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冬になると大にぎわい! 11月の風物詩「酉の市」、その由来は?熊手の意味とは?

さんたつ

酉の市

寒い季節になると、浅草や新宿の神社などに露店が並び、にぎわいを見せる日があります。訪れる人の手にさまざまな大きさの熊手が握られているこの日は「酉の市」。なんとなく、商売繁盛を願う日のようなイメージが強いと思いますが、そのルーツや、熊手の意味などはあまり知られていません。そこで今回は、冬の風物詩のひとつ「酉の市」について、超カンタンに深堀ってみましょう!

酉の市っていつやってるの?

街角の掲示板にお知らせが貼り出されたり、テレビで酉の市のにぎわいが報じられるようになると、「もうそんな季節か」と感じます。

酉の市が開かれるのは、11月の“酉の日”。

ただ、「クリスマス=12月25日」のように、酉の市が何月何日なのかを具体的に答えられる人はいないでしょう。

11月になると、主に都内の神社はにぎわいを見せる。

それに「そもそも酉の日って何?」って思いますよね。

これは、日付を「子・丑・寅……」のような十二支で数えるカウント方法で、暦が12日(または60日)で一巡します。4000年も前にあった「殷(いん)」という中国の古い王朝で使われていた暦で、現代ではほとんど接することがないため、ピンとこないのも仕方ありません。

こうした由来から毎年同じ日付ではなく、“酉”が巡ってきた日が“酉の日”となり、11月中の酉の日に、酉の市が開催されるのです。例年、11月の酉の日は2回のことが多いのですが、2024年のように酉の日が3回めぐってくる年もあります。それぞれ一の酉、二の酉、三の酉と呼ばれ、酉の市が開催された神社も多かったようです。

では、なぜ酉の市は11月に開催するのでしょうか?

酉の市の発祥は浅草の鷲(おおとり)神社ですが、その場所には神社ができる前から、天日鷲命(あまのひわしのみこと)という神様が祀られていました。この場所に、日本武尊(やまとためるのみこと)が戦勝のお礼のためにやって来たのですが、それが11月の酉の日だったのです。

そのことから、この日が鷲神社の例大祭の日と定められ、現在の酉の市につながっています。

なぜ熊手が縁起のいいものなのか?飾り方は?

酉の市といえば「熊手」ですね。

居酒屋さんなどに行くと、酉の市で購入した熊手が飾られているのをよく見かけます。

一般的にテレビ番組などでは、「福や財をかきこむため、熊手の縁起物が売られている」と言われていますが、その答えでは満点ではありません。

神社に飾られる大きな熊手。天日鷲命の御利益は商売繁盛であるため、酉の市には商売繁盛を願う人も訪れる。

私たちの感覚では、熊手は落ち葉を集める掃除道具であったり、収穫したものを集める農具のイメージですよね。

しかし昔は、木製の持ち手に金属の鉤爪(かぎづめ)をつけて、馬に乗った敵を引きずり下ろすような武器として使われていたこともあったんです。

その武器である熊手を、「日本武尊がお礼参りの際、社殿の前にあった松に掛けた」と言い伝えられていることがルーツになっているのです。

そんな熊手に商売繁盛の象徴や、縁起の良いお多福・大黒・恵比寿、小判が飾り付けられるようになっていったのが、現在で我々が目にする「酉の市の熊手」なのです。

なお、購入したものは、より遠く広くから福を集められるよう、自宅やお店の高い位置に置いておくのが良いと言われています。

また、毎年の買い替えごとに徐々に大きなものにしていくのが良いという話もあります。しかし、数年後に大変なことにならないように計画的に(笑)。

都市伝説!? 熊手のもう一つの成り立ちとあり方

浅草「長国寺」(写真=photoAC)。

ところが、こうしたルーツとは別の由来を唱える説もあります。

鷲神社の隣にある「長国寺」という小さなお寺。

こちらでも、酉の市では熊手が販売されるのですが、鷲神社のものと比べ、とても簡素です。そして小ぶりの熊手にのっているのは鷲妙見大菩薩(わしみょうけんだいぼさつ)。

この熊手について、宗教史学者で文化人類学者の中沢新一氏が著書『アースダイバー』で、次のような持論を展開しています。

酉の市は、昼と夜のバランスが崩れた冬至に近い季節に開かれます。

そのため、このバランスを取り戻そうと、“空の秩序の象徴”を熊手に乗せました。

まず、鷲はもっとも高い位置を飛ぶことが知られている鳥で、大空の秩序を示します。そして妙見大菩薩は北極星を神格化したもの。北極星も夜空の中で唯一動かない、夜空の秩序を象徴する存在です。

日本の昔話や神話には、こうした“象徴”を使った思考が多く流れており、長国寺の熊手は現代にそれが残る貴重なものなのだ……と、中沢氏は語っています。

古くからある文化だからこそ、さまざまな特徴や由来が現代にも残っているのですね。

酉の市は全国的なものではない?

首都圏に暮らしていると、全国的なものと思っていたものが、実は東京(首都圏)ローカルだったという物事に、気付きにくいことがあります。

例えば、都内の多くの駅前で見かける『名代 富士そば』も「全国チェーンだと思ってた!」という方が多くいますが、店舗のほとんどが東京都内にあるのです。

『名代 富士そば 浜松町店』。都内の駅前ではおなじみの光景だが……。

同じように、酉の市も実は「ほぼ東京ローカル」。

三大酉の市も、鷲神社・花園神社(新宿)・大國魂神社(府中)と、全て東京です。

ただ、関西や九州では酉の市が皆無というわけではなく、いわゆる“シェア”が圧倒的に低いということ。

なぜなら、西日本の商売繁盛の神様には、「えべっさん」と通称される強大な神様「恵比寿」が君臨しているからです。

西日本では、その年最初の恵比寿さまの縁日が「十日戎(とおかえびす)」とされ、酉の市のようなにぎやかさを見せます。

不思議なことに、この十日戎でも、熊手が縁起物の代表格になっています。

祀っている神様と風習は違うのに、縁起物が似てくるなんて不思議ですよね。

商売繁盛の御利益で、西日本ナンバーワンのシェアを誇る恵比寿様(福岡県「住吉神社」)。

単純ににぎわっている縁日として参加するのも楽しいですが、由来や意味を知ってから出かければ、おめでたさも倍増しますね!

ちなみに2025年の酉の日は11月12日と24日。今から楽しみですね!

写真・文=Mr.tsubaking

Mr.tsubaking
ドラマー/放送作家/ライター
Boogie the マッハモータースのドラマーで、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌など担当。BS朝日「世界の名画」の構成、週刊SPA!、週刊プレイボーイなどに寄稿・執筆。温泉ソムリエ・仏教検定1級。

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