【特集】アルビレックス新潟マーケティング部、関優介さん「企業内実習を経て憧れの会社へ」 開志専門職大学1期生を追う
関優介さんは新潟県南魚沼市出身。県立長岡向陵高等学校、開志専門職大学事業創造学部卒業。現在は株式会社アルビレックス新潟のマーケティング部に所属し、メールマガジンの配信などに携わる
初回掲載:2024年8月23日(最終更新日:2024年9月7日)
「スタジアムに来てくださったお客様の表情が好きで……それがやりがいですね。街中をこんなニコニコ、ワクワクとしながら歩くことなんて、ないじゃないですか」──8月7日、ホーム戦を控えたデンカビッグスワンスタジアムの人混みの中を歩きながら、株式会社アルビレックス新潟のスタッフ、関優介さんは自身も笑顔を浮かべながらそう話した。
関さんは昨2023年度、開志専門職大学(新潟市中央区)を卒業したばかりの新入社員。同大学は2020年開学で、関さんは1期生にあたる。同大学の事業創造学部は企業内実習を目玉の一つとするが、関さんも2年時にアルビレックス新潟へインターンし、その後の進路を固めたという。
「自分で何かを作りあげたい」一度サッカーを離れ開学直前の大学へ
関さんの主な業務はメールマガジンや公式LINEの発信など。毎週部内ミーティングで改善点などを話し合っているという
関さんはアルビレックス新潟ファンだった両親の影響で、自身も小学1年生からサッカーを始めた。「もちろんプロの選手になりたい、という夢もありました。ただ挫折もあって、プレイヤーとしてのサッカーは高校3年生までと決めていたんです」。その後の進路については、「正直、当時は自分のやりたいことが明確ではありませんでした。でも、自分で何かを作りあげたいという思いは強かった」と振り返る。
そうした中で進学したのが、開志専門職大学だった。立地は鳥屋野潟のたもとで、親しんだビッグスワンスタジアムにも近い。一方、同大学は開学直前で、当時まだ評価も実績もない時期。しかし、実務家教員(企業や官公庁での経験を持つ教員)や600時間以上の企業内実習を通じた「実践的な学び」を当初から標榜していた。「ここなら自分が思ったことを形にできるんじゃないか、と考えて進学しました」(関さん)という。
大学生活で一番の思い出は、やはり企業内実習。「1年間のうち3分の1は企業へ実習へ出ていて、4年間で6社ほどお世話になりました」(同)。その実習先の中に憧れていたアルビレックス新潟もあったが、関さんは「実は……」と裏話を打ち明ける。
「大学1年生の時、アルビレックス新潟へ電話で『インターンとかやってませんか?』って電話したんですよ、個人的に。そこで『まずは学校を通して進めてみよう』という話になって、そこから先生方に動いていただき、実習へ行くことができたんです」。
インターンで学んだアプローチ
アルビレックス新潟の風間一理事業本部長(写真左)と関さん(写真右)
アルビレックス新潟での実習期間は3カ月。週に2日、職場へ赴いた。当時の様子を、同社の風間一理事業本部長はこう振り返る。「学校の単位となるようなことなので、正直大変でした。ただ、こうして学生に仕事を教えることは新鮮で、自分自身のためにもなったと思います」。
当時のインターンでは、現在の関さんの仕事と同じく個人向けの広報やマーケティングの業務が主。一方で、会社の収益構造や課題の解決などの意識も育てた。「大学からは『(学生が)アウトプットまでできるようにしてほしい』と要望があった。そのためにまずはインプットをしっかりしなければと思い、私達の事業がどういうふうにできているのか、という部分から説明を始めました。そこから課題を見つけ、それに対してどういう方策でアプローチするのか、というのを学生自身に考えてもらいました」(風間本部長)。
関さんは「今回はスタジアムにどのくらい人が入ったのか、それぞれのお客様がどういう特性をもっていて、何回目の来場なのか……など、細かく調べて課題を考えるのは、難しくもあり楽しい作業でした。そこから、お客様にもう一回、二回と来ていただくために何ができるのかを考える。今の業務も、基本的なところは変わりません」と話す。
インターンが学生を自発的にしていく
開志専門職大学の向正道教授
憧れの職場を体験した関さんは「インターンで改めて、この仕事につきたいと思った」という。4年生から再びアルバイトとしてアルビレックス新潟で働き始め、その後正式に就職し、夢を叶えた。
「とにかく想いの強い学生でしたね。課題をやってきたか聞くと、メモが大量に出てくるんですよ」、1年時から関さんを知り、4年時にはゼミを担当した開志専門職大学の向正道教授は振り返る。「(メモには)どうしたらもっと集客できるのかとか、新潟の人口はこれぐらいだからこうしたほうがいいとか……自分で考えをまとめてきていました。特に4年生の頃は、アルバイトもしているから実感も籠もっていて。当時アルバイトが終わると、そのまま私のところへ報告に来ていましたよ」。
関さんに限らず、インターンは単に実務の内容を知る以上の効果があると向教授は話す。「(学生は)最初はその会社に興味がなくても、会社の課題を知ったり商品開発に携わったりすると、徐々に『自分事化』していくようになります。自分事になると楽しくなってきて、(他の授業や学習も)自分で調べたり行動するようになっていくんです。そういうところが開志専門職大学の一番の強みですね。基本的に学生の企業体験は会社に入ってからですが、当校は1年生のうちから。その点に対する学生の満足度は高いと思います」。
スポーツという文化づくりを担う次世代に
入社からまだ半年足らず、「毎日が忙しい」と関さんは苦笑い。配信内容の閲覧数などから顧客が求める情報を分析し、次回の発信の改善につなげるのも仕事の一つだ。「このニュースはクリックされたとか、分析には大学で学んだことも駆使しながら、トライアンドエラーでやっています」(関さん)。そんな彼を風間本部長は「積極的に『こういうことがしたい』と発言してくれるタイプだ」と評価する。
「Jリーグが2023年に30周年を迎えましたが、欧州のリーグは100年、150年と続いています。そういった形でサッカー文化を地域に浸透させていくのが、弊社の企業理念の一つです。文化というものは数十年で出来上がるものではないので、私達も次の世代へ受け継ぎ、よりよいものへ昇華していってほしい。関さんは、次の世代の中心的な存在になってくれると思っています」(風間本部長)。
試合前のイベントブースを見回る関優介さん
ビッグスワンスタジアムで試合がある際は、観客の様子を見ることも仕事の一つだ
「小さい頃から、試合でスタジアムの席が埋まっている様子を見ると心が動かされます。そこに自分が貢献できていると思うと、やりがいを感じますね」と関さん。
しかし課題もある。サポーターが熱いことで知られるアルビレックス新潟だが、実際に足を運んだことはない県民や、一度しか来たことのない人も多い。また、試合や勝敗に限らず、スポーツとの接点やスタジアムに足を運ぶ「文化」の醸成も重要だ。発信に携わる関さんの、これからの成長と活躍が期待される。
「満員のスタジアムをつくっていきたい」──大学の記念すべき1期生は、新たな舞台に立ってそう力を込めた。
(文・撮影 鈴木琢真)
【学校情報】
開志専門職大学 紫竹山キャンパス(写真提供:開志専門職大学)
学校法人 新潟総合学院 開志専門職大学
本部:新潟市中央区紫竹山6-3-5
開志専門職大学 webサイト
2020年4月に新潟県初の専門職大学として開学。事業創造学部、情報学部、アニメ・マンガ学部の3学部を有する。2024年3月に事業創造学部と情報学部の1期生が卒業し社会へ飛び立った。
【関連リンク】
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