槙田紗子&阿久津健太郎[対談]PASSPO☆からHey!Mommy!へーー時を超えて生まれた新たなメロディ「私と阿久津さんのストーリーにHey!Mommy!のストーリーが重なればいいなって思って」
元PASSPO☆で、現在は振付師、またHey!Mommy!のプロデューサーである槙田紗子と、PASSPO☆のサウンドプロデューサーを務めていた音楽家・阿久津健太郎の対談企画の後編。2人の関係の原点となったPASSPO☆時代を振り返った前編を経て、今回は、Hey!Mommy!と、阿久津が手がけた彼女たちの新曲「DIAMOND JET」について、2人にたっぷりと語り合ってもらった。同曲を初披露する本日11月28日(木)にSHIBUYA DIVEで開催する3周年記念ワンマンライブ<3rd Anniversary Live Hey!Mommy! SUPER JET!! とよすに超ぶーん>を目前に控え、2人が見つめるHey!Mommy!の現在と未来とは?
編集協力:竹内伸一
PASSPO☆で演出をしてもらっている時から、紗子はやっぱりセンスがよかった(阿久津)
――阿久津さんが、槙田さんがプロデューサーを務めるHey!Mommy!のライブを初めて観たのはいつですか?
槙田:
2周年の代官山UNiTでのライブ(2023年11月5日の<Hey!Mommy!2nd Anniversary Live HELLO!! Hey!! WORLD!!>)を観に来ていただきました。
阿久津:
その後、GOKI-GENsとのツーマン(2024年5月19日にSHIBUYA DIVEにて開催された<Hey!Mommy! SP定期公演 『School of IDOL Season 4』 〜ゴキゲンclass編〜>)も観に行きました。紗子が踊っているところを久しぶりに観たかったんですよ。
――Hey!Mommy!についてはどんな印象を持ちましたか?
阿久津:
めちゃくちゃ紗子節だなと(笑)。
槙田:
はははは(笑)。
阿久津:
振りの感じがめちゃくちゃ紗子っぽい。
――PASSPO☆を卒業してからHey!Mommy!に至るまでの間で、一緒に仕事をすることはあったんですか?
槙田:
パンダドラゴンっていう男性グループがあるんですけど、その楽曲を阿久津さんがほとんど書いていて。で、私も途中から振り付けを担当させていただくようになって。だから阿久津さんの曲の振り付けをすることが何回もあったし、最近は演出でも入らせてもらっているので、“こういう曲をお願いします”“こういう音をお願いします”っていうやり取りをさせてもらっています。パンダドラゴンでは、かなりお世話になっています(笑)。
阿久津:
その前に、紗子がPASSPO☆を卒業してから、サンミニっていうグループの演出や振り付けをやってもらっていたんですよ。PASSPO☆で演出をしてもらっている時から、やっぱりセンスがよかったので。
槙田:
PASSPO☆をやっていた最後の方は、ちょいちょいライブ演出とかもやらせてもらっていて、卒業したあとにサンミニをやるようになって、その時期でかなり練習させてもらったというか、自分はそこから始まった気がします。自分のグループ以外で振り付けをするのはサンミニが初めてだったし、それこそ衣装のこととかもちょっと口を出させていただいたり、ライブの演出もやらせてもらっていました。
阿久津:
演出まで全部やるっていうのはサンミニが初めてだったよね?
槙田:
そうです。サンミニも阿久津さんがほとんど曲を書いてくださっていたんですよね。でも、パンダドラゴンでまた一緒にやるまで、ちょっと空いていますよね。
阿久津:
そうだね。しばらく一緒にはやってなかった。
槙田:
パンダドラゴンのマネージャーさんから連絡が来た時に“実は阿久津さんに曲を書いてもらっているんです”って話になって、“それでこの曲の振り付けを槙田さんにお願いしたいんです”って言われたんですよ。そこで久しぶりに一緒にお仕事することになったんですよね。
――なんだか運命的ですね。
阿久津:
パンダドラゴンのマネージャーから“こういう曲を作りたいです”って言われて作った曲があるんですけど、“振り付けはこんな感じにしたいと思っているんですよ”って例に挙げた曲が、“あれ、これを振り付けてるの、紗子ですよ”って。
槙田:
私が振り付けした曲を、マネージャーさんが観てくださっていて。
阿久津:
でも、マネージャーは別に誰が振り付けしたのかは知らなかったんですよ。“こういう振り付けをパンダドラゴンにやらせてみたいんです”って言ってて。“これ、紗子だよ。じゃあ、連絡してみればいいじゃん”って(笑)。まあ、これがきっかけでまた会うようになった。
槙田:
ご飯に行かせていただいたりとか、もちろんパンダドラゴンの現場でもお会いするし。
阿久津:
PASSPO☆のメンバーについては、卒業したあとの活動ももちろん見守ってはいるんですよ。でも遠目で見ているというか……感覚的に言えば、例えば、実家を出た子どもって親にはなかなか頼らないじゃないですか。だから俺がメンバーから何かをお願いされることって絶対にないんだろうなって諦めの境地で見守っている感じなんですよ。だから、今回、Hey!Mommy!に曲を書いてほしいって話が来て、正直すごく嬉しかったですね。
槙田:
喜んでもらえたならよかったです!
阿久津:
ちょっと前にThe Ground Crewで久しぶりにライブ(2024年8月16日に渋谷eggmanにて開催された<The Ground CrewワンマンVol.9 〜Thank you for waiting〜>)をやったんです。「I」という曲があって、どうしてもそれを紗子に歌ってほしくて、俺、一生のお願いをしたんですよ(笑)。
槙田:
はははは(笑)。そうだ、“一生のお願い! ライブに出てくれない?”って言われた(笑)。
阿久津:
だから、それで“親”に頼みごとをするハードルが一気に下がったんじゃないかなとはちょっと思っています(笑)。みんな頼ってくれないかなって思いながら、でもみんな頼ってはくれないよなっていつも思っていて(笑)。
槙田:
確かにそうかも。私もHey!Mommy!を始める時に、最初に頭に浮かんだのは阿久津さんで、曲を書いてほしいなって思ったけど、タイミングってあるよなって思って。プロデューサーをやり始めたばかりの頃は、Hey!Mommy!というものを模索しながらやっていたから、その状態で、阿久津さんの力に頼るのは何か違う気がしたんですよね。で、そこからいろいろ経てようやくそのタイミングが来た。シンプルに今だったらお願いできるなって思ったんです。
今、阿久津さんの力を借りることで、新しいテイストがHey!Mommy!に生まれると思った(槙田)
――今がそのタイミングだというのは、どういう理由でそう感じたのでしょうか?
槙田:
3周年というのもあるし、阿久津さんに来ていただいた2周年のライブからの1年って、グループがけっこう変化した期間だと思っていて。もちろんまだまだなんですけど。でも、メンバーも私もHey!Mommy!を理解した1年だと思うんです。その上で阿久津さんの力を借りるのは、すごくいい意味で新しいテイストがHey!Mommy!に生まれるんじゃないかって思ったんですよね。
阿久津:
SNS上ではあるけど、頑張っているのを見てはいたので、“あ、やっと時が来たか”みたいな感じですよ。嬉しいです(笑)。
槙田:
ありがとうございます! 自分がアイドルの時にめちゃくちゃお世話になった方なので、私もお願いできて嬉しいです。ちょっと言うのが恥ずかしいですけど(照笑)、私、PASSPO☆の曲が本当に大好きだったんですよ。自分たちの曲に元気をもらうみたいな感じで活動させてもらっていて、それってすごくありがたいことだったと思っています。大好きな阿久津さんの曲を、自分が大人になって、自分が選んだ子たちに歌ってもらうというのは夢みたいなものなので、いつかは絶対にやりたいって思っていました。
阿久津:
“大人になって”か(しみじみ)。メンバーが20~21歳くらいの頃かな、恋愛系の歌詞を書くじゃないですか。そうすると“あっくん、女の気持ちわかってるじゃん!”なんて上から言ってくるんですよ(笑)。“いや、君たちはアイドルだし、20~21歳でなんでそんなに恋愛を上から語っているんだ”って思ったのを思い出しました(笑)。
槙田:
阿久津さんの歌詞は本当にすごくて、“なんでこんなこと考えてるの!?”っていつも思っていました。しかも、抽象的な歌詞じゃなくて、すごく具体的なんですよ。なんでこの言葉が出てくるのか、みんなで議論したりもしていました(笑)。歌詞が届いては議論して、“ここ、やばくない!?”みたいな(笑)。
阿久津:
基本的には体験談ですね。自分が言われたことを、逆の立場で歌詞にしたというか。
槙田:
感性が豊かだから、自分が言われたことを相手の立場から歌詞にできちゃうんだ。すごい!PASSPO☆を知らない方はぜひ「Wish on a star」を聴いてください。天才的な歌詞が詰まっているので。女子はぜひ聴いてください!
――いい関係だったんですね。
阿久津:
本当にそう思います。メンバーとは今でもご飯に行ったりしますからね。そんなのPASSPO☆くらいだし。自分も事務所を辞めたりして、作家としてゼロからのスタートみたいな気持ちでPASSPO☆を始めたので、プロデューサーという感覚ではなくて、“同志”みたいな感覚なんですよね。年齢は自分の方がもちろん上ですけど、気持ち的には“同志”。
槙田:
嬉しい!
――今回、阿久津さんにはどんなオーダーを出したのですか?
槙田:
基本的にはお任せで、もう阿久津さん節でお願いしますと。これは本当にたまたまだったりするんですけど、Hey!Mommy!は来年1月18日(土)の豊洲PITに向かって、定期的にワンマンライブをやっているんですけど、そのタイトルが<Hey!Mommy! JET!! ~とよすにぶーん~>っていうんですよ。飛行機みたいに勢いよくブーンって飛んでいくよっていうコンセプトで、ワンマンを開催していて。PASSPO☆もキャビンアテンダントがコンセプトだったっていうのもあるので、ちょっとPASSPO☆感、ジェット感、飛行機感みたいなところは出したいとは思っていました。それが私と阿久津さんのストーリーでもあるし、そこにHey!Mommy!のストーリーが重なればいいなって思って、そんな感じでお伝えしました。
阿久津:
かと言って、まんまPASSPO☆みたいな曲を作っても違うと思ったので、やっぱり3周年の記念で歌う曲だからその道のりとかを描いた方がいいのかなって最初にお話をいただいた時には思ったんですよ。でも、その道のりを俺が書いてもちょっと嘘くさいし、なんかしっくりこなかったんですよね。最初はそれで書いてみたんですけど、やっぱりこれからのことだけを歌う曲にしたいなって思った。そうすることで紗子がデビューした時と重なる部分があるんじゃないかなって。世界観というか、歌詞の雰囲気は重なるんじゃないかと思います。
――サウンド面はどんな感じですか?
阿久津:
“っぽく”って言われたんで、普通に書いたら当然自分っぽくなりますよね(笑)。
――では、ギターロックという感じですか?
阿久津:
そうですね。
槙田:
爽やかな感じです。
――そういう楽曲を槙田さんではなくて、槙田さんが選んだメンバーのHey!Mommy!が歌うというところに意味がある気がします。
槙田:
そうですね。自分を投影しているみたいな感じはします。この曲に関しては、自分の個人的な感情がちょっと入っているかもしれない。ほかの曲は自分がどうこうというよりもHey!Mommy!としてどうなのかを考えるんですけど。自分の気持ちを投影しちゃったというか、もう“歌ってくれ!”みたいな感じで作った曲は初めてかもしれないです。
――Hey!Mommy!には意外とないタイプの曲になった?
槙田:
ないですね。ギターサウンドの曲はこれまでにもあるんですけど、さらにアップテンポでちょっと幼い感じというか。あとはもうゴリゴリのダンス系になるので、本当に今回の曲みたいなのはないですね。でも、Hey!Mommy!が歌っているイメージがめっちゃ湧いたんですよ。
阿久津:
ライブを観せていただいたからだと思うんですが、ロックテイストというよりは、もう少しダンス感がある曲になりました。
槙田:
当然そこはHey!Mommy!に当てて書いていただいているので、初めてと言えば初めてですけど、“こんな感じなの!?”みたいなわけではないですよね。新しい色がついたっていう感じかな。たぶん、Hey!Mommy!をずっと観てくれている方は、そう思ってくれるんじゃないかと思っています。
ホント、アイドル全員頑張って売れてほしい……どのグループを観ていてもそう思う
――Hey!Mommy!の新しい魅力を引き出してくれるような楽曲になっているんですね。
槙田:
そうだと思います。振り付けはこれからなんですけど(取材は11月中旬)。でも、やっぱり音にはめっちゃ左右されるので、たぶん、これまでとはまた違う感じになると思います。レコーディングもこれからなので、メンバーの歌っている声でこの曲を聴くのが、めっちゃ楽しみです。ライブで歌っている姿はイメージできたんですけど、声の感じとか、このメロディをどういうふうに歌うのかっていうのは、想像できなくて。だからすごく楽しみ。
阿久津:
自分も楽しみですよ。
槙田:
蚊みたいな声で歌うメンバーはいないので、大丈夫ですよ(笑)。
阿久津:
いやそれはね、ライブを観ててわかるよ。PASSPO☆の初期に比べたらクオリティが全然高い。
槙田:
ホントにそうだと思いますよ。PASSPO☆はメジャーデビューしてガラッと変わったというか、インディーズ時代は本当に素人集団だったし。
阿久津:
周りのグループもそんな感じだったしね。最近たまたま女性グループと関わる機会があって、久しぶりにフェスに行ったんですよ。もうみんなレベルが高くて。楽曲も自分がPASSPO☆を始めた頃に比べると、全体的にすごくレベルアップしていると思うし。ただ、当時はフロアの熱量みたいなものは、むちゃむちゃありましたけどね。“アイドル戦国時代”と呼ばれる新しい時代が始まるワクワク感が、お客さんにもあったと思う。今はグループの数も増えているから、大変だろうなっていうのは感じました。
槙田:
確かに、対バンの時の気合いとかやばかったですから(笑)。もうホントにほかのグループはライバルだと思っていました。今はみんなで仲よくやっていきましょう、協力して盛り上げていきましょうっていう雰囲気がありますけど、私たちは完全に食ってやろうと思っていました(笑)。もう、ほとんどケンカですよ。対バンの時なんて、公園に決闘しに行く前みたいな雰囲気でしたね。そんなケンカ、経験したことないですけど(笑)。
阿久津:
ステージ裏はみんな仲がいいんですよ。写真撮り合ったりももちろんしていたし。でも、やっぱりステージに関してはライバルっていう気持ちをみんな持っていたと思いますね。ほかのグループにもそういう雰囲気がありましたから。
槙田:
だからスポーツ選手と一緒ですよ。スポーツだったら試合の前に対戦相手の傾向とか研究するじゃないですか。“この選手は右ストレートが強いから、こう対応しよう”とか。そんな感じで“今回はこの順番だから、こういうお客さんが多いはず。それに合わせてこういう内容にしよう”とか、そんなことを考えていましたね。本気で勝ちたいって思っていましたからね。
阿久津:
今の子もそういう気持ちはあると思うんですけど、敵がめちゃ多いからね。
槙田:
敵が多すぎて、どうしたらいいのかわからないっていうのはあるかもしれない。
阿久津:
はっきりとしたライバルを見つけるのって、今は大変なんじゃないかな。
槙田:
確かに、こことここはライバルだなっていうグループはいないかもしれないですね。昔はファン同士のライバル心も強かった気がするし。
阿久津:
今みたいにSNSでアピールするとか、TikTokでアピールするとかっていうのもなかったので、本当にステージだけが勝負する場所っていう感覚だったしね。
――Hey!Mommy!を観ていると、ステージにかける想いの強さは感じます。
阿久津:
それは俺もライブを観た時に思いました。今の人気がどうこうに関わらず、やっぱりクオリティの高いダンスでやりたいっていう紗子のこだわりが見えました。
槙田:
嬉しい! 確かに、ちゃんとライブをやっているというか、メンバーはライブをなめていないと思いますね。
――今回の新曲初披露のライブは、期待が高まりますね。
槙田:
楽しみにしていてほしいです。くり返しになってしまいますけど、PASSPO☆の後半の頃は、もうアイドルをプロデュースしたいみたいなことは言っていたんですよ。実際にそれを今やっていて、自分のアイドル時代を支えてくれた阿久津さんにお願いできるタイミングを見計らっていた感じだったんですよね。ようやくそのタイミングが来たっていうのが、自分としてはすごく嬉しいです。これまでのストーリーがあるので、今度はメンバーにちゃんと形にしてもらって、Hey!Mommy!を応援してくれている人にとっても、意味のあるものにしたいです。阿久津さんに書いていただいた曲が愛される曲になってほしいし、自分を応援してくれている人やPASSPO☆を観てくれていた人にも届く楽曲になったら、それ以上嬉しいことはないなって思うので、なんとか広げられるように頑張ります。というか、Hey!Mommy!、頑張れ!(笑)
――メンバーも槙田さんの想いを汲み取って頑張ってくれると思います。
槙田:
Hey!Mommy!、よろしく頼んだ!(笑)
阿久津:
事務所を辞めてフリーになってからは、自分がのし上がりたいみたいな、自分に対しての欲はなくなったんです。それで、アイドルの子たちが頑張っているのを見ると、自分のなくなった部分を埋めてくれるみたいな感覚になるんですよね。自分ではステージでもう歌えないけど、自分の作品を歌ってくれているのを観るとすごく嬉しいんですよ。ホント、アイドル全員頑張って売れてほしい……どのグループを観ていてもそう思うんですよね。Hey!Mommy!も頑張ってほしいなって心から思います。
槙田:
じゃあ結論はHey!Mommy!頑張れってことだ(笑)。
阿久津:
SNS上で見ているだけですけど、紗子とメンバーがいい関係なのは伝わるし、未来に対して希望を持ってやっているのが伝わってくるので、そういうところが、今回の曲に反映されていると俺は思っています。だから、そこが伝わればいいですね。
【インフォメーション】 Hey!Mommy!3周年記念ワンマンライブ<3rd Anniversary Live Hey!Mommy! SUPER JET!! とよすに超ぶーん>
日時:11月28日(木)開場18:00/開演19:00
会場:SHIBUYA DIVE
料金:各チケット + 1ドリンク
◾️チケット券種
[前売]
・自治会(ファンクラブ)前方チケット ¥3,000
・前方チケット ¥3,000
・一般チケット ¥1,000
[当日]
・一般チケット ¥2,000
※12歳未満無料(保護者同伴)
ご本人さまの身分証のご提示をいただく場合がございます。