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「息子さんだけできていない」担任の言葉にショック。発達障害診断前の試行錯誤した日々

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「息子さんだけできていない」担任の言葉にショック。発達障害診断前の試行錯誤した日々

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

幼稚園では特に目立っていなかったのに……小学校入学後、先生から叱られるように

今回は、ASD(自閉スペクトラム症)・ADHDと診断されている長男ハル(現在高1)が、小学校に入学した頃のお話です。

幼稚園では特に目立った困りごともなく、集団行動もできていたハルは、地元の公立小学校の通常学級に入学しました。しかし入学したとたん、担任のベテラン先生から頻繁に叱られるようになったのでした……。

小学校生活についていけるように……親子で必死だった日々

入学して3週間も経たず先生に呼び出されて、一番私が衝撃だった言葉は「クラス中の34人ができることが、ハルくんにはできません!」でした。先生は明らかにイライラしていた様子でしたが、私は頭をガーンと殴られたような気持ちでした。

具体的には、以下のような指摘を受けました。
・全体指示で集合場所(例えば校庭など)を伝えても、ハルくんだけ来ないことがあった
・コツを教えても、逆上がりや縄跳びが全然できない
・ちょっかいを出してくる子を、無視できず反応してしまう(流せない)

「ハルが、みんなができて当たり前のことをできない」と言われたショックと、「小1の子どもは、そんなに先生の言うとおりに一度でできるの!?」というショック……。幼稚園の頃、周囲の人たちにハルの発達について相談した時には『子どもなんてみんなそんなものだよ』と言われていたのに……やっぱりウチの子だけだったの? と、私は焦りました。

ここからは私も必死でした。
「先生のお話をちゃんと聞きなさい」
「縄跳びの練習をしよう!」
「逆上がりの練習をしにいくよ!」
「イタズラしてくるお友達には反応しないの!」

なんとか小学校に慣れさせなければ……! そう思って何度もハルに禁止事項を伝えて、やらなければいけないことも伝えて。縄跳びや逆上がりの練習を、一緒にしていきました。

その頃は、まだ下の子どもたちも小さかったので、ただでさえ大変な中、ハルに付きっきりになるのは至難の業でした。ハルのことで一生懸命になる私を、さすがに仕事ばかりの夫も見るに見かねたのでしょうか。少しの時間ですが、縄跳びや逆上がりの練習に付き合ってくれることもありました。

発達特性への理解がまだ乏しかった当時を振り返って

今思えば、親として厳しくやりすぎたところもあったかも知れないと、猛省しています。

先生のお話を、覚えていたくてもすぐに忘れてしまう特性(ワーキングメモリーの低さ)。何回みんなと同じように頑張っても、協調運動が苦手(DCD(発達性協調運動症))。納得いかないことを言われたりされたりすると、スルーできず気になってしまう……。

全部ハル自身が、したくてしてるわけではないのに。

それでも、見た目では分からないそういった特性を、理解してもらうのも、するのも、当時は難しかったのでした。『みんなができることができない。努力不足』――担任の先生からそんなふうに言われたことで、まるで自分がやってきたこれまでの子育てを否定されてる気がして、私はショックと焦りでいっぱいでした。
※ハルの担任の先生のように、当時50代後半で、定年間近な年代の先生の中には、発達特性について詳しくない方がまだ結構いらっしゃいました。今の私であれば「それでもハルのペースを大切にします!」と、堂々と言っていたかもしれません。その頃の私は経験不足で、年上ベテラン先生からの言葉を、うまく受け流すことができませんでした。

しかし、ここでハルと一緒に頑張ったことは、全くの無駄ではなかったようでした。縄跳びや逆上がりの練習に加え、帰宅後にやるべきことのルーティンが定着するまでは、私も下の子どもたちの面倒を見つつハルにこまめに声をかけたり、目立つよう予定を紙に書き「見える化」したり、ハルの側で見守り続けました(補足いたしますと、「コツを掴むまで注意し、そばで共に練習しつつ見守る」というサポートの仕方が向いていたのが長男でした。同じ診断名であっても次男は同じタイプではありません)。

ハル自身が努力するタイプだったということもあり、その後は何とか小学校のルーティンを覚え、縄跳びや逆上がりもだんだんとコツを掴んできて……。ついにできるようになりました。

『最初こそ周囲の子よりも物事を理解する力の差が目立つものの、一度ルーティンを覚えれば、人一倍真面目にそれを「熟す」努力をする』。

注意深く見守っている中で、「ハルはそういうところがあるのだなぁ」と私は気がつきました。ですが今思えば、それも発達特性の一つだったのだ……と分かるのです。

小1最後の学習参観で、先生からとても褒められたけれど

小学校のルーティンを覚え、縄跳びや逆上がりもマスターしたハルは、先生から見ても目を見張る成長っぷりだったのだろうと思います。小1が終わる頃の学習参観では、「ハルくん! クラスの中で一番成長しましたよ! 本当によく頑張りました、立派です!」と担任の先生から声をかけられたのでした。

発達障害のことをまだ知らなかった私は、褒めてもらえて笑顔になったハルを見て、単純にうれしかったですが……。心のどこかに、モヤっと引っ掛かる「何か」を感じていました。

この引っ掛かりとは一体何だったのか? ハルが小学校高学年になった頃にようやく、明らかになるのでした。その話は、またの機会に書かせていただきたいと思います。

執筆/安田ふくこ

(監修:新美先生より)
小学校入学時のお話を聞かせていただきありがとうございます。
1年生入学した早々の、担任の先生からの『みんなができることができない』というようなご指摘は、あまりにも無慈悲な暴言ですよね。時代がちがう? いえいえ、数年前でも十二分に暴言だと思いますが、まぁそれは置いておいて、安田さん、それまでの子育てを否定されたように感じてしまい、親子二人三脚で努力を重ねられたのですね。お疲れ様でした。

あとになって振り返れば、頑張らせ過ぎたと思うところもあるのかもしれませんが、協調運動が苦手でも信頼関係のある親子で自分のペースで練習を重ねることで、できるようになることもありますし、生活のルーティンをつくるために本人に分かりやすく「見える化」の視覚支援をすることで、スムーズに生活が流れるようになったことはとても良かったのではないのでしょうか。苦手を努力だけで克服しよう、全てみんなと同じ水準にと頑張りすぎると、いずれかの時点でキャパオーバーすることもあることに留意しながら、本人のやりやすいやり方を取り入れたり、繰り返して練習したりしてカバーしていくことはある程度は有効ですよね。
さて、安田さんの心の引っ掛かりがなになのか、次の記事も楽しみにしています。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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