見て・飲んで・驚きの進化系カクテル!昼飲みOKのミクソロジーバーが裏天神に
「バーは暗くて入りづらい、緊張する……」
「お酒はあまり飲めないけどバーに行ってみたい」
「いつもとは違うカクテルを飲みたい!」
そんな方におすすめしたいのが、今年の8月、通称“裏天神”とも呼ばれる南天神エリアに誕生した「Notime Mixology Bar」。14時から翌1時までの通し営業で、昼飲み、カフェ使い、食後の一杯まで楽しめる話題の一軒です。
やって来たのは、「炉ばた 新川橋」や「日本酒BAR香月」といった新店が続々オープンしている注目の古アパート「ムツキソウ」の2階。階段を上がってすぐの右手前、「Notime」と書かれたドアマットを目印に店内へと足を進めます。
「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれたのは、オーナーの山田大海さん(右)と“ミクソロジスト”でもあるバーテンダーの安部孝昭さん(左)。
「Notime Mixology Bar」は、福岡ではまだ数少ない“ミクソロジーカクテル”を看板に掲げるバーです。「Mixology(ミクソロジー)」は「mix(混ぜる)」と「ology(学問・科学)」を組み合わせた造語。1990年代のロンドンで誕生し、NYなどの先端都市で進化を続けている新感覚のカクテルを指します。フュージョン料理の流行を取り入れつつ、フレッシュな果物や野菜、スパイス、ハーブなどを多用して作る一杯は、既成概念に囚われない独創性が最大の特徴。そして、そんなオリジナルカクテルを創造するバーテンダーを“ミクソロジスト”と呼びます。
大学時代、レストランバーでのアルバイトをきっかけにカクテルの奥深さを知り、バーテンダーの世界に引き込まれていったという安部さん。東京のオーセンティックバーで基礎を、ミクソロジーバーで最先端の技術を学び、帰福してからはコーヒーカクテルを追求するためにバリスタとしても研鑽。2023年開催の「ディアジオ ワールドクラス」※日本予選では「Japan Top50 Bartender」に選出されるなど、その実力は折り紙付きです。
※ディアジオワールドクラス=世界的な大手酒造カンパニー「ディアジオ」が年1回開催する世界最大級のバーテンダーコンペティション
オーナーの山田さんはグラフィックから注文住宅の設計までを手がけるデザイナーで、自ら設計した店を営むのが夢だったそう。そんな中、仕事を通じて安部さんに出会い、安部さんのカクテルやドリンクに惚れ込んだと言います。“店を開く”という目標も同じだったことから2人は意気投合し、約2年の準備期間を経て、互いの得意分野を活かした「Notime Mixology Bar」を開業しました。
山田さんが設計・デザインした店内は、カフェの気軽さとバーの落ち着いた雰囲気を併せ持つ居心地の良さ。築55年の古い柱やガラス窓などが上手く活かされており、椅子やカウンターの高さ、ゆったり腰を下ろせるソファ席にもこだわりが光ります。
「Notime Mixology Bar」のテーマは「みんなが楽しめるカクテル」。「バーに行き慣れていないビギナーさんやお酒が飲めない方にも楽しんで欲しい」との思いが詰まったミクソロジーカクテルが揃い、約8割はノンアルコールにも対応しています。
最初にいただいたのは、看板メニューの「Fake Bird」(1,400円)。何と鳥カゴに入った小鳥形のグラスが運ばれてきました!
「初めてバーに行く時って少し勇気が入りますよね。でも一歩踏み出せば、そこには新しい世界が広がっている。そんなイメージをカゴの外へ羽ばたく鳥に重ねました。見た目にはどんな味かわからないのも楽しみの一つだと考え、竹炭のパウダーであえて黒く色付けています」と安部さん。このプレゼンテーション、ワクワクしますね。
カクテルのベースとなるのは、ケールや小松菜をふんだんに使った自家製のコールドプレスジュース。そこにクセのある薬草系リキュール「アブサン」を合わせているそう。ドキドキしながら一口飲むと、口当たりはサラリと軽やかでフルーティー! ハーブのように爽やかな香りがふわりと広がり、アブサンとは思えないほど飲みやすくて驚きました。
ちなみに、ノンアルコールのカクテルは「モクテル」と呼ばれ、ただ単にお酒を抜いて作る……というものではありません。お酒を使わず、いかに香りや味わいを表現するかが腕の見せどころ。「Fake Bird」のモクテルはアブサンの代わりにキリッと辛口のジンジャーエールを使い、アルコールのボリューム感や刺激を表現しています。こちらもカクテルに負けないおいしさで、言われなければノンアルとは気付かないかもしれません。
次にいただいたカクテルは、和の趣を感じる「Four Seasons」(1,400円)。オーダーすると、まずは香ばしい玄米茶で抹茶を点て、そこに春夏秋冬を表した素材を組み合わせていきます。ベースは春を連想させる桜餅のようなフレーバーのズブロッカ(ウォッカ)。爽やかなパッションフルーツのリキッドで夏を、金木犀シロップの豊かな香りで秋を表現し、冬を感じるオレンジピールのジュースが全体を優しく包み込みます。
リキッドやシロップはお店で漬け込んでいるもので、ジュースも自家製。主張の強そうな素材たちを実に心地良くまとめているところに、安部さんのセンスとカクテルの妙味を感じます。
また、メニューに揃うのはカクテルとモクテルだけではありません。お酒に合うおつまみに加え、「バナナシェイク」(800円)や東京・神保町「グリッチ コーヒー&ロースターズ」の焙煎豆で淹れるスペシャルティコーヒー、ガトーショコラなどのカフェメニューも充実しています。
写真は自家製のアイスやシャーベットで作る「季節のパフェ」(1,400円)で、こちらは山田さんの担当です。この日登場したのは、ココナッツライムのクラフトアイスとリンゴのシャーベットを使ったパフェ。パッションフルーツのソースやサクサクのクランブル、滑らかな生クリームのエスプーマもおいしさの秘密です。もうすぐ秋のパフェが登場するそうなので、こちらもお楽しみに。
今回ご紹介したメニューはほんの一部。注文ごとに作るふわふわのコットンキャンディを添えた「Pop Star」(1,400円)や、蓋を開けるとまるでアサイーボウルのようなカクテル「Sunday Morning Cup」(1,500円)など、「Notime Mixology Bar」には、まだまだ気になるカクテルが盛りだくさん。「バーやカクテルに興味を持っていただく、その入口になれたら」と2人も笑顔で話します。
勇気を出して一歩踏み出せば、そこはめくるめくミクソロジーの世界。香り、味わい、プレゼンテーションにもワクワクが詰まった一杯に、きっと虜になるはずです。
Notime Mixology Bar(ノータイム ミクソロジーバー)
福岡市中央区渡辺通5-13-21 ムツキソウ 2F
営業時間/14:00〜翌1:00