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元水族館飼育員が<水族館を目指す学生にオススメする本>6選 自分の中の引き出しを増やそう

サカナト

おすすめの参考図書(提供:みのり)

2025年現在、これだけ多様な仕事があるにも関わらず、毎年のように「水族館の飼育員さんになりたい!」という学生を見かけます。水族館での勤務経験がある筆者にも、やはり就活の相談をしに来る学生がいます。

そんな彼・彼女らによく聞かれるのが、「水族館への就職・勤務に参考になった本はないか」でした。

水族館に関する専門書は書店でもあまり見られず、入手困難なことが多いです。また、一般の書籍と比べてそもそも情報があまり出回らないため、どのような“水族館本”があるかという情報すら仕入れにくく、水族館に関連した本を手に入れるのは中々骨が折れます。

そこで、筆者が参考にしていた水族館本や、水族館本ではなくとも水族館・飼育・環境教育を考える上で参考になった6冊の本をピックアップして、紹介します。

本記事で紹介した本を読んだからといって、必ずしも役に立つとは限りません。当然ですが、その本がどの程度役に立つかは読み手次第です。

しかし、こうした本を読み続け、自分の中の引き出しを増やしておくことが、数年後の自分にとって役に立つものになるかもしれません。少しでも参考になるものがあれば嬉しいです。

大人のための水族館ガイド│錦織一臣(著)、葛西臨海水族園(監修)

『大人のための水族館ガイド』(撮影:みのり)

大人のための水族館ガイド』(著:錦織一臣、監修:葛西臨海水族園/養賢堂)は、葛西臨海水族園のスタッフをはじめとした水族館に関わる様々な方が執筆されている水族館本です。とにかくわかりやすく、水族館というものが何なのかを理解するにはうってつけだと思います。

後々は『新版 水族館学:水族館の発展に期待をこめて』(著:西源二郎・鈴木克美/発行:東海大学出版)など本格的な水族館本を読んでもらいたいですが、まず大まかな概要を理解するという意味では本書がオススメです。

動物園から未来を変える ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン│川端裕人・本田公夫(著)

『動物園から未来を変える』(撮影:みのり)

動物園から未来を変える ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン』(著:川端裕人・本田公夫/亜紀書房)は、ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザインを長年務めた本田公夫氏と、様々な科学ノンフィクション本を出されている川端裕人氏の<動物園展示本>です。

メインになるのは動物園の話ですが、水族館でもとても参考になります。ただ水槽を置き、パネルや魚名板を置けば展示完成!と思っていた自分の甘い考えが覆されました。

展示という行為が、これほどまで奥深いとは……。生体展示を行う人にとっては、必須の本だと思います。

水族館の文化史 ひと・動物・モノがおりなす魔術的世界│溝井裕一 (著)

『水族館の文化史』(撮影:みのり)

水族館の文化史 ひと・動物・モノがおりなす魔術的世界』(著:溝井裕一/勉誠出版)は、水族館を文化的、宗教的、世界史的な側面から見つめた本。読み物としても大変面白いです。

これまで知らなかった水族館の歴史的な側面を知ることができ、また今後の水族館の在り方も考えることができます。

生体展示をする、調査研究をする、繁殖させるなど現在における水族館の役割は多々ありますが、それ以外にも水族館にはもっと無限の可能性があるのではないか、そんなことを考えさせてくれる本です。

ジンベエザメの命、メダカの命 水族館・限りなく生きることに迫る│ 吉田啓正(著)

ジンベエザメの命、メダカの命(撮影:みのり)

ジンベエザメの命、メダカの命 水族館・限りなく生きることに迫る』(著:吉田啓正/信山社サイテック)は、神戸市立須磨海浜水族園やいおワールドかごしま水族館の館長を歴任した吉田啓正氏の本です。

吉田氏がこれらの水族館を作っていく過程にワクワクし、その水族館を作りあげ、勤めたからこそ見えてきた命への向き合い方など、“水族館人”としてどう生きていくべきかを考えさせてくれる本です。

私は高校生の時にかごしま水族館の「沈黙の海」という展示を知り、大変なショックを受けました。この展示が生まれるに至る、吉田館長の想いなども知ることができます。

これまで読んだ水族館本の中で、いちばん影響を受けたと言っても過言ではありません。水族館を志すならば、ぜひ一度は読んでほしいです。

別分野だけど役立つ本

水族館に勤め離れた私が今思うのは、「私は社会のことを何も知らなさすぎた」ということでした。

水族館は人のための施設です。展示も人に見せるために行われているものです。研究であっても、最後は人に還元するものです。

水族館が人のためであれば、人々が作る社会や他の分野について、何でも勉強しておくのは当然の事だと思います。

私もまだまだ勉強中の身で、決して社会の全てを知っているわけではありませんが、それでも少しでも他分野の本を読み、その知識を水族館に繋げてほしいと考え、数冊をご紹介いたします。

ストレス脳│アンデシュ・ハンセン(著)、久山葉子(訳)

ストレス脳(撮影:みのり)

私が水族館を離れてしまったのは、決して前向きな理由ではありません。様々な暗い要因が重なって、退職しました。そんな身も心もズタボロだった私を救ってくれた本が、『ストレス脳』(著:アンデシュ・ハンセン、訳:久山葉子/新潮社)です。

あまりネガティブなことは書きたくありませんが、現実問題として、水族館勤務はつらいことだらけ、ストレスだらけです。

そんなストレスをなぜ感じるのか? これを科学的に論じ、どう対処すれば良いのかを提案した一冊です。

厳しい水族館環境に負けることなく、人々のために尽くしてほしいと願い、紹介しました。

サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福(上・下)│ユヴァル・ノア・ハラリ (著)、柴田裕之 (訳)

サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 (撮影:みのり)

ホモ・サピエンスである私たちが如何にして台頭し、世界の支配者になったのか。その歴史を科学・歴史・宗教など、様々な側面から捉えた渾身の一冊が『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福(上・下)』(著:ユヴァル・ノア・ハラリ、訳:柴田裕之/河出書房新社)です。

ここに書かれているサピエンス(私たち)の生態は、水族館はもちろん様々な場面に応用できると思います。

生き物を上手く飼育し普及するためには、まずそれを行う我々の生態を知る必要があるだろう。そう考えさせてくれた一冊です。

この本が面白かった方は、同じ著者の『ホモ・デウス』(同)も読んでみてください。

ジャンルを問わずに本を読もう

先にも述べましたが、水族館を考える上で、結局は水族館以外の分野もたくさん絡んでくるものだと知りました。であれば、水族館本だけに留まっていては、そこからさらに先を考えることは困難です。

読み始めは水族館本でいいですし、魚に関する本や水産業に関する本、他動物に関する本など、好きなジャンルを読み漁って<知る楽しさ>を味わうことも大事です。

おそらくその過程で「これはなんだ?」と疑問に思う事柄が出てくると思います。例えそれが他分野であっても、迷うことなくその疑問を追求し続けてみてください。水族館や魚を通して、世界がさらに広がっていくと思います。

そうして広がった世界をさらに水族館へ還元し、水族館へ訪れる人々にも還元してくれたら、非常に嬉しく思います。

(サカナトライター:みのり)

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