「弱者男性=ミソジニスト(女性蔑視者)」ではない! 社会にはびこる偏見とリアルの狭間にあるギャップ
「弱者男性」という言葉を知っていますか? いまや日本人の8人に1人が該当するというこの言葉は、インターネットの世界から生まれた「独身・貧困・障害」などの「弱者になる要素」を備えた男性のことを指します。 弱者男性は偏見にさらされることが多いうえに、弱者男性から抜け出すことも困難と言われています。弱者男性を取り巻く環境の「リアル」とはどのようなものなのか? ライター・経営者のトイアンナ氏の著作『弱者男性1500万人時代』から、その実態を見ていきましょう。
※本記事はトイアンナ著の書籍『弱者男性1500万人時代』(扶桑社)から一部抜粋・編集しました。
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)
弱者男性とミソジニー
ここからは弱者男性とミソジニーについて考えていく。
ミソジニー(misogyny)とは、女性に対する嫌悪や蔑視を意味する言葉である。男女平等を目指す意見に反対して女性は男性より劣っていると考え、ときには女性を罰したいとすら願う。また、ミソジニーの考えは男性だけでなく、同性である女性が持つこともある。ネットでは、ミソジニーにハマる男性は弱者男性である、という意見が散見されるが、それは事実ではない。
弱者男性=ミソジニストであるという誤解
ミソジニーの考えを持つ人は、ミソジニストと呼ばれる。ミソジニストの男性がよく使う言葉に「女をあてがえ論」があることをご存じだろうか。従来、日本はお見合いなどで半ば強制的に結婚させられる皆婚社会であり、男性が女性と結婚できるのは当たり前のことだった。だが今は、恋愛至上主義であるがためにごく一部の男性へ女性が集中してしまい、普通以下の男性は見向きもされないのが実情だ。
2017年、「第15回出生動向基本調査」で18〜34歳の未婚男女に「恋人として交際している異性がいる」かを聞いたところ「いる」と答えた男性は19.7%だったが、なんと女性は27.3%もいた。昨今、恋愛で年上男性と年下女性のペアは減っているので、年の差カップルによるギャップではない。差となった女性の7.6%はおそらく、浮気をされているが気づいていないだけである。少なくとも男性の3人に1人は浮気をしている計算になり、この比率は既婚者における不倫の統計とも合致する。つまり、浮気をしてもバレなければいいか、あるいはバレてもどうせ別れないだろう......と思っている男性が、これだけいる。広義のミソジニーで考えると、弱者男性よりずっと多い。
このいびつな恋愛至上主義を是正して、男女のペアがもっと増えるように制度設計すべきだ、という議論が「女をあてがえ論」だ。すなわち、昭和の「いい年したら男女ともに親や会社がセッティングして何とか結婚させていた」皆婚主義の復活である。
ただ、他者によって強制的に、そしてランダムに結婚相手をあてがうこと自体、女性だけでなく、今の男性にとっても喜ばしいことではないはずだ。別に、弱者男性が高望みだと言いたいわけではない。むしろ、弱者男性の当事者からヒアリングすると、弱者女性と比べて驚くほど相手の年収や外見、年齢や障害の有無にも寛容である傾向がある。だが、寛容であるからこそ「社会からのプレッシャーで無理やり結婚させる風潮って......」と、考えやすいのだ。であるにもかかわらず、この「女をあてがえ」と主張している言説は、いわゆる弱者男性による発言とみなされやすい。
ところが、実際には「非モテ、弱者男性が女をあてがえ論に走る」という考えは、偏見なのである。ネットで弱者男性を支援しているアカウントは、実は経済的に裕福な人も散見される。実際に弱者男性は、女をあてがってほしいのだろうか? 声高にあてがえ論を発言しているのは、弱者男性当人ではない。強者男性が勝手に、弱者男性は女をあてがえさえすれば満足するんだと考え、勝手に支援策を考えてはいないだろうか。