ化だ!」と思っていたら、まさかの映画化でした(笑)。
映画は、尺がある程度決まっているので「どうやって落とし込むんだろう?」と感じたのが第一印象です。でも実際に映画を見てみると、これを超えられるものはないだろうな、と思うぐらい完璧で……! 最適解を出された感じでした(笑)。
──満を持して公開された後も、大きな反響を呼びました。
吉岡:こんな素敵な作品を生み出せる『プロセカ』の凄さと、ハードルが上がった状態でも、期待をゆうに超えてくるミクの凄さを改めて感じた機会でした。
私も一人の『プロセカ』ファンとして、一人のユーザーとして見たいものがたくさんありましたが、それらを網羅しつつ新しい物語も味わうことができました。公開されてからは本当にホクホクした気持ちで過ごさせていただきました。
──特に印象に残っているシーンというと?
吉岡:たくさんあって選べないですね……! うーん……(悩みながら)すごく変なシーンを挙げていいですか?
──ぜひお願いします。
吉岡:各セカイのミクが帰ってきて、キャラクターたちがミクをお迎えをするシーンです。その迎え方にユニットの“らしさ”が出ていて素敵だなと思いました。
モモジャンで言うと、まず真っ先にみのりが駆け寄り、その後を追いかける遥、その後方からお姉さんの2人が“良かったわね”としみじみとしているんです。そのシーンだけでモモジャンの関係性が語られているかのようで……。
言葉で説明するだけでなく、数秒だけで“らしさ”を表現できるんだなと気づかされました。「なるほど、これを『プロセカ』はずっとやってきたんだなぁ」と。とても印象に残りましたし、私自身も気づきになったシーンでした。
──『プロセカ』のキャラクターたちに加え、初音ミクの銀幕デビューという意味でも深みがある作品なのかなと。
吉岡:そういえば、ミクが映画になるのは初めて……?
──本作が初となります。
吉岡:わぁ!(拍手しながら)おめでとう〜!!
ミクを入り口にしてくださった方も、逆に『プロセカ』のキャラクターから興味を持ってくださった方もたくさんいらっしゃると思います。全世界から注目されるのは本当にすごいことですし、私もこの作品をきっかけに知り合いが増えたんです。
──へぇ!
吉岡:母の知り合いの方から、人伝いに感想が送られてきたんです(笑)。「映画観ました!」「モモジャンが好きになりました」と多くの方から感想をいただいて。これまで様々な作品に参加させていただきましたが、こんなにも温かく広い輪が広がったことはありませんでした。
この『劇場版プロセカ』が世の中に出たことで、私を「『プロセカ』のモモジャンの人」と認知してくださる方が増えたり、知り合いが増えたりして、改めて人気の高さを実感しました。これもミクが繋いでくれたご縁なんだなと。本当に良い出会いをさせていただいたなと思います。
まるで玉手箱を開けたような「FUN!!」
──映画ならではの魅力のひとつである日常パートを演じる際、桐谷 遥としてどのようなニュアンスを大切にしようと考えていましたか?
吉岡:普段、進級後の遥を収録している私からすると、懐かしさが第一にありました。
進級前の遥の気持ちは、進級後の彼女にはないものなので、思い出さなければいけない要素がありますし、クラスが変わってから仲良くなるキャラクターもいますので、彼女たちの関係性も必然的に変わります。
ユニットを超えた越境のシーン、それこそ日常パートは「どうやって喋っていたかな?」と、一度ゲームに戻ってシナリオを確認していました。かなりの回数を繰り返したと思います。アフレコでも「今のは、あのときの遥だったかな?」「ちゃんと遥として喋れていたかな……?」とメンバーに聞きながら収録していました(笑)。
でも、彼女たちの世界の中だと当たり前の日常の一部なんですよね。ふとした瞬間に「あれ、なんだか遥っぽくないな?」というような違和感がないように念入りに準備しました。
──そんな本作のアフレコで、特に印象に残っていることについて教えてください。
吉岡:前半パートはワンダショ(ワンダーライズ×ショウタイム)、レオニ(Leo/need)、ビビバス(Vivid BAD SQUAD)のみなさんがアフレコに参加されていたので、大勢のメインキャストと一緒に収録できました。だから、隣から普段よく聞いているキャラクターの声が聞こえてくるなぁと(笑)。
──(笑)。
吉岡:また「ハローセカイ」になる前の歌を、アカペラでそれぞれ披露するシーンもそばで聞いていて、各ユニットで全然色が違うなぁと感じていました。
たとえば、男女混合ユニットはそれぞれ音の高低に声帯の幅があるので難しそうだな、逆に女の子だけだと統一感がすぐに取れるからバランスを取りやすいのかな、など近くで見て観察したりして。
それぞれのユニットが持っている良さを一番近くで見ることができて、なんだかファンのような気持ちでした(笑)。レアなシーンを見ることができて、とても楽しかったです。
──そして劇場版では、モモジャンの良さがふんだんに詰め込まれた書き下ろし曲「FUN!!」も披露されました。
吉岡:作詞・作曲を担当されたDECO*27さんのメロディーに、いよわさんの編曲が入ることで、より可愛らしさが出ていますよね。
ちょっとした透明感からの不協和音がメロディーになるようなラインがいよわさんの特徴だと思っていて。DECO*27さんのメロディーと相まって、モモジャンらしさに繋がっているのではないかなと思います。
──フルバージョンを聴いたときに改めて感じたことはありますか?
吉岡:フルバージョンは、モモジャンのパフォーマンス力が発揮されているように感じました。この前の感謝祭(プロジェクトセカイ 5th Anniversary 感謝祭)でも思ったことなのですが、コール&レスポンスが加わって、お客さんとの一体感をより大きく感じられるのが「FUN!!」の特徴なのかなと。
もちろん、ミクに対する想い、気持ちも込められていますが、この曲を聴いてくれるミクを含めた「たくさんの人に希望を届けるために」というコンセプトがメロディーからも感じられますよね。歌詞ひとつ取っても、モモジャンらしさに加えて「誰かと一緒に」という想いも伝わってきて。
たとえば現実世界のアイドルのみなさんから見ても、きっとこの「FUN!!」に感じることがいっぱいあると思うので、全アイドルに歌ってみてほしいです。色々な人に聴いてほしい一曲ですね。
──本当に優しく包んでくれるというか、背中を押してくれる素敵な曲ですよね。
吉岡:しかも彼女たちは、惜しげもなくファンサをするんですよ(笑)。そこがより良さを感じるポイントかなと思います。楽しい「FUN」と、お客さんの「FAN」が掛かっているタイトルだと思いますが、それがすべてを物語っているように感じていて。
わかりやすいアイドル曲でありながら、涙腺にもくる……。まるで玉手箱を開けたような楽しい曲です。同時期に何曲も作曲をされていたデコさん(DECO*27さん)でしたが「本当に27人いるのでは!?」と思っています(笑)。
長い付き合いだからこそ生まれる特別な感覚
──ゲームのリリースから5年を迎えた今、吉岡さんにとって「桐谷 遥」はどのような存在でしょうか。
吉岡:5年も経つと、もうだいぶ長い付き合いだなぁという感覚になりますね……。月に一度はゲームシナリオ収録があって、曲も同じくらいの頻度で録っているので、ありがたいことに『プロセカ』はキャラクターと触れ合う時間が多いんです。なので、遥と向き合う時間が必然的に多くなり、自然と「遥ってこうだよね」と表現できるようになりました。
でもその一方で、違和感を覚えることも多くなってきて……。
──違和感?
吉岡:「このとき、遥はこんな行動をするのかな?」という自問を、自分の中でできるようになってきているというか……。最近は、「この行動をしたから、遥はこう思う」という筋道を逐一考えずとも「遥だからこう」とそのままリンクしている感覚なんです。
頭の中であれこれ考えずに、神経で簡単に演じられるようになっているところが怖くもあり、楽しさもあって。これが付き合いの長さから来る感覚なのかなと。こんな経験は中々できないと思います。
──吉岡さんの中に遥が生きているといいますか。
吉岡:ただ、私は遥のようにはなれないなって(笑)。もちろん私もプロ意識は持っているつもりですが、高校生であのストイックさとプロ意識、そしてプロデューサーになるほどの視野の広さを鑑みると、遥はいつまでも私の憧れで、尊敬する存在です。
──彼女が高校生ということを忘れてしまう瞬間もあって。
吉岡:もう超えていますよね。普通の高校生はプロデューサー業なんてできませんよ(笑)。自分のお世話だけでも大変なのに、ユニット全体を見なきゃいけない……普通の重圧ではないと思います。
大人とバチバチに戦っているシーンも描かれていますが、遥たちはまだ未成年。そんな子たちが頑張っているんだと思うと、私も頑張らなきゃって思います。
──ありがとうございます。次に、公開前に小倉唯さん(花里 みのり役)、降幡愛さん(桃井 愛莉役)、本泉莉奈さん(日野森 雫役)の3人にインタビューをさせていただいたときと同じ質問を、ぜひ吉岡さんにもお答えいただけたらと思います。
吉岡:3人から何やら期待されていたことは知ってます(笑)。
──(笑)。それでは、MORE MORE JUMP!の魅力を一言で表すと……?
吉岡:色々考えましたが……天使の「天」かな。
どんなに挫折しても、暗いシナリオであっても、最終的に「モモジャンだったら大丈夫」という謎の自信があるんですよね。
最近のモモジャンはみんなの目標がブレないから、どんなに辛い状況に陥っていても「きっとモモジャンなら何とかしてくれる」「この子たちはもう揺るがない」と、安心して見ていられるんです。
ずっと明るい未来を見ているんだろうなと。きっと、ユーザーの皆さんもそうあってほしいと、そこにたどり着くみんなを見てみたいと思っているのではないかなと。
そしてモモジャンの中心であり、ユニットのきっかけをくれたのは、みのりです。そのみのりを象徴する「天使」という言葉……みんなの中心にいる、本当の意味のアイドルのような意味での「天使」という意味も含めて、天使の「天」を選びました。「天使のクローバー」という曲もありますし、ピッタリなのではないかなと思います。
「FUN!!」のミュージックビデオもそうですが、随所に天使の羽が出てくるんです。クリエイターさん側も意識されているのかな?と思うこともあるので、良い感じに収まる言葉なんじゃないかなと思います(笑)。
──「跳」「美」「愛」に加えて「天」と、素敵なワードが並びました。
吉岡:「この4文字は何を表しているでしょう?」と聞かれたら、「モモジャン!」と即答すると思います(笑)。
──最後になりますが、Blu-rayを手に取った皆さんへ、ここに注目してほしい、繰り返し見てほしいシーンを教えてください。
吉岡:全部良いんですよね……! 真っ暗な状態から始まる導入部分から、1番最後のエンドクレジットの終わりまで見てほしいです。
私自身、モモジャンのキャストみんなと渋谷の応援上映に参加したとき、映画の最初から最後まで、ファンの皆さんから制作陣や『プロセカ』への感謝の気持ちを強く感じました。それを何度も思い出させてくれるBlu-rayになっていると思います。
応援上映に行かれた方はそのときを思い出してほしいですし、Blu-rayから観る方もきっとそれを感じられるシーンだらけなので、最初から最後まで『劇場版プロセカ』を堪能してもらえたら嬉しいです。
私自身も一人のファンとして、また皆さんと一緒に、何らかの形で『プロセカ』愛を語り合える日が来たら良いなと思っています。たくさん観ていただいて、語り合いたい熱が高まったらぜひSNS等で「そろそろ『プロセカ』を語る会を……」と、たくさん呟いてください(笑)。その日が来るのを楽しみにしています!
【インタビュー・編集:西澤駿太郎 撮影:MoA 文:福室美綺】
『劇場版プロセカ』BD発売記念インタビューバックナンバー