二宮町 被災地との「きずな」続く 本の寄贈8800冊以上
2011年の東日本大震災をきっかけに、当時の二宮町の教育委員らが中心となって県内に働きかけ、被災地への本の寄付活動を行った「神奈川きずなブック」の活動が13年目を迎えている。
当時小学1年生だった子どもたちが二十歳となる節目を迎え、発起人として活動を続けてきた武井健一さんは「今思うと、子どもたちを励ましているつもりで、励まされていたのはこちらの方だったかもしれない。お金も伝手もない中、縁あって活動が続けられたことに感謝する」と振り返る。
震災発生時、気仙沼の水産業に勤務していた娘の安否が2週間ほど取れなくなったという武井さん。火災が発生し、燃え盛る気仙沼の様子を映したテレビ中継を観て、「もしかしたらダメかもしれない」という思いもよぎったという。
3月26日、友人の家に身を寄せていた娘と連絡が取れ、自家用車で迎えに行った。震災直後の町の様子を目の当たりにし、「自分に何ができるのか」と自問自答の末、「復興を見届けよう」という思いが浮かんだ。
当時、教育委員長を務めていたこともあり、「子どもたちが一時でも恐怖を忘れられるものを贈ろう」と本を送ることを決意。県内の教育委員にも声をかけ、賛同した行政や団体と共に有志で被災地の子どもたちが希望する本を届けてきた。これまでに届けた冊数は238カ所、8800冊を超える。武井さんは「災害が頻発する中、『ほっとけない』という気持ちを大切にしたい」と話していた。