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インドシナ半島を貫く魅惑の怪魚天国<メコン川> 水生生物でたどる大河紀行

サカナト

メコン川(提供:PhotoAC)

メコン川は、チベット高原からインドシナ半島を流下し、6か国にまたがる大河。

悠久の歴史のなかで幾多の民族を育んだ、東南アジアの母なる川です。生息する生物の多様さでも知られ、想像を絶する怪魚や珍妙な生物が生息する魅惑の世界が広がります。

河口から水源まで、水生生物を訪ねながらメコン川の旅をはじめましょう。

ベトナムにあるメコン川河口

メコン川の河口は、ベトナム南部のメコンデルタ。網の目のように走る水路に水上マーケットや水上住宅が点在し、人々の生活についても、メコン川との深いかかわりが実感できます。

そして、さっそく珍しい生き物が現れます。

神話にも登場する<イラワジイルカ(カワゴンドウ)>

川に住むイルカ、イラワジイルカ(カワゴンドウ)。体長は2.5メートル前後で、シロイルカのようなフォルムですが、実はシャチに近い動物です。残念ながら現在ではほとんど見られなくなっているようです。

カンボジアに伝わる神話にも、イラワジイルカが登場します。

とある少女が両親に、ニシキヘビに化けた神様との結婚を強要されたものの、その結婚から逃げて川に身を投げ、美しいイルカになったというもの。

水生生物が出てくる神話は、人々との深い関わりを示してくれます。

大型淡水魚<ジャイアントグラミー>

ジャイアントグラミーは全長70センチ前後に達する大型淡水魚。アンテナのような細長い腹びれが特徴で、どことなく妖精のように見えなくもないような……?

現地では象耳魚(カー・タイ・トゥオン、エレファントイヤーフィッシュ)と呼ばれ、素揚げなどでよく食べられる食材です。

下流から中流はカンボジアからタイへ

カンボジア、ラオス、タイにかけての下流・中流域には、水田ののどかな風景が広がります。メコンは大河らしく悠々と流れ、川の流域がなんと10キロを超える場所も。

そして巨大なのは川だけではなく、水中には脅威の巨大魚たちが生息しているのです。

1年間絶食してもOK?<メコンオオナマズ>

メコンオオナマズ(提供:PhotoAC)

体長3メートル、体重300キロに達する、メコンオオナマズ。迫力のある見た目に反し、大人には歯がなく草食です。

1年間絶食しても生きられることがわかっている魚です。

コイの仲間<パーカーホ>

パーカーホ(提供:PhotoAC)

巨大なのはナマズだけではありません。コイの仲間であるパーカーホも、全長3メートル、体重300キロに達する巨大魚です。

肉はごちそうとされ、カンボジアでは国魚に指定されています。

世界最大の淡水魚<プラークラベーン>

圧巻は世界最大の淡水魚、プラークラベーン全長5メートル、体重600キロに達するアカエイの仲間で、尻尾には毒針があります。

こんな巨大生物が川から現れたらびっくりですね!

上流・中国雲南省では川幅も狭まる

ラオス北部からは山岳地帯に入ってきます。ミャンマーとの国境を経て中国雲南省あたりの上流域になると、川幅も狭まって、急流の観を増していきます。

中国に入ると、メコンは瀾滄江(らんそうこう)と呼ばれます。

急流の岩に張り付く<アルジイーター>

アルジイーター(提供:PhotoAC)

アルジイーターは、吸盤状の口で急流の岩に張り付くコイの仲間です。

さまざまな体色があり、なかには美しい黄金のものもいます。日本でも、水槽のコケを食べてくれる魚として人気です。

エイのような見た目だけどコイの仲間<ヒルストリームローチ>

ヒルストリームローチはエイのような姿ですが、これもコイの仲間で、やはり吸盤のような口で岩に吸い付きます。

特にドジョウに近い魚で、吸い付きドジョウという身も蓋もない呼び名も……。ほかにタニノボリという呼び名もあり、こちらはなんとなく風流ですね!

水源はチベット高原に!標高は4000メートル

チベット高原に入ると、いよいよ水源に近くなります。標高は4000メートルを超え、川の周囲には氷河をいただく山の姿も見られます。

頭が大きくて甲羅に入らない<オオアタマガメ>

オオアタマガメ(提供:PhotoAC)

上流からこの辺りにかけて、オオアタマガメという変わったカメがいます。甲長20センチ前後で、名前のとおり、頭が大きくて甲羅に入りません。

尻尾も長く、なんと木に登って巻き付けることができます。

カメの概念逸脱もはなはだしいような気もしてきます。

懐の深さも大河スケール

水生生物でたどるメコン川を遡る旅、いかがでしたか?

世界に名だたる大河だけあって、生物のスケールも個性も強烈ですね。

ただ、今回紹介した生物たちは、いずれも急速に数を減らしています。日本にすむ私たちとは遠く離れた生きものたちかもしれませんが、世界の環境は密につながっています。

普段見ることのない野生生物を知ることも、環境を守る大切な一歩だと考えます。この先も彼らの姿が見られるように。

(サカナトライター:浅川 千)

参考文献

IRRAWADDY DLPHINS-WWF

Irrawaddy Dolphins Get Help from an Ancient Cambodian Folktale-Atlas Obscura

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