佐渡島の海と山に育まれた郷土料理。食文化を守り伝える野口さん。
佐渡の郷土料理といえば、思い浮かぶのは「煮しめ」や「いごねり」。もちろん同じ佐渡島内でも地域ごとに伝わる料理が違うのですが、海寄りの家か山寄りの家かによっても、家庭で食べられる料理に違いがあるんだそう。佐渡市健康推進協議会で赤泊地区の支部長を務める野口さんに、佐渡の郷土料理についてお話を聞いてきました。
佐渡市健康推進協議会
野口 涼子 Ryouko Noguchi
1963年佐渡市生まれ。佐渡市健康推進協議会、赤泊支部長。普段は登録ヘルパーとして仕事をしている。佐渡の郷土料理の中では赤飯が好き。
――佐渡の代表的な郷土料理というと、どんなものがあるんでしょう?
野口さん:やっぱり「煮しめ」とかですかね。お祭りのご馳走というと煮しめや海苔巻き、赤飯が出てきたりします。
――「いごねり」も有名ですよね。
野口さん:地域にもよるんだけど、私の家は山に入った方にあるので、海藻とか海のものはそんなに食卓に出なかったんです。海の近くに住んでいる人は、自分で海藻を採って練って、家で食べたりするんだと思います。おばあちゃんとかは畑で作った野菜を、浜の方に住む知り合いのところに野菜を持って行って、お返しにお魚とか、海のものを貰っていましたね。
――なるほど。山側に住んでいるか海側に住んでいるかによっても食文化が違うわけですね。
野口さん:私のお婿さんは海岸寄りに住んでいた人で、小さい頃は家の窓から釣りをしていたそうです。私のところではそういうことはなかったですね。
――野口さんは佐渡の郷土料理をまとめた本の編集にも携わったそうですね。
野口さん:「さどごはん」という、健康推進協議会で作った本があるんです。「このばあちゃんが亡くなったら、この料理もなくなるぞ」っていうものを引っ張り出してきて。何年も前に作ったものなんですが、完成まで6年ぐらいかかりました(笑)
――けっこうボリュームのある本ですもんね。
野口さん:誰でも佐渡のごはんが作れるような本にしましょうと言うたんですが、島のおばあちゃんに作り方を聞いてみても、レシピとか分量とか「だいたいこれくらい」なんですよ(笑)。そういう料理もこの本では、カップ何杯で大さじ何杯でってところまで記載しています。
――人から人へ伝わって続いてきた郷土料理だからこそ、島の人口が減ると、伝わらない料理も出てきてしまいますよね。
野口さん:昔はお葬式も家でやっていたので、お葬式用の料理っていうものがあったんですよ。亡くなった方がいる家の集落のおばちゃんたちが集まって、買い出しから何からして、参列する人たちのための大量のお料理を作っていたんです。
――へ〜、じゃあお葬式が決まると大忙しだったわけですね。
野口さん:今だと葬式は葬儀屋でやるから、そういうことはなくなりましたね。代々料理上手のおばちゃんたちがいて、普段家で作るような料理の量ではないから、あれこれ指示してくれるんです。昔はそういう行事で料理が伝わっていっていたんだそうです。
――そういう昔ながらの行事が、食文化をつなぐ場にもなっていたわけですね。最後に、野口さんが思う佐渡の魅力ってどんなところでしょう?
野口さん:海のものも山のものもあって、食べものが美味しいところでしょうか。ずっと住んでいると分からないものですけどね(笑)