簡単に磯で見つかる<カゴカキダイ> 飼育初心者におすすめの理由とは?
カゴカキダイは、黄色い体に5〜6本の黒い縦線と、体高が高いことが特徴の魚。見た目はチョウチョウウオの仲間に似ていますが、違う仲間に属する魚です。
身近な環境で観察することができ、マリンアクアリウム初心者にもおすすめできます。
温・熱帯域に生息するカゴカキダイ
カゴカキダイは、日本では青森県から九州南岸までの沿岸部に生息している、温・熱帯域に生息する魚です。
水深のやや深い岩礁域に生息し、初夏から秋にかけては、小さい個体をタイドプールや磯で頻繁に見かけることもあります。そのような場所では、比較的簡単に採集することができるのです。
磯をよく訪れる人やダイビングをする人には定番の魚でありながら、水族館巡りが好きな人でも一度は見たことがある、とてもメジャーな魚でもあります。
また黄色が綺麗で、丈夫かつエサもよく食べるので観賞魚にも向いています。
さらには食べても美味しく、さまざまな角度で私達を楽しませてくれる──。ここまで高スペックの魚はなかなかいません。
カゴカキダイを採集してみよう
カゴカキダイの稚魚は1~3月に磯で見ることができます。ただ、この頃のカゴカキダイは1~2センチほどなので飼育には向きません。飼育しやすいサイズは、4~7月頃に磯で見られる3~7センチほどの幼魚です。
網を持ってタイドプールを探すと、簡単に採集できます。全身を濡らさずとも、上から目視で見つけることが可能です。浅い溜まり場を探してみると、採集しやすいですよ。
また潜水採集では、浅いところで数匹で群れているのを観察可能。ただ動きが素早いので捕まえる為には少しコツが必要です。
特に10センチ程の個体は「簡単につかまるものか」と言わんばかりに尾びれを力強く動かし、ものすごいスピードで遠くに消えていきます。
魚の中には一旦逃げても同じ場所に戻ってくることがありますが、この魚は逃げたまま同じ場所に戻ってくることは少ないです。
夜になると漁港の岸壁に添いながらユラユラと寝ていることもあるので、漁港に来た時は岸壁を観察してみるのもいいかもしれません。
飼育がしやすく初心者にもおすすめ
飼育下での特徴といえば、簡単に餌付くこと、丈夫なこと、喧嘩しないことの3点が挙げられます。
筆者が過去に飼育したカゴカキダイで、人工餌料(ペレット)を食べない個体はいませんでした。採集してきたその日から人工餌料(ペレット)を食べ始めるほど餌付けが簡単です。
また丈夫なことも特徴のひとつ。水槽立ち上げ時や、水質が安定しない時や病気が蔓延してしまった時、原因不明で魚が死んでしまう時など、さまざまな状況でも体調を崩すことなく、ピンピンしていることが多いです。
マリンアクアリウムを始めたばかりの初心者にも飼いやすく、水槽を立ち上げた直後など試験的に水質を確認する際に導入するテストフィッシュとしてもおすすめです。
全長が20センチ近くになると性格はキツくなりますが、飼育に適した10センチ以下の個体は穏やかな性格で多種をいじめることもありません。
注意することとしては、餌をよく食べるので成長が早く、あっという間に大きくなります。よって、水槽サイズは60センチ以上の大きなサイズで飼うことをお勧めします。
余談ですが、1年単位で飼育しても褪せることがない体色も、実は評価が高いです。
魅力の多いサカナ
カゴカキダイは自家採集するアクアリストにとっては、一度は飼育したことがある魚かもしれません。そうした人たちからすると珍しくはない魚かもしれませんが、実は魅力がたくさん詰まった魚です。
今はその魅力に気が付かずとも、長年マリンアクアリウムをやっているうちにカゴカキダイの優秀さに気づく日がくるかもしれません。
もちろん水族館でも頻繁に出会えますので、探してみてください。チョウチョウウオのような派手さはありませんが、特徴を踏まえて観察すると興味深いかもしれません。
(サカナトライター:たつ)
参考文献
中坊徹次・ 松沢陽士(2018)、小学館の図鑑Z 日本魚類館 、小学館、P319
吉野雄輔・瀬能宏(2018)、山渓ハンディ図鑑13 日本の海水魚、山と溪谷社、P300