続くクマ被害~クマ対策の最新情報
連日報じられるクマによる被害。そこで、今日はその対策に関する最新の状況についてのお話です。
農作物ではなく、人を守る電気柵をしたい!
まずは、非常に多くの場所で対策として使われている電気柵について。電気柵を日本で最初に作った会社で、長らく電気柵を取り扱っている、北海道の会社。未来のアグリ株式会社開発担当の石澤裕さんにお話を伺いました。
未来のアグリ株式会社開発担当の石澤裕さん
「クマはここ数年、被害はどんどん増えてる状況なんですけれども、ここにきて、畑みたいな中間的な領域じゃなくて、もう完全な人の領域に入って来ちゃうってことが増えてますよね。なので、今まで農作物を守ってたんですけれども、そうじゃなくて、人を守るための柵をしたいというお話が、それはもう顕著に今年は増えましたね。
電気柵で畑を守るっていうのは、間違いなく非常に有効なんですよ。しっかり張っていただければほぼ守れる。で、畑で充分な効果が得られてるレベルよりも、もう少し、例えば3段張りで畑はオッケーだったけれども、上にプラス20センチのところにさらに張って4段張りにすることで、安心感は全然変わってくるので、人向けの時には、高さだけじゃなくて、あとは機械の能力とかパワー、出力とかもそうですけども、ちょっと贅沢めっていうか、ワンランク上のレベルで柵を張りましょうっていうようなことをご説明させていただいてるんですよね。」
農作物じゃなくて人を守るための柵。学校や病院、工事現場などから人を守るための柵を設置したいという声が増えています。
石澤さんによると、電気柵はクマには特に効果があるそうなんです。というのも、電気柵は、動物が線に触れることで電気の回路を作り感電させるもの。シカやイノシシは足が蹄ですが、クマは足に大きな肉球があり、肉球は湿り気が多いので電気を流しやすい。つまり、よりビリビリっと来やすいのだそう。
そこで、クマに効果の高い、今の畑の柵をワンランク上の柵に変える対策を提案しているんです。
この張り方でクマ対策になってる?リモート診断します!
この電気柵が多くの場所で使われているのは、農家が設置するなら国がその費用を出すという交付金で広まったもの。しかし、その交付金がちゃんと使われているか、国が調べたところ、管理されていない!だめじゃないか!と指摘があったのです。再び石澤さんのお話。
未来のアグリ株式会社開発担当の石澤裕さん
「その現状をもう少し把握しなきゃいかんということで、あちこち見て回ったんですよね。そしたら、想像以上に、電気柵は張ってあるだけど、いや、これじゃ入られちゃいますよ、っていう電気柵がすごく多くて。
そうなんですよ、特に電気柵の場合は張り方ひとつで効果は大きく変わってきますので。シカの柵を張って、これでクマも防げるって思ってらっしゃる方もいるようですし、明らかにクマが多いところで、これはシカ用だよねっていうような電気柵しかしてなかったりというのは、よく見ますね。
で、最近うちの社内でもクマ対策に特化したチームを作りまして、リモート診断っていうのを始めて、写真を送ってくれたら、どこが悪いか指摘しますよっていう無料サービスで始めて、この電気柵でクマ用でいいかね、みたいな感じのご相談ですね。なるべく写真を多めに送っていただいて、写真で分かる範囲でアドバイスをさせていただくっていうことを始めました。」
実際に見て回って、せっかくの電気柵がきちんと設置できてないところが多い、と実感。そこで、改めて電気柵設置のマニュアルをメーカーたちで作る日本電気さく協議会で、今、作成しています。
また、石澤さんたちはクマ対策のリモート診断を始め、効果をしっかり得られる電気柵の張り方をしてもらえるよう頑張っています。
オオカミ型野生動物撃退装置 モンスターウルフ!
そして、もう一つ、クマ対策で引き合いが大きくなっているのが、モンスターウルフという装置。これはどんなものなのか。開発した、株式会社太田精器の太田裕治さんのお話。
株式会社太田精器 太田裕治さん
「この装置は、オオカミ型野生動物撃退装置ということで、オオカミの形をし、LEDの点滅および50種類の威嚇音が搭載されている、クマ・シカ・イノシシなどを追い払う、近づけないようにするという装置です。
約20~30メートルの間に赤外線センサーがありまして、感知したら自動的に動いて大音量で威嚇するというものになりますね。目も光りますし、90デシベルという車のクラクション並みの音が出ます。
動物学者の先生から、嫌がる音を入れなさいということで、犬、オオカミの声、銃声、人間も天敵なので人間の声も入れて50種類、覚えられないようにというか、慣れさせないようにも工夫しております。やはり単調な音を何度も何度も聞けば、頭のいい動物たちですので、だいたい覚えてしまうので、何度も変わって、あそこにはちょっと得体のしれないモノがいるっていう風に、本能的に危険を回避するような感じになるのかな、と思っております。」
オオカミ型野生動物撃退装置、見た目はこんな感じです。
<こちらがモンスターウルフ。迫力あります。 写真提供はすべて、株式会社 太田精器>
侵入者を赤外線センサーが感知すると、目を光らせて首を振り、大音量で威嚇します。
<目が赤く光り、台座のLEDも光ります>
モンスターウルフミニ ウルフムーバー開発中!
現状のクマ被害を受けて、引き合いが多いそうなのですが、再び太田さんのお話です。
株式会社太田精器 太田裕治さん
「まあホントに作った当時は、もうハッキリ言うとバカじゃないの?とか、こんな子供だましとか、ただのオオカミの案山子とか、もう9割が批判ですね。揶揄されてホントに鼻で笑われ、恥ずかしくて設置も出来ないって言う方もいらっしゃった頃がありましたね。
今は、全国で約330台ほど稼働してますけど、全く効かなかったというクレーム等々は無くですね、現在も、非常に引き合いも多いような状態になってます。
今、最新なんですけど、モンスターウルフは、比較的クマが一番効果あるんじゃないかなって認識がありますもんで、熊鈴に代わって、要は持ち歩きができるようにと、モンスターウルフミニというのを開発しまして、同時に動き回るモンスターウルフを、大手企業と開発も進めて、動いて追い払うという、将来的には究極な対策のものになるのかなと考えて、今開発中です。」
携帯用のモンスターウルフミニは防犯ブザーのっような感じで、バックに入れて持ち歩けるもの。威嚇音はモンスターウルフと同じ50種類の音と同じ音量が出るものになっています。
一方の、自走するモンスターウルフ、ウルフムーバーも開発中!追尾して追い払うこともできるようになる、ということで究極の対策になるのでは、と太田さんも期待しています。
<自走して追尾するウルフムーバー もはや本物のオオカミのようです!>
山里に住む人の数も減ってしまっているので、人里と山里の境目でこれ以上は行くと危険だとクマに教えるべく、モンスターウルフを配置して守れれば、ということでした。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)