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来日記念!これだけは聴いておきたいエリック・クラプトンの名作「いとしのレイラ」

Re:minder

1970年11月09日 デレク&ザ・ドミノスのアルバム「いとしのレイラ」発売日

2025年4月、80歳を迎えたエリック・クラプトンの日本武道館公演が開催される。1974年以来、半世紀にわたって日本のステージに立ってきたクラプトンの魅力とは何なのか。今回、Re:minder では『来日記念!これだけは聴いておきたいエリック・クラプトンの名作アルバム』と題して5枚のアルバムを紹介する。2枚目は、1970年リリースの歴史的名盤、デレク&ザ・ドミノス『いとしのレイラ』(Layla and Other Assorted Love Songs)です。

1970年の初夏、デレク&ザ・ドミノス結成


1963年に18歳でギタリストとしてのキャリアをスタートさせ、今年80歳を迎えたエリック・クラプトン。ロック史に残る数々の名曲、そして傑作アルバムを世に放っているが、誰もが知る代表曲となると「いとしのレイラ」をおいて他にはないだろう。

この曲は、クラプトンがデレク&ザ・ドミノスという新たなバンドでの活動を始めた時期の作品である。このバンドの唯一のスタジオアルバムも、邦題は『いとしのレイラ』(Layla and Other Assorted Love Songs)である。

クラプトンは最初に加入したR&Bバンドのルースターズを皮切りに、ヤードバーズ、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ、クリーム、ブラインド・フェイス、アメリカの男女デュオ、デラニー&ボニーの活動にも関わるなど、様々なバンドを経験してきた。そしてクラプトン初のソロアルバム『エリック・クラプトン』のレコーディングを終えた1970年の初夏、デレク&ザ・ドミノスが結成された。

ロンドンのチャリティーコンサートでデビュー


スーパーグループだったクリームの呪縛、ブラインド・フェイスでの短い活動を経て、フラストレーションが溜まっていたことが、新バンド結成へと向かわせた動機だったという。メンバーはクラプトンをはじめ、キーボード&ギターのボビー・ウィットロック、ベースのカール・レイドル、ドラマーで時にピアノも弾くジム・ゴードンの4人。彼らはデラニー&ボニーのバンドで顔を合わせていた上、ジョージ・ハリスンのアルバム『オール・シングス・マスト・パス』にも参加していた。その後、デイヴ・メイスンが加わり、バンドは5人に。そして1970年4月14日にロンドンのチャリティーコンサートでデビューを果たす。

デビューコンサートの後、バンドは英国ツアーを行い、ツアー終了後ほんの数日で、マイアミにあるクライテリア・スタジオでアルバムのレコーディングをスタートさせた。この際、クラプトンはプロデューサーのつてで、サザンロックの人気バンド、オールマン・ブラザーズ・バンドのコンサートを見に行く。バンドのリーダー、デュアン・オールマンは客席にクラプトンを見つけ固まってしまったというエピソードがあるが、後日、今度はデュアンがクラプトンのレコーディングを見学に訪れる。その際、クラプトンはデュアンをレコーディングに誘い、結果、アルバムの半数以上を占める11曲で、デュアンのスライドギターが披露されることとなった。

7分以上に及ぶ大作「いとしのレイラ」


アルバム2枚組、全14曲のうち、やはりハイライトとなる曲は「いとしのレイラ」(Layla)。有名なエピソードだが、当時のクラプトンが、親友であるジョージ・ハリスンの妻、パティ・ボイドに恋心を抱き、その苦悩を歌ったものである。当初はバラード曲のつもりで書いたものの、デュアン・オールマンが冒頭の印象的なリフを作ったことにより、アップテンポのロックナンバーに変わったという。その後、パティ・ボイドはハリスンと別れ、1979年にクラプトンと結婚しているのもご存知の通り(のちに離婚)。

「いとしのレイラ」は7分以上に及ぶ大作だが、後半にまったく違うタイプの楽曲が組み合わされている。レコーディング中に、ジム・ゴードンが弾いていたピアノ曲をクラプトンが気に入り、追加するように依頼したのだ。前半部の熱のこもったブルースロックと、後半のエレガントなピアノパートとの対比はこの曲をより印象深いものにしている。

しかし前述のエピソードを知った後では、前半部が「♪レイラ!」の絶叫と共にクラプトンの激しい恋愛感情、後半は甘い恋愛生活の夢想のように聴こえてしまうのも致し方ない。ただ、この後半パートは、ジム・ゴードンが当時恋人だったリタ・クーリッジが作ったメロディーだったと、のちに、リタ本人やボビー・ウィットロックの証言で明らかになった。ともあれエピソードには事欠かない楽曲である。

日本のみでシングルカットされた「恋は悲しきもの」


アルバム全14曲のうち、オリジナル曲は9曲。そのうちクラプトンとウィットロックの共作が5曲と半数以上を占め、冒頭のブルースナンバー「アイ・ルックド・アウェイ」から一転して、泣きのフレーズが炸裂するクラプトンのソロ作「ベル・ボトム・ブルース」へと繋がる流れは完璧。2人の共作のうち、「恋は悲しきもの」(Why Does Love Got to Be So Sad?)は1971年に、日本のみでシングルカットされ、ライブアルバム『イン・コンサート』収録の短縮版が英米でシングル発売されている。

「テル・ザ・トゥルース」は当初、ジョージ・ハリスンのプロデューサーであるフィル・スペクターが制作、アップテンポの曲としてシングル発売されたが、結果として彼らはこのシングルを発売停止とし、新たにスローテンポの曲として録音しアルバムに収録した。

カバー曲も5曲収録されているが、このうち印象深いのはジミ・ヘンドリックスの「リトル・ウィング」だろう。ジミとクラプトンはライバルでもあり友人でもあったが、このレコーディングの9日後、ジミはドラッグのオーバードーズ(諸説あり)でこの世を去ってしまう。結果的に「リトル・ウイング」はジミへのトリビュートとなってしまった。

他にも印象的なカバーとしては、ドゥーワップの名曲「イッツ・トゥー・レイト」がアップテンポの三連ロッカバラードで表現されている点だろうか。他にもブルースのスタンダード「だれも知らない」のカバーも記憶に残る。

ギタリストからボーカリストとしての色を出そうとしていたクラプトン


デレク&ザ・ドミノスは、イギリスのギタリストであるクラプトンがアメリカ人ミュージシャンと結成したバンドであり、アルバムの楽曲もブルースやサザンロックの影響が濃厚に出ている。またクラプトンがギタリストからボーカリストとしての色を出そうとしていた時期でもあり、クリームの時代とは明確に違うことをやろうとしていたことがわかる。

アルバムは1970年11月にアメリカでリリースされたが(イギリスでは12月発売)、当初、メディアでは失敗作の烙印を押されてしまった。アメリカではゴールドディスクに認定されたが、イギリスではチャートインせず。クラプトンの名前が裏ジャケにしか記載されておらず、彼のアルバムという印象が薄かったこと、リード曲の「いとしのレイラ」が長すぎてラジオでかからなかったこともセールスに結び付かなかった要因だったとされている。

加えて、クリーム解散後のロスを埋めるような作品を期待していた向きには、ラブソング主体、クラプトンのギターよりボーカルが目立つこのアルバムに失望した、といったような評価であった。

現在ではクラプトンの最高傑作と称賛される


デレク&ザ・ドミノスは1971年に解散。セカンドアルバムの制作は途中で頓挫し、この時期ドラッグ中毒に陥っていたクラプトンは3年間の休養に入る。このセカンドアルバム用の音源は、いくつかが1988年にリリースされた4枚組BOX『アンソロジー』に収録され日の目を見たほか、2011年に発表された『いとしのレイラ<40周年記念スーパー・デラックス・エディション>』にも収録されている。

ジミ・ヘンドリックスの死、自身のドラッグ中毒、セールス面での失敗、さらにはデュアン・オールマンが1971年10月にオートバイ事故により他界するなどの悲劇が重なり、クラプトンのキャリアの中でも不幸な時期に当たるアルバムではあるが、長い年月を経て評価は高まり、結果的に現在ではクラプトンの最高傑作と称賛する声も多い。

また、「いとしのレイラ」は7インチシングルとして1971年3月にリリースされたが、この時は後半のパートをエディットしたバージョンで発表されている。翌1972年、ロングバージョンがリリースされると、ビルボードHOT100の最高10位を記録し、同年のコンピレーションアルバム『エリック・クラプトンの歴史』(The History of Eric Clapton)にも収録され、次第に多くの人々の耳に届くようになり、現在ではロック史上の名曲の1つに数えられるようになった。

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