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「合わない」と気づけるのは、お互い“らしさ”を知っているから。arca・辻愛沙子が考えるプラスの別れ

求人ボックスジャーナル

「合わない」と気づけるのは、お互い“らしさ”を知っているから。arca・辻愛沙子が考えるプラスの別れ【求人ボックスジャーナル】はたらき方やキャリアを考える機会を創出するメディア

「社会課題をクリエイティブで解決する」の信念で、広告や商品プロデュースなどを通して挑戦的なプロジェクトを展開する株式会社arca(アルカ)。代表取締役である辻愛沙子さんに、人間ならば誰しもが感じる「この人と合わないな」という感覚についての考え方を伺いました。辻さんから返ってきたのは「合わないって、素敵なことかもしれませんよね」というヒントでした――。

居場所になれる会社を作っているのは、そこにいるメンバーたち

Q. 会社を経営する立場である辻さんは、「会社に居場所を持つこと」についてどう考えていますか?

まず、所属している皆さんが職場に求めるものの優先順位が千差万別だなと思うんです。給料をもらえることが主軸の人もいれば、自分らしさを大事に働ける場所を求める人もいる。反対に負荷をかけてでも新しい自分をみつけたい人もいる。年齢やキャリア、人生のフェーズによっても変わりますよね。それぞれの求めるものを職場を通じて得るなかで、会社が居場所になったり、そうでない場所が居場所になったりする。必ずしも居場所的な要素が職場に必要である、ということではなく、それぞれが 「自分が会社に求めるものってなんだろう?」と自分に問いかけてみて、その答えが正解なんだと思います 。

株式会社arcaの場合は、「どうせ仕事をするなら、少しでも社会がよりよくなることに自分の時間やリソースを使いたい」と考える人や「プライベートだけでなく職場でも自分らしさを大事にしたい」と思っているにとってひとつの居場所になっていると感じます。メンバーにとっては、「今自分がやっていることは、誰かの痛みに寄りそうためのものである」という実感や「この職場では、ルーツやセクシュアリティ、ファッションや髪色まで、自分らしさを隠さずありのままでいられる」という安心感がきっと大切で、それを実感してもらえる場所だと私自身も思っています。

小さい会社なので、一人ひとりに対して居場所としてのベストを提供できるわけではないし、どうしてもリソースが限られるぶん組織として個々の最大公約数になってしまうところはゼロとはいえません。でも、「これがモヤモヤした」とか「これがすごく素敵だった」とか、そんな開示や共有ができやすい場所ではありたい。私だけではなくて、所属している全員が考えていると思います。そうやって主体的にチームや会社、自分と向き合える人たちの居場所であることを、全員がとても意識しています。会社という居場所の形を作るのは経営者かもしれないけれど、価値観や文化という会社の“中身”を作ってくれているのはメンバー一人ひとりだと実感しています。

私個人にとってarcaという場所は、戦うためのエネルギーを養える、安心できるホームのような居場所です。社会課題と向き合っていると、心が痛くなるようなトピックに直面したり、自分の意志をしっかり持って戦わなければいけなかったりする場面が時折あります。そんな場面からarcaに戻ってきたとき、背中を預け合いながらお互いを尊重し合い支えあえる場所のありがたみや暖かさを強く感じます。人を傷つける言葉を選ばない人たち、信じられる人たちがちゃんとここにいると思うと安心できるんですよね。社会のすべてを変えていけなくても、関わる人にとってarcaという場所があること自体が希望になる、そんな会社にしていきたい。もちろん、メンバーみんなと一緒に。

「合わない」と気づく瞬間は、自分らしさを大切にする合図

Q. さまざまなコミュニティに属する辻さん。合わない場所や合わない人に出会ったときはどうしますか?

合わないと感じることは必ずしも悪いことではない と思っています。自分のことも相手のこともよく理解しているからこそ生まれる感情じゃないかな。 合わないということがわかった時点で、それぞれが自分らしさを大切にして、無理に何かを曲げずに進んでいける可能性がある と考えています。

合わないと感じたら、理由を自問して自分の感覚をみつめてみる。その結果、お互いにハッピーにならないなと判断したら、それ以上無理に踏み込まないように距離をとります。「私はこういうことを大切にして、こういう人付き合いをします」とはっきり示すことも時には重要。自分のスタンスを開示していれば、相手もそれを踏まえた距離をとってくれることが多いので。合わない相手=よくない相手ではなく、ただの組み合わせや相性から見えた“違い”がそこにあるだけのこと。良し悪しとは別に考えて、お互いに「そういう価値観もあるんだな」と、拒否することなく適切な距離をとれたらと思っています。

互いの自分らしさを大切にするために離れる。その選択はお互いにとってプラスになると思います。自分が求めていることを解像度高く知っていれば、それぞれに合う人も合う場所もきっと存在する。だから目の前の人や環境が自分に合わないからといって後ろめたく思う必要も攻撃し合う必要もなく、次に進むのがいいんじゃないかな。違う場所に行ってみたら見えてくるものもあると思います。

私も日本の学校にいたころより、海外の学校に飛び出してからのほうが息がしやすいことに気づきましたし、違う環境に触れて「私ってこういうところがあったんだ」という気づきがたくさんありました。でも逆に、日本の学校にいたからこそ、その気づきを得られたという側面もある。いずれも自分を知るために必要なフェーズだったんだなと思っています。

そうやってアップデートされた自分になった後、また元の環境に戻ったっていい。arcaにも、一度離れてから、外部の新しいカルチャーを吸収して進化して戻ってきてくれたメンバーがいます。経営する身としても、一緒に働く身としても本当にうれしい!もうね、「おかえりー!」って感じです。合わないと思う今の自分を大切にすることが一番だけど、今後アップデートされて変化する自分もいるかもしれないから、私はこう!ここが合う、合わないと決めつけすぎず、いつでも軌道修正できると気楽に構えられたら素敵だと思います。

人生はいつだって軌道修正できる。選択肢はどこまでも自由に

Q. 30歳という節目を前にして、今思うことはありますか?

選んだ道と選んでいない道の先が見えてくるというか、少し難しい歳ではあるなと感じています。でも、いつだって軌道修正できるんじゃないかと最近思えてきました。大人になってから学びなおしをする人や海外に飛び出す人、いろいろな挑戦をする人が自分よりも年上の方々にはいて、 選択肢は山ほどあって自由 なんだと感じています。周囲で結婚や出産を選ぶ人が増えてきて幸せそうだなと思うと同時に、 その道を選んでいない今の自分もいいなと思う 。

「可能性があるか?」と言われたら、すべてのことは「YES」だし、意外と一つひとつの選択を重く考えずに、一度足を突っ込んでみるのもいいかもしれない。「逆算して計画的に」とか、「老後のために準備を」とか言われるし、先のことやまだ選択していない道について考え始めると止まらなくて不安になりがちですが、 結局本当に大切なことはやってみないとわからないことのほうが多いと思う 。勉強や読書が好きなので普段は考えることが楽しくて公私の時間問わずずっと何か問いを立てて考えているようなタイプですが、こと 自分の将来や未来の可能性だけはあえて考えすぎないようにして直感や偶発性に身を委ねたいなと思う 今日この頃です。

軸足はそのままでいい。少しだけ、新しいものに手を伸ばしてみて

Q. 最後に、自分らしい居場所で人生を歩みたいと願う20代・30代にむけて、メッセージをお願いします。

打算なく何かにすごく夢中になれる時間は、自分の基礎代謝を上げてくれるかけがえのないもの だったなと20代を振り返って思います。私の場合、20代前半はとにかく仕事。与えられた打席には必ず立って全力でやってみようと夢中でした。自分が何をどこまでやれるのか、何が苦手で何が得意なのかを知るために、とにかく全力で期待されたことに答えていく日々。基礎体力、基礎代謝のようなものがここで身についたように思います。

20代後半になってからは、期待に答えるだけではなく、求められていない領域に自分から挑戦していくことを意識していたように思います。できること、やれたことの積み重ねが評価に繋がり次の期待やチャンスに繋がる、というキャリアの重ね方ももちろん大事です。しかし、求められたことに答えていくだけではまるで外部からの期待ありきで道ができていくようで、自分の意思で進みたい方向に舵を切れないと思ったんです。まだまだチャレンジャーである年齢だからこそ、リソースの10%でもいいからまったく違う挑戦をしてみることも大切にしていて、そこで得たものが今の私を作ってくれているとも思います。軸足はそのまま踏ん張りながら、新しい領域に触れてみたり、企画や事業を考えてみたりしています。

居場所や軸足がある安心感を持ったまま、少し環境を変えてみるのっておすすめです。息抜きでもいい、別業界の求人を見てみるのもいい。私は何歳になっても新しい挑戦を恐れない人生でありたいと考えていますが、一方で積み重ねてきたものが時にハードルになることは出てくるかもしれません。身体の変化や家庭の事情、人によってタイミングも内容もきっとさまざまです。そういうハードルが比較的少ないうちにできる限り新しいものに触れたり飛び込んだりする機会を持ってみて欲しいなと思います。

ほんの少しでも いつものルーティンじゃない新しい刺激を取り入れると 、いつもの日々にもいい影響があったり、最初は新しいと思っていたことが、いつの間にか自分にとってなくてはならない道に育っていたりする。そうやって自分の可能性を広げ続けていくうちに、自分ならではのキャリアというものが見えてくるのではないかなと思います。 自分に正直に、自分を飽きさせずに、そしてなにより自分を大切に、一緒に進んでいきましょう 。

プロフィール

辻 愛沙子(つじ あさこ)

株式会社arca CEO / Creative Director 社会派クリエイティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の二つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。リアルイベント、商品企画、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手がける。2019年春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。2019年秋より2024年3月まで、報道番組「news zero」にて水曜パートナーをレギュラーで務める。多方面にわたって、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。

取材・文:山口真央
撮影:fort 岩田慶
編集:求人ボックスジャーナル編集部

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