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【パリ五輪開催記念】フランスが生んだ極上のインターナショナルバンド「タヒチ80」

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1999年10月12日 タヒチ80のファーストアルバム「PUZZLE」発売日

リレー連載【パリ五輪開催記念】フランス関連音楽特集 vol.3

洋楽衰退の本当の理由とは?


60年代後半からのフレンチポップのブームは、高久光雄さんたち洋楽ディレクターの熱意と能力がつくった、と言っても過言ではないと思います。そして、それを後押ししたのが “洋楽ビジネス” の自由度の高さでした。“邦題” もシングルジャケットも、もちろん販売戦略も、洋楽ディレクターが自由にコントロールできました。おそらく、本国のレーベルが日本のマーケットなんて重視していなかったからでしょう。ただ、自由な代わりに、マスター音源の支給もままならなかったらしく “輸入盤をプレーヤーで再生してテープに録音したものをマスターにした” というようなことを、やはり高久さんが語っていました。

ところがやがて、日本のマーケットはバカにできないことに気づき、本国からのチェックが厳しくなっていきます。重要なマーケットだから、しっかり把握しようということだったでしょうし、さらに開拓したかったでしょうし、アーティストの意向や要望もあったでしょうし、本国の運営方針を徹底するという思惑もあったでしょう。それはそれで当然のことだと思います。でもそれは、洋楽ディレクターたちの自由を奪うことになりました。そしてもちろん、ビジネスですから、売上はより厳しく求められます。ブリンカー(遮眼帯)をされて速く走ることだけを要求される競走馬のように働け、と。モチベーションはダダ下がりですね。

“邦題” も日本の洋楽マーケットに花咲いた貴重な文化だと、私は思っているのですが、いつの頃からか本国の了解が必要になったようです。その後は、原題そのままか、あっても面白くもなんともないような邦題だけになってしまいました。そのきっかけかどうかは分かりませんが、シンディ・ローパーの「Girls Just Want to Have Fun」が、当初は「ハイ・スクールはダンステリア」という邦題で売り出されたけど、しばらくしてから本国の指示で、それが使用不可となり、原題のカタカナ表記に改められたという象徴的な事件がありました。素晴らしい邦題とまでは思いませんが、使用禁止とはあんまりだと、悲しい気分になりましたね。

洋楽市場の衰退は、大衆の嗜好の変化というよりは、このような、洋楽ビジネスにおける本国と日本の関係性の変化に原因があるんじゃないか、と私は考えています。音楽ファンの中で、洋楽を聴く人が1割しかいないなんて、あまりに少な過ぎます。やはり、洋楽アーティストや作品の魅力の伝え方に工夫と努力が足らないとしか思えません。ビジネス上、どんな課題があるのかは知りませんが、本国も日本サイドも共通の目的は売上増進なのですから、協力し合って、少しでも洋楽市場を盛り上げてほしいものです。

遠くて近いフレンチポップ


そして、そうこうするうちに、ワールドワイドのストリーミング配信が音楽ビジネスの中心という時代になりました。洋楽の国内盤という概念自体が、あまり意味のあるものではなくなってしまったので、昔のような洋楽の売り方が、戻ってくることはおそらくもうないでしょう。

その代わり、Apple MusicやSpotifyなどで、フランスでヒットしている曲もすぐに聴くことができます。これは逆に素晴らしいことで、私たちはそういう恩恵をもっと活用しないともったいないですね。

と言いながら、私も初めて意識的に、フランスの最新ヒット曲などをいろいろ聴いてみたのですが、ヒットチャートの上位曲はやはりヒップホップばかり。フランスにもこんなにヒップホップ・アーティストがいるんだと驚きましたが、いかんせん内容は、詞がフランス語なだけで、いわゆるラップでヒップホップ。私の苦手なジャンルなんで勝手なこと言いますが、どれも似たり寄ったりで新奇性を感じません。

ポップ系はそれなりに楽しめるものも多いですが、ザッと聴いた中ではこれと思う曲はありませんでした。“ルアンヌ” (Louane)という女性シンガーが人気みたいですが、歌に少し個性は感じるものの、それだけで、あとはまあ今ハヤリの米英ポップスに準ずるという印象。

フランスが生んだインターナショナルバンド、タヒチ80


結局、今のフランスでいちばんいいと思うのは、昔から好きな “タヒチ80” です。1999年のデビューアルバム『PUZZLE』は、“渋谷系” の周辺的な感じでけっこう話題になりました。それ以降は知る人ぞ知る程度の存在ながら、3年に1作くらい、アルバムをコンスタントに出し続けていて、最新作は2022年発売、8枚目のアルバム『ヒア・ウィズ・ユー』(Here with You)。彼らには駄作がまったくないのです。メロディはコンスタントによいし、サウンドは常に明るくてポップでありつつ、細部にまで気配りと工夫が散りばめられています。ほとんど英語で歌っているので、あまりフレンチな感じはないのですが、フランスが生んだインターナショナルバンドとして、私の中ではダフト・パンクよりかなり上です。

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