Yahoo! JAPAN

敗者の涙 バスケットボール男子 柳ケ浦のラストミーティング 挑戦は終わりではない【大分県】

オー!エス!OITA

写真/オー!エス!OITA SPORTS

 あまりにも早すぎる敗退だった―。全国高校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)に4年ぶりの出場した柳ケ浦は、初戦で無念の敗北を喫した。試合後、会場の外であった最後のミーティング。中村誠監督は声を震わせて選手たちに語りかけた。

 「こんなに早く大会を終えることが本当に悔しい。今年のチームはベスト8以上を狙える力があったし、みんなこの大会に向けて本気で努力してきた。勝たせることができなくて本当に申し訳ない」。その言葉に、選手たちの目にも悔し涙が光る。

 

 この敗戦の重みを最も痛感していたのは、チームを支え続けた3年生だ。山根遼太郎、山下凛生、塩谷泉らは、中村監督が掲げた「強化3カ年計画」のもと、1年生の頃から試合経験を積み重ねてきた。しかし、最後の大会は思い描いた形で終わることはなかった。特に、このチームの要でありキャプテンを務めたボディアン・ブーバカー・ベノイット(3年)の不在が、試合の行方に大きな影響を与えた。

 

 第4クオーター途中、手首を負傷したベノイットはコートから去ることを余儀なくされた。その瞬間、試合の流れが大きく変わったことは否めない。圧倒的な存在感を放っていたベノイットがいなかったことで、動揺を隠せなかった。「アイツに頼り過ぎてしまった」。試合後、山根は悔しそうにそう語った。山下も「最後まで気持ちは切らさないようにしたけど、心のどこかで『これで終わってしまう』と感じてしまった」と振り返る。

 

3年生最後のミーティング

 

 ベノイットの努力と情熱は、周囲を驚かせ続けてきた。昨年のウインターカップ県予選で敗退した翌日、ベノイットは休む間もなく練習に参加。ベンチ外の選手たちと共に基礎トレーニングから全メニューをこなした。その姿勢に誰もが心を打たれた。「このチームで日本一になりたい。もう負けたくない」という決意は、言葉以上に行動で示されていた。

 

 中村監督がベノイットをキャプテンに任命した理由も、そこにある。柳ケ浦で初の留学生キャプテンという異例の抜擢にもかかわらず、チームメイトや保護者たちからの反対は一切なかった。日本語を積極的に学び、文化に溶け込み、仲間たちと深い絆を築こうとするベノイットの人柄を、誰もが認めていたからだ。

 

 最後の大会で、ベノイットが完全な形で戦えなかったことは何とも悔やまれる。しかし、この敗北は決して無駄にはならない。3年生はこれで高校バスケを終えるが、そのほとんどが大学でも競技を続ける予定だ。山根も「これを糧に、次のステージで成長したい」と前を向く。

 敗北の涙は確かに悔しさを映し出していたが、それ以上に未来への希望が込められていた。彼らの挑戦は、ここで終わりではない。全国の舞台で味わったこの経験は、次のステージで輝く糧となるはずだ。

 

柳ケ浦初の留学生キャプテンとなったベノイット

 

 

(柚野真也)

【関連記事】

おすすめの記事