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23年ぶりの新車・デハ800形の傍らには昭和3年製のデハ101 「頑張るぐんまの中小私鉄フェア2024」で上電の魅力を知る(群馬県前橋市)【コラム】

鉄道チャンネル

大胡駅を発車する800形電車。新車導入で長年活躍して生きた700形電車(旧京王井の頭線3000系)は順次廃車されます(筆者撮影)

10月は旧暦の「神無月」(出雲=島根県では神在月)。そしてもう一つの呼び名は〝鉄(道)在月〟かも。「鉄道の日」のフリーペーパー「テッピーニュース」には、各地で開催される約200件の鉄道イベントが掲載されます。

その一つが2024年10月20日、群馬県前橋市の上毛電気鉄道(上電)大胡電車庫で開かれた「頑張るぐんまの中小私鉄フェア2024」。群馬県が音頭を取って県内を走る上電、上信電鉄(上信)、わたらせ渓谷鐵道(わ鐵)のローカル鉄道の魅力を発信する催しで、3社持ち回りで2007年から継続されます。

上電は中央前橋~西桐生間25.4キロの上毛線を運行する鉄道会社。昭和初期生まれのクラシックなデハ101が今も現役、2024年2月には旧東京メトロ03系の800形(2両編成)が約23年ぶりの新形車両としてデビューしました。

本コラムは「新鋭800形」、「デキ3021運転台公開」、「2024年も走ったデハ101」の三題噺に続き、「上電友の会のトークショー」などで約1000人が参加したフェアをご報告します。

4両のクラシック車両

フェアを主催したのは中小私鉄等連携会議。群馬県では上電、上信、わ製のローカル私鉄3社が地域の移動を受け持ちます(わ鐵は私鉄というより第三セクター鉄道ですが)。

経営環境はいずれも厳しく、県は3社を対象に共同の技術セミナーを企画する一方、県民や鉄道ファンに鉄道をアピールするフェアを毎年秋に開催します。

上電は、クラシックな鉄道好きにはおなじみ。1928年生まれで今も現役のデハ101のほか、大胡電車庫にはデハ101とほぼ同形のデハ104、東急からやってきたEL(電気機関車)のデキ3021、元東武の鉄製有がい貨車テ241が保存されます。

新鋭800形が今年2月にやってきた

そんな上電に今年、仲間入りした800形電車。営団地下鉄時代の1988年にデビューした03系で、2020年まで日比谷線や、相互直通運転する東武スカイツリーライン、東急東横線の代表車両の一つでした(東急乗り入れは2013年まで)。

車体長18メートルで狭軌(線路幅1067ミリ)の電車は今や希少価値。東京メトロから上電のほか、熊本電気鉄道、長野電鉄、北陸鉄道に譲渡されます。

上電800形、外観はほぼメトロ時代のままですが、前面にパステルブルー、側面に緑と赤のライン。西桐生側の車両に、シングルアームのパンタグラフ2基が装備されます。車内には車いすスペースがあります。

800形の運転台は上電はじめてのワンハンドルタイプ(筆者撮影)

フェア会場でうかがった橋本隆社長のお話によると、800形は2023年度の最初の編成に続き、2024年度、2025年度に各1編成を導入する予定。鉄道ファンには「かつて都会で利用していた電車を、地方鉄道に訪ね歩く方」がいらっしゃるそうで、今後は〝上電詣〟がブームになるかもしれません。

デハ101より1歳年下のデキ3021

続いてデキ3021。デハ101の1年後の1929年製で東急の前身の一つ、東京横浜電鉄で砂利輸送の貨物列車などをけん引後、元住吉工場(当時)や長津田車両工場で入れ替え機として活躍。上電には、2009年にやってきました。

黒一色のデキ3021。東急元住吉工場の入れ替え機に転用時にヘッドライトを3灯に増備しました(筆者撮影)

旧タイプのELに多い凸形で、全長8.08メートルのミニサイズ。上電では本線は走れませんが、電車庫内は自走可能。イベントでは、機関車との綱引きで会場を沸かせました。

今回、特別に運転台を見せていただきましたが、ご覧のように機器類はいたってシンプル。運転機器は、前後それぞれに付いています。

シンプルそのもののデキ3021の運転台。いすは背もたれ部分からでなく横から倒すタイプです(筆者撮影)

貸切ツアーで大胡~西桐生を1往復したデハ101

そして、上電最大のスターがデハ101。走る電車として日本最古級。吊り掛け駆動特有のうなるモーター音は、鉄音ファンをうならせます。

本線走行は、イベントや貸し切り運転に限られ毎回超満員。今回は乗車方法を一工夫、定員30人(抽選制)の貸切ツアーの形で、大胡~西桐生間を1往復しました。

大胡駅の側線で出発を待つデハ101(筆者撮影)

将来の上電ファン増やす「乗り方教室」

熱心な上電ファンがステージ前を埋めたのが、上電友の会のトークショー。大島登志彦代表(高崎経済大学名誉教授)と新保正夫副代表(群馬県職員)に加え、2024年に50周年を迎えた県立前橋高校鉄道研究部OB会の小林直樹代表が登壇しました。

上電友の会トークショーで鉄道の未来を語る小林県立前橋高鉄研OB会代表、大島代表、新保副代表=写真左から=。友の会は、上電、北陸鉄道、長野電鉄、アルピコ交通の地方鉄道4社合同のスタンプラリーを2024年11月22日~2025年6月1日の約6ヵ月間にわたり展開します(筆者撮影)

地域振興や公共交通が専門の大島教授が着目したのが、上電沿線の高校と鉄道通学。昨今の少子化で鉄道通学生は減少傾向ですが、もう一つ鉄道旅客数に大きく影響するのが学校の統廃合です。

大島教授によると、大胡駅に近い県立前橋東商業高校は2007年、県立前橋商業高校に統合されましたが、統合後は大胡駅の乗車人員が以前の約3分の2に減ったそうです。

少子化による通学生減少は鉄道会社の力では解決できませんが、上電が将来の利用客を増やそうと、毎年沿線小学校20校程度で開催するのが「電車の乗り方教室」。

今の子どもはどこに行くにも親のクルマで、上電に乗ったことない児童が一定数います。そこで学校の社会見学を兼ねて、きっぷの買い方や電車の乗り方を授業。「高校生になったら電車で通学。大人になっても鉄道をお忘れなく」と呼びかけます。

「♪あ・あ・あ 秋葉原です」

フェアに戻って、上州名物「八木節」に続いてステージに登場したのはおなじみ鉄道音楽ユニット「SUPER BELL”Z(スーパーベルズ)」。「♪あ・あ・あ 秋葉原です」で始まる「MOTER MAN(秋葉原〜南浦和)」でのメジャーデビューから、2024年12月で25周年を迎えます。

トークもナイスなスーパーベルズの堂込さん、野月さん、山本さん=写真左から=(筆者撮影)

車掌DJの野月貴弘さんの両脇を、堂込聖美さん、山本紗由美さんの女性メンバーが固め、上電バージョンには「城東(上電の駅名)だって、上等じゃねーか」のキメぜりふも登場します。

会場では、高崎市に本社を置く日本中央交通の自動運転バスや、ご当地キャラ大集合、東武博物館、上信、わ鐵、アルピコ交通の物販も人気。電車庫の熱気からは、現代に生きるローカル鉄道のパワーを感じました。

記事:上里夏生

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