【福岡の大好きな店】ワインとビストロ料理がよく似合う「都会の馴染みの店」
福岡市内の食べることが大好きな方々に、ご自身が愛してやまない店について書いていただく「私、この店、大好きなんです」シリーズ。今回はアポロデザイン代表の植村康子さんがワインダイニング「AIDA」について書いてくださいました。
「都会のコミュニティの大きな一片は、飲食店で成り立っている」と、密かな仮説を立てている。その要因は、「AIDA」という店の存在が大きい。移転前からもう十数年通わせてもらっているが、カウンターを囲む席には今日も変わらないいつもの顔ぶれが並ぶ。なかには週に2、3日通っているらしい超常連の顔もある。もちろん、コミュニティのハブになる店は世に多数あるだろうが、美味しいワインが味わえて、それにあう絶品のビストロメニューがつまめる店は、そうそうないだろう。
定番から旬の食材まで並ぶ黒板メニューを、一人で捌くのが女店主「なおちゃん」のちょっと筋肉質なほそ腕だ。「なおちゃん、空いてる?」とふらり入ってくる客も、「なおちゃん、ビスマルク食べたい」と言うオーダーも「はーい」と軽い返事と共にさらりとこなす。
“なおちゃん劇場”のような厨房と客席は、近いようでいて、決して密すぎない程よい距離間が保たれている。その店主と客の関係が伝播しているのか、客同士の間にもほどよい大人の距離がある。お一人様も、シニアのご夫婦も、体に不自由がある方も、干渉しすぎず自由に、飲んで、食べて、楽しんで「じゃあまた」と隣りにひと声かけてマイペースに帰っていく。インテリアショップと見間違いそうな店主の趣味の良さが伝わる家具の設えも、帰ってきたくなる居心地の良さに拍車をかけているようだ。
ただ、正直都会には誘惑も多い。そこここに、美味しい味でもてなす店がある。そんな誘惑を振り切って、今日も自然と「AIDA」に足を向けてしまうのは、なおちゃんがつくる美味しい料理と至福の一杯をあの心地よい空間で味わうのが、今日のご褒美であり、明日の糧となるからだ。
アクセスの利便性とか、職住近接とか、都心部に住み続ける理由はいろいろあるが、「馴染みの店がある」というのもそのひとつにしてもいいかもしれない。
AIDA(アイダ)
福岡市中央区警固2-13-7ランドマークタワー1 1F
092-731-0222
植村康子
アポロデザイン代表。食道楽。趣味は、アイドルの成長を見守ること。愛犬家のつもりが、今は愛猫2匹の可愛さの奴隷に。今期の目標は会社の賄いご飯を充実させること。