細長いサンゴに擬態する小さな<ビシャモンエビ> 肉眼で見つけるのは至難の業?
ムチカラマツというサンゴの仲間を知っていますか?
細長いのが特徴で、一般的に想像されるサンゴとは似ても似つかない形状をしています。
サンゴは生き物の隠れ家に利用されることが多いですが、この不思議なサンゴもある生きものに隠れ家として利用されています。
サンゴの陰に身をひそめる……というよりは、サンゴに擬態している小さな生き物<ビシャモンエビ>についてご紹介していきます。
ビシャモンエビの生息地と観察時期
ビシャモンエビは、ムチカラマツという少し変わったサンゴを住み家としています。
ムチカラマツは、長さ約3メートルにもなる細長いサンゴ。硬い骨格を持たず、小さな触手が隙間なく生えているのが特徴で、本州中部以南では広い範囲で観察することができます。
ビシャモンエビの体長はとても小さく、肉眼で見つけるのは至難の業。ムチカラマツに生息していることはわかっていても、簡単に見つけることはできません。
ムチカラマツを見つけたら、マクロカメラなどを活用してその表面をじっくり観察してみてください。
観察できる時期は春から夏と言われていますが、筆者は10月や11月にも観察できたので、地域によってバラつきがあるのかもしれません。
模様の色はさまざまですが、黄色や白色などその個体が生息するムチカラマツに依存しているようで、胴体は青っぽく見える個体もいるそうです。
ビシャモンエビとムチカラマツは共生関係にある?
このムチカラマツとビシャモンエビは共生関係にあると言われることもあります。
しかし、ムチカラマツはビシャモンエビに隠れ家を提供する一方、ビシャモンエビはムチカラマツに利益を提供しているかはいまだ不明。現段階では、片方が利益を与え、片方には利害が発生しない片利共生の関係であるといえるでしょう。
ムチカラマツには他のエビもすんでいる
ムチカラマツに生息するビシャモンエビですが、実はムチカラマツには他にも小さなエビがすんいることがあります。
それが、ムチカラマツエビやキミシグレカクレエビ。主に背部の突起数で区別をするようです。
ビシャモンエビには、頭にひとつとその下にひとつ、また胴体と頭部の間に丸みを帯びた突起がひとつ、胴体にひとつと計4つの突起があります。
しかし、筆者が見かけた灰色のムチカラマツに生息していたエビは、よく見ても突起がふたつしかありません。何しろ小さいので完璧に見分けることは困難ですが、これはキミシグレカクレエビの特徴です。
ムチカラマツを見かけたらぜひ探してみて!
奇妙な形をした不思議なサンゴであるムチカラマツと、そこにすむ小さなビシャモンエビ。この光景を眺めると、海の生命の多様さやその美しさなど、様々な感情が沸き起こります。
そして何より、触手の中にそっと佇むビシャモンエビを見つけた時の感動はひとしお。皆さんもぜひ、ダイビング中にムチカラマツを見つけたら小さなエビたちのことも探してみてください。
(サカナトライター:ポンた)