職場での熱中症対策を罰則付きで義務化、6月に施行 初期症状の放置・対応の遅れが致命傷に
厚生労働省は3月12日、労働政策審議会の分科会を開催し、熱中症対策を罰則付きで事業者に義務付ける方針を決めた。症状が出た労働者の早期に発見し、躊躇(ちゅうちょ)のない医療機関への搬送など適切な対処を促す。今後、労働安全衛生規則を改正し、6月からの施行開始を目指す。
31度以上(WBGT28度以上)の環境下で「連続1時間以上は1日4時間以上の作業」が対象
今回示された案では、「見つける→判断する→対処する」を熱中症対策の基本とし、現場の実態に即した対応を求める。
義務化の対象は、熱中症を予防することを目的とした暑さ指数(WBGT)が28度以上、または気温31度以上の環境下で、「連続1時間以上は1日4時間以上」の作業を実施するケース。WBGTは28度を超えると急激に救急搬送者数も増えるため、これを一つの線引きとした。
事業者は今後、具体的な現場対応として、以下の対応が義務付けられる。
・熱中症の恐れがある労働者の早期発見に備え、緊急連絡先や担当者などへの報告をするための社内体制を整備すること
・作業離脱・身体冷却・医療機関への搬送など熱中症による重篤化防止のために必要な措置の実施手順を事前に作成すること
・これらの対策について、関係する労働者に周知すること
報告体制の整備・実施手順の作成・関係労働者への周知に関する対策を怠った事業者は、6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性がある。
熱中症による死亡事故は屋外だけでなく、通勤中にも起きる
同省の調査によると、職場での熱中症の死亡者は2022年(令和4年)、2023年(令和5年)と、いずれも30人を超えた。2024年(令和6年)はそれを上回るペースで、深刻さを増している。死亡者の約7割は屋外作業によるもので、そのほとんどが「初期症状の放置・対応の遅れ」が原因だという。
また、第一三共ヘルスケア(東京都中央区)が2024年に発表した調査では、対象者632人のうち152人が通勤時に熱中症になった(またはなりそうになった)ことがあると回答。中には「身動きが取れないほどだった」と、熱中症の一歩手前となるリスクがある症状をだった人もいることが判明した。
調査で解説を務めた国立環境研究所の岡和孝氏は、近年気温が上昇する中、通勤時の短時間の外出で熱中症となるリスクが高まっていると指摘。「かくれ熱中症」は本人も気付かないうちになる可能性があるため、注意が必要だと呼び掛けている。
発表の詳細は同省ウェブサイトで確認できる。