千川といえば『Beach V』だ!バイきんぐや錦鯉などを輩出したお笑い劇場の、「芸人の墓場」からの大躍進とは
千川駅の近くに『Beach V(びーちぶ)』というお笑い劇場がある。この、収容人数50人程度の小さな劇場から、多くのスターが誕生していることを、ご存じだろうか?
劇場で技を極め、スターが生まれる
気づいたら、千川といえば『Beach V』になっていた。改めて説明すると、『Beach V』は、ソニー・ミュージックアーティスツ(Sony Music Artists、以下SMA)のお笑い部門の専用劇場。
『Beach V』を知らずとも、「キングオブコント2012」を制したバイきんぐ、「R-1ぐらんぷり2016」のハリウッドザコシショウ、翌年のアキラ100%、「M-1グランプリ2021」の錦鯉と、「お笑い三冠」のチャンピオンは知っているだろう。みんな『Beach V』出身、SMA芸人だ。元自衛官という異色の経歴を持つやす子、独自の世界観でコントを繰り広げる、や団も、SMA芸人。豪華。
SMAに、お笑い芸人プロジェクトが立ち上がったのは2004年のこと。立役者は、現在「第2マネジメント本部 制作2部 部長」という名刺を持つ平井精一さん。立ち上げ時は所属芸人を増やすことを優先し、年齢も芸歴も不問で募集。ベテランや移籍組も多く集まったので、「芸人の墓場」と揶揄(やゆ)(あるいは自虐)されたそうだ。
そして2007年、平井さんは、劇場『Beach V』を始動した。当時も今も、『Beach V』の最大の特徴は、「芸人の育成を目的に据えた劇場」だということだろう。
芸人は週1回のネタ見せのほか、芸人同士の品評会、「新ネタ」披露のライブなど、月に何度も『Beach V』に集い、現場で腕を磨く。ライバルと顔をあわせ、切磋琢磨を繰り返す。先輩後輩関係なしのダメ出しもしあう。SMA芸人は楽をしない。
ただ、見る方としては、劇場が興行を二の次としているためか、公演情報が分かりにくく、公式のチケットシステムもないので、芸人発信のSNSが頼みの綱。見たい! という強い気持ちをもって情報を探そう。基本的に平日は芸人が安く劇場を借りて独自のライブを開催し、土日が事務所主催のライブのようではある。
私は、第2土曜の「打倒NEET芸人ライブ」を見させてもらった。NEETという先輩芸人集団とHEETという若手芸人集団が、ネタとトークでバトルを繰り広げた。審査員はお客さん。つまり私。この日は7回戦までが行われ、カメラマンさんにひかれるくらいゲラゲラ笑ってから、NEETとHEET、いずれかに本気でマル印をつけていった。
SMA芸人の立役者!
平井精一さん。SMAのお笑い部門の立ち上げ&立役者。お笑い劇場といえば新宿、高円寺など中央線沿線のイメージだが、「千川でも、130~150人の芸人が通うことで、お客さまに認識してもらえるという自信があった」という。
メンバーが1人欠けたや団に、事務所ライブでラインキング最下位にいた現ロングサイズ伊藤を推薦したのも平井さん。「彼は恥ずかしそうにしない。すべっても堂々としていた。素質があった」。
Beach V(びーちぶ)
住所:東京都豊島区要町3-11-3 ラルジュ大映B1/アクセス:地下鉄有楽町線千川駅すぐ
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散歩の達人 2025年11月号
大特集は「池袋ルネサンス」。大塚や目白、副都心線、西武池袋線沿線まで池袋エリアを徹底取材。佐野史郎さん、金魚番長・古市勇介さんのスペシャルインタビューもお見逃しなく!特別付録「Beach V SMA芸人大集合カレンダー2026」付き。新連載「手塚理美のガチロケハン」もスタート!
取材・文=H岩美香(編集部) 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2025年11月号より