実用的な工夫やさりげない美意識を紹介する特別展「はたらく装いのフォークロア」が5月6日まで、大宮公園『埼玉県立歴史と民俗の博物館』で開催中
農耕や狩猟、漁撈(ぎょろう)などに励んできた日本人。その際に身に着けた衣服や用具から、働くための実用的な工夫やさりげない美意識を垣間見る「はたらく装いのフォークロア」が2025年5月6日(火・休)まで、埼玉県さいたま市の『埼玉県立歴史と民俗の博物館』で開催されている。TOP画像=「麦刈り」 撮影:羽生市内 『埼玉県立歴史と民俗の博物館』蔵。
各地に伝えられてきたフォークロア(民間伝承)の知恵に触れる
本展では、国の重要有形民俗文化財「北武蔵の農具」「秩父の山村生産用具」「房総半島の漁撈用具」「大森及び周辺地域の海苔生産用具」を中心に、約170点の関連資料が紹介される。
仕事着には動きやすく汚れにも強いことが求められるが、巨大な下駄や片方しかない手袋や紐のついた板状の皮など、見ただけでは使い方のわからない品々が並んでいる。装いを構成する衣類や用具から、人々がどのように働いてきたか思いをめぐらせながら眺めるのも楽しい。
また無地ではなく絣模様を施していたり、単調な刺し子ではなく模様に複雑さを加えたものであったりと、見た目に対する作り手や使用者のこだわりにも注目したい。継ぎ接(は)ぎ一枚充(あ)てるのにも、仕上がりが美しく見えるよう工夫された仕事着から、その美意識の高さにふれられ、日々の仕事や生活を楽しむ知恵を学べそうだ。
関連事業イベントも
4月12日(土)歴史民俗講座「はたらく装いのモノがたり」
4月12日(土)14時~15時30分、担当学芸員が特別展の見どころを掘り下げて紹介する歴史民俗講座「はたらく装いのモノがたり」が『埼玉県立歴史と民俗の博物館』講堂で開催。展示されている衣類や用具を通して、モノが語る暮らしの営みを読み取っていく。定員150名、無料。申し込みは埼玉県電子申請・届出サービスまたは電話(☎048-645-8171)にて。先着順。
4月26日(土)記念講演会「モノとしての衣、コトとしての衣 ―「房総半島の漁撈用具」を例として―」
4月26日(土)14時~15時30分、漁村文化や民俗文化財について造詣が深い成城大学文芸学部教授・民俗学研究所所長・小島孝夫氏を講師として迎え、仕事着についての講演「モノとしての衣、コトとしての衣 ―「房総半島の漁撈用具」を例として―」が『埼玉県立歴史と民俗の博物館』講堂で開催。衣類や漁具など形あるモノから技術や伝承など形のないことまで語られる。定員150名、無料。申し込みは埼玉県電子申請・届出サービスまたは往復はがきに「住所・参加者全員の氏名・電話番号」を記入のうえ、〒330-0803埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4-219 『埼玉県立歴史と民俗の博物館』展示担当『特別展講演会係』まで。4月8日(火)必着。※応募多数の場合は抽選。
開催概要
「はたらく装いのフォークロア」
開催期間:2025年3月15日(土)~5月6日(火・休)
開催時間:9:00~16:30(入館は~16:00)
休館日:月(3月24日・5月5日は開館)
会場:埼玉県立歴史と民俗の博物館(埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4-219)
アクセス:東武鉄道東武アーバンパークライン大宮公園駅から徒歩5分
入場料:一般600円、高校・大学生300円、中学生、障害者手帳をお持ちの方(介添え者1名)無料
【問い合わせ先】
埼玉県立歴史と民俗の博物館☏ 048-645-8171
公式HP https://saitama-rekimin.spec.ed.jp/tokubetsu_yosooi
取材・文=前田真紀 画像提供=埼玉県立歴史と民俗の博物館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。