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衛星通信を「借りて」サービス提供、帯域絞り低価格を実現 Skylo Technologies

TECHBLITZ

Skylo Technologies(本社:米国カリフォルニア州)は人工衛星を活用し、地球規模のIoT用ネットワークのためのソリューションを提供している。狭い通信帯域規格を利用することで衛星通信の格安利用を実現した。出資者でもあるソフトバンクとは非地上系ネットワークソリューションの協業に合意している。共同創業者でCPO(最高製品責任者)のTarun Gupta氏に、ビジネスの概要やプロダクトの優位性、将来展望を聞いた。

Tarun GuptaSkylo TechnologiesCo-Founder & CPOヴァージニア大学で電気工学の学士号を、スタンフォード大学経営大学院で経営学の修士号を取得。通信ネットワークのエンジニアリングと開発において20年以上の経験を持つ。Google在籍時には、ギガビットファイバーの全米数千世帯への導入に貢献。2020年にCEOのParthsarathi Trivedi氏とともにSkylo Technologiesを創業。

他企業の衛星通信の帯域を借りてサービス提供

 Tarun Gupta氏は1990年代から電気通信業界に長く携わり、通信技術の発達と共にキャリアを重ねてきた。光ファイバーや携帯電話などのネットワーク設備の導入初期には、一般的に高所得者層向けのサービスが優先され、低所得者層向けの整備は後回しとなる傾向があると言い、Gupta氏が目指すのは「全ての人々に平等に接続を提供する方法」。この30年間の電気通信業界の歴史は、全ての人々が「接続性」を享受できるよう、通信の平等性を実現してきた道のりだという。

 Skyloはこの考えのもと、衛星通信を誰もが使えるように取り組んでいるネットワークサービス・プロバイダーだ。通信網の構築のために新しい人工衛星を打ち上げるスペースXなどとは異なり、Skyloは自社で人工衛星を保有せずに、他企業の衛星通信の帯域を借りてサービスを提供する点が特徴。関連特許を85件以上保有し、そうした技術基盤がビジネスの優位性につながっているという。

 同社のルーツはスタンフォード大学の宇宙システム開発研究所で、静止軌道衛星を介した画期的なNB-IoT(NarrowBand Internet of Things)技術と、通信受信用の機器によって、荒野や僻地でも繋がるユビキタスなIoT用ネットワークを提供している。既存の静止軌道衛星の狭い通信帯域を利用するため、新たな人工衛星の開発や打ち上げ、アンテナ設備の投資といったコストが不要となり、安価に提供できる。電波を受信するIoT機器についても半導体のコストが下がったことで、低コストでバッテリー寿命の長いIotセンサーを活用できるようになった。

 これにより、海洋を航行する船舶や山間部で作業する鉱業機器、荒野を走るトラック、広大な農地での作業するトラクターなど、一般的な携帯電話の電波が届かない場所からも通信が可能だ。Gupta氏は「私たちはソフトバンクと提携していて、ソフトバンクの地上波と私たちの衛星通信を接続できます。例えば、海に出たときにどこにいても通信が途絶えないような接続性を提供しているのです」と話す。

Motorolaと共創した端末が高山病の登山者救う

 Skyloの顧客は大きく2種類に分けられる。1つはソフトバンクのようなモバイル通信事業者だ。Gupta氏は「私たちの目標は、人々の行動を変えることなくサービスを提供することです。ハードウェアやデバイス、料金プランやプロバイダー、支払い方法などの変更がないという意味です。そのために、ソフトバンクのような大手企業を通じて、世界中の何百万というエンドユーザーにわずかな手数料でサービスを提供しているのです」と説明した。

 もう1つの顧客は、IoT機器に接続性をバンドルしたいOEMハードウェアメーカーだ。Motorolaとのパートナーシップを通じてリリースされた「Motorola Defy Satellite Link」は、世界最大級のモバイル展示会「MWC 2023」において賞を受賞している。これは、緊急時に衛星を通じたSOSを送信するための専用端末を購入せずに、既存の携帯電話にその機能を持たせることができるデバイスだ。SOSを送るだけでなく、通常のメッセージ送信も可能だ。

 「私たちはこの製品で実際に命を救いました。この端末を持ってハイキングに出かけたある人が高山病にかかってしまった際、救助のための連絡手段を提供したのです。考えてみれば、これはとてもすばらしい進歩です。これまでこのような接続性が欲しいと何度思ったことでしょう」

 データ分析プラットフォーム「Skylo Data Platform」は、計測する機器の位置や稼働状況のモニタリング、船舶やトラックの速度や燃料消費などをサポートする。

 「ロジスティクスに関しては、以前は船を追跡するのが一般的でした。今ではコンテナの追跡、パレットの追跡、さらには個別の荷物の追跡へと移行しています。私たちは、このようなサプライチェーン全体を通じて、これら全てを支援することができます。硬貨くらいの大きさのデバイスを使うことで、ロジスティクスだけでなく、家畜やペットなどの追跡も可能になっています」

 このほか、鉄道に利用する場合、異常な振動を即座に把握し、予知保全のアラートを発することもできる。さらに、人が近寄り難い危険地域の災害状況の監視という活用法も考えられる。

image: Skylo TechnologiesHP

世界最大の非地上系ネットワーク事業者を目指す

 Skyloは、チップセットベンダー、モジュールメーカー、衛星通信パートナー、課金システム提供者など30以上のパートナーとともに非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network、以下NTN)のエコシステムを広げている。世界中で膨大な数のIoT機器が製造されており、その市場の広がりが大きな成長ドライバーとなっているのだ。今後はメンバーを増員し、サービス提供地域を広げ、さらにエコシステムを拡大していく計画だ。

 日本市場への展開についてGupta氏は「日本には1万4000以上の島があります。漁業の方々や旅行者に接続性が必要です。特に、毎日命をかけている漁師の皆さんを危険にさらすことがあってはなりません。今利用している携帯電話のソフトウェアをアップデートすることで衛星に接続できるようになります。私たちはモバイル通信事業者と協力して、全ての業界がより良いサービスを利用できるようにしたいと思っています」と語った。

 Skyloが目指すのは、IoTと衛星通信の両方を組み合わせた、シームレスな体験の提供だ。そのために地域を限定した活動から脱却し、グローバルな事業者としての存在感を強化している。目指すのは世界最大のNTN事業者になることだ。Gupta氏は、そのビジョンに向かう課題と、将来のユーザーに対するメッセージとして次のようにコメントした。

「最大の課題は、多くの人々がこの技術の存在を知らないことです。安価な通信衛星との接続は未来のことでなく、企業も個人も、すぐに使用可能です。私たちの目的は、モバイル通信やWi-Fiの代替となるものを提供するのではなく、お客様にさらに多様な選択肢を提供することです。実際、多くのお客様からは、特定の場所での接続の不足を最大の課題として挙げています。そのため、私たちはその問題に取り組み、未対応の地域もカバーし、お客様に完璧なソリューションを提供していきます」

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