「満足いくゲームは1試合もない」「必ず殻を破れる」キングス躍進の鍵を握る崎濱秀斗…“苦悩と成長”を糧に覚醒できるか
Bリーグ1部(B1)のレギュラーシーズンが5日に再開し、西地区4位(12勝6敗)の琉球ゴールデンキングスはバイウィーク(中断期間)明けとなる6、7の両日、アウェーで同5位(11勝7敗)の広島ドラゴンフライズと2連戦を戦う。さらに10日には同2位(14勝2敗)の名古屋ダイヤモンドドルフィンズを沖縄サントリーアリーナに迎え、上位を争う相手と重要な試合が続く。 全60試合のレギュラーシーズンにおける中盤戦に向かう上で、キングス躍進の鍵を握る一人がポイントガード(PG)の崎濱秀斗だ。 同じPGの小針幸也と平良彰吾が負傷やコンディション不良で欠場することもあった中、序盤戦はベンチから16試合に出場した。ただ、果敢なペイントアタックなど持ち味を発揮する場面こそあったが、平均出場時間は8分31秒。平均スタッツは1.7点、0.6アシストと、手放しで評価できる内容とは言い難い。 桶谷大HCは「だいぶ成長してきた」と一定の評価を口にしたが、当の本人は「Bリーグに入ってから満足できるゲームは1試合もない」と自戒を込める。 崎濱がより計算できる選手となり、PG陣に厚みが増せば、セカンドユニットの力をさらに押し上げることは間違いない。苦悩と成長が交錯した序盤戦を経て、今後の覚醒につなげられるか。11月下旬にあったメディア対応で、20歳のルーキーが自己評価と展望を赤裸々に語った。
ディフェンスで好感触も…オフェンスは「やり切れない」
「一人ひとりが成長できた序盤戦でしたし、自分も徐々にプレータイムを増やすことができました。ただ、まだ結果を残せていないので、自分の課題と向き合って少しでもチームに貢献できるようにしていきたいです」。崎濱は前半戦をこう振り返る。 ディフェンスでは持ち味である高い位置からのプレッシャー、体を当てて止める強度に手応えを感じている。ただ「最後の我慢」が効かず、ファウルになる場面がまだ多いという。 「自分が激しいディフェンスをしている時にうまく手を絡ませてきたりするので、そこで踏ん張れずにファウルをしてしまう。そこを修正すればもっといいディフェンスができると思います」と改善の方向性は定まっている。 一方で、オフェンスでは「パスファーストになり過ぎて、シュートを打てる場面で打てていない」「昨シーズンと変わってない部分がある」と課題が真っ先に口を突く。全国制覇を達成した福岡第一高校時代は鋭いドライブに加え、ジャンプシュートも磨いた。しかし「躊躇してやり切れないところがある」と自己分析する。 その上で、「Bリーグに入ってから1試合も満足できるゲームはありません。正直、今は苦しいです。でも、どこかで必ず殻を破れると信じて、我慢しながら自分のできることをやっています」と等身大の思いを語る。 自らの可能性を信じ、必死にもがいているのだ。
躊躇の正体は「メンタル」…瀬川琉久の存在も刺激に
学生の頃は強気な姿勢でスコアを狙う印象が強かった。今、躊躇が生まれる要因は何か。本人はメンタル面は挙げる。 「高校時代や海外にいた時は『自分がやるぞ』『自分がシュートを打ち切る』というメンタルでプレーしていて結構うまくいっていました。今はそういうメンタルが無いというわけではありませんが、初めて大人のプロ選手たちとバスケをさせてもらってる中で、まだ考えることも少しだけあります」 チーム内での序列、相手との駆け引き、強烈なフィジカルやスピードへの対応…。学生を続けていたら、まだ大学2年生。国内トップレベルの環境にすぐに適応し、自分らしさを発揮するのは容易ではない。それでも、武器であるドライブやジャンプシュートを念頭に、力強い言葉で自身を鼓舞する。 「自分がそれをやり出したら、絶対にチームにプラスになると思っています。『今までやってきたのに、なんでやれないんだ』『崎濱秀斗ってこんなもんか』って思ってる方もいると思います。またシーズンが再開するので、これから少しでも多く自分らしさを見せていけたらいいなと思っています」 刺激を受ける存在がいる。自身と同じく昨シーズン途中にプロ入りし、既に強豪の千葉ジェッツで主力ガードの一人を担う瀬川琉久だ。現在19歳で、学年は一つ下になる。11月にあった日本代表のA代表合宿にも招集された。 「自分は考えることがまだ少しありますが、瀬川選手はそういうことも関係無しにやっている。だから活躍できてるのだと思います。後輩ですけど、それは見習わないといけないと感じます」と闘志に火をつける。
「やんちゃな顔して」桶谷大HCや脇真大も積極性求める
桶谷HCは「だいぶ成長してきた」と評価する一方で、「プロとしてのバスケットボールを知ることが、彼にとって大切な部分だと思います。足りないところはまだまだたくさんありますが、もっとハングリーに『プレータイムを掴み取るぞ』という意欲が欲しいですね」と、自らの価値を示すことへの貪欲さを求める。 辛口なコメントに見えるかもしれないが、指揮官は以前から、崎濱を日本代表になれる器がある選手と見ている。確かな期待感があるからこその要望なのだ。 「最近はやんちゃな顔をしてバスケットができるようになってきたので、その辺はいいなと思います。もともとそういう気概のある選手。アメリカでもそうでなければ勝負できなかったはずなので、いい子ちゃんじゃなくて、そういう部分をどんどん出してほしいです」 昨季はルーキーだった脇真大も「アグレッシブに行け」と背中を押し続けているという。23歳と年齢も近い。「一番仲がいい先輩」(崎濱)だからこそ、より響く部分はあるだろう。 同じくPGを担う脇は負傷して6試合の出場にとどまるが、セカンドユニットで崎濱と共にコートに立つこともあった。「秀斗は僕と似たタイプで、強力なペイントタッチができます。彼は本当にいい選手なので、積極性がなくなったら良くない。ヘッドダウンしないように、できる限り支えたいです」と先輩としての役割を見詰める。 崎濱も「自分と脇さんはどちらもペイントアタックできるので、相手にとっては守りづらいはず」と相乗効果を見込む。互いにボール運びを分担し、相手からのプレッシャーの基点を増やすことで、セカンドユニットの脅威を増したい考えだ。
勝負の鍵握るセカンドユニットとしての覚悟
レギュラーシーズン再開直後に対戦する広島には、昨季キングスで活躍した伊藤達哉や帰化選手となったメイヨ・ニックなど力のある選手が名を連ねる。 続く名古屋Dも日本代表の齋藤拓実や元キングスの今村佳太らスター選手が所属し、崎濱は「受け身になったら本当にやられる。セカンドユニットが出た時に、どれだけスタートのメンバーにつなげられるかが勝負の分かれ目になってくると思います」と覚悟をにじませる。 なかなか理想とするプレーを体現できていないもどかしさこそあれど、自らを突き動かす原動力は変わらない。プロ入りしてからたびたび口にしている言葉を、この時も言った。 「子どもの頃にキングスからたくさん元気をもらい、バスケットボールへのモチベーションが高くなりました。今は自分が沖縄の子どもたちにそれをするということが、一番したいことです」 揺るぎない原点を胸に、プロ選手としてもがきながら進化を渇望する若き挑戦者。殻を突き破る瞬間は、そう遠くないかもしれない。