<中受はママ任せ!?>難関塾に通わせたい夫と攻防!いや、赤ちゃん連れて送迎ムリッ【まんが】
最近の話です。私(リカ)は、3人の子ども(小2の息子タイチ、年中の娘ユキカ、生後5ヶ月の息子マサジ)と夫の5人暮らし。私たち家族は都内に住んでいて、夫は小2のタイチを「中学受験させよう!」と息巻いています。一方の私は現在育休中。中学受験を必須とは思っておらず、まだ先のことなのでじっくり検討しようと思っていました。
タイチはまだ小2です。上の子がいるママ友からは「中学受験の塾に入ったのは小3の2月からだったよ」と聞いていました。
夫が見せてきたのは、難関校に特化した塾のパンフレットでした。合格実績には有名な名門中学の名前がずらりと並んでいます。
夫の話は理解できます。でも難関校に行けるのなんてほんの一握り。うちのタイチがいきなりトップ狙いの塾へ通うのは現実味がないと思いました。
スイミングスクールになかなか慣れなかったタイチも、少しずつ友だちができ、いまは仲よしの子がたくさんいて楽しそうに通っています。級も順調に上がっているので、ある程度区切りがつくまでは通わせてあげたいのです。しかし夫は……。
夫が探してきた塾は、大きなターミナル駅のすぐ駅前にあります。人やバスの行き来が多いため、車で送迎するのは現実的ではありません。下には年中の娘と、まだ生後5ヶ月の赤ちゃんもいます。私に子ども3人を連れて、毎回電車で送迎しろということ? そう夫に言うと……。
夫は簡単に言うけれど、私にとっては大きな負担です。今通っているスイミングスクールは送迎バスが家のすぐそばまで来てくれるし、サッカーは車で10分の場所。送迎の負担も考えて選んでいるのです。しかし夫は一歩もひきません。
「タイチの将来のためなんだよ。それぐらいやってやれよ」「中学受験の塾なら、もっと近くにいくつかあるじゃない。ほかじゃダメなの?」
すんなり賛成しない私の様子が気にいらなかったのか、夫は強めに言い返してきました。
タイチに少しでもいい環境を整えてあげるため、ハイレベルな塾に早めに入れたい夫。一方で小2の今から塾に行かせることに疑問をもっている私。お互いの意見はかみ合わないまま平行線です。子どもの受験を機に夫婦仲が悪くなる話を何度か耳にしたことがありますが……。こうやって少しずつ夫婦の意見がぶつかり合って険悪になっていくのかな、と今後が不安になりました。
「上を目指せ!」「良い学歴を!」夫のこだわり……誰のため?
しかし夫はどうしても「難関校を目指せる〇〇塾がいい」と言って、私の意見を聞いてくれないのです……。
大好きなサッカーも続けさせてあげたいし、いままでがんばったスイミングは区切りがいいところまでは通わせてあげたい! そうするとやっぱり「塾は今じゃない」という気がします。
夫は「人より早めに塾に通わせて学習習慣を身につけさせたい」とも言っていました。それなら自宅で通信教育という手もあるかもしれません。でも下の子たちがいるなか、家で勉強するのは気が散るだろうし難しそうです。ひとりでグルグル考えているとタイチが小学校から帰ってきました。
私はタイチ本人に聞いてみます。「お父さんが言っていた塾に通うなら、プールかサッカーはやめるか曜日を変えないといけないけど、どうする? あと塾は少し遠いから通うのが大変かも」
いっそタイチが「塾に行きたくない」と言ってくれたら話は早かったのですが、それなりに前向きに考えているような返事です。
私はタイチの言葉をそのまま夫に伝えます。「タイチが塾も行ってみたいって」「やっぱり! サッカーかスイミング、どっちかやめさせれば解決だな」夫は喜んでいます。
「子どもの意見をうのみにしてどうするんだよ。中学受験は親の受験だよ? ある程度親が誘導しないと」「そうだけど、タイチの気持ちも私の都合もあるでしょう?」
「とにかく、小2の夏期講習から通わせよう」夫はゆずりません。夫がこんなに中学受験にこだわるなんて意外でした。タイチに少しでも良い学歴を、と必死なのです。そして私は、夫が「自分の挫折を子どもで解消する」ために必死になっているのではないかと思いはじめました。
夫がこんなに自分の意見を押し通すのは初めてのことで驚いてしまいました。やはり大切な子どもの将来の話となると、人は変わってしまうのでしょうか。夫は高校受験で第一志望に落ちていて、「親がもっと早く塾に通わせてくれればよかったのに」と言っていたことがありました。だからこそタイチの塾通いを早めにスタートすることにこだわっているのかもしれません。ただ自分が受験に失敗したときの不本意な気持ちを子どもで解消しようとしているなら、それは親のエゴではないかという気もしています。
【夫の気持ち】子どものためなのに!挫折知らない妻はノンキすぎ
俺は妻(リカ)と3人の子どもと暮らしています。妻は現在育休中です。小2の長男にはよりよい環境で学んでほしいとの思いから、中学受験をさせたいと考えていました。
子どもの教育にはなにより学校選びが大切。自身の経験からそう思っている俺は、長男に中学受験させたいと考えていました。そんなある日、電車で目にした塾の広告で、塾によっては小1から中学受験コースがあると知ったのです。
「いくらなんでも小1から塾は早くないか?」と思いましたが、低学年から通わせている人たちの意見はどれも納得できるものでした。情報に踊らされてはいけないと思いつつも、出遅れてしまった感もあり少し焦ってきました。
見つけた塾は、先生の質もよく人気だそう。直感で「ここに通わせたい!」と思って説明会に参加し、妻にも提案しましたが……。
「送迎が大変だし、ほかの習い事もあるから」と乗り気ではない様子の妻。その予想外の態度に、俺は納得がいきません。もちろん妻の大変さは理解していますが、多少しんどくても長男の将来のためなら頑張れないものでしょうか? 妻は受験に対して「なんとかなる」と思っているようですが、見通しが甘い気がします。なぜなら妻の受験はすべてうまくいったからです。
私と妻は同じ中学の出身です。しかし妻は地域のトップ高校、私は落ちて滑り止め高校へ。その悔しい気持ちをバネに、大学は第一希望になんとかすべりこみました。一方の妻は、高校でも成績上位をキープし、そのまま希望の大学に進学。おそらく挫折した経験もなく、私ほど切迫感がないのだと思います。
親がもっと俺の受験に手をかけてくれていたら、もっとレベルの高い高校、大学という進路を歩めたかもしれない……。そう思うと、今でも悔しい気持ちがわいてきます。
塾への送迎を渋る妻をなんとか説得しなければなりません。「高校受験が終わったと思ったらすぐさま大学受験の勉強があるのは、ハードだって前に話したよね? 中高一貫校に受かれば、高校受験がないぶん勉強以外のことにも打ち込む余裕ができるね、とも話したよね?」しかし妻は……。
入塾に難色を示す妻。イラ立つあまり勝手に申し込んでやろうかとも思いましたが、妻の送迎がなければ通わせることができません。どうしたら合意してくれるのか頭を抱えます。
学歴に対して妻に引け目を感じていないといえばウソになります。もしかしたら高校受験に失敗した自分自身のコンプレックスから焦っているのかもしれません。けれど子どもによりよい環境で勉強してもらいたい気持ちは同じはずです。小2の今でなければタイミングを逃してしまうかもしれません。なんとか妻を説き伏せたいと思います。
【私の気持ち】元・塾講師のママ友に相談「いちばんの問題点は?」夫の過去!
悩んだ私は、中学受験を経験しているママ友・アキコさんに相談してみることにしました。
アキコさんのところは中高生のお兄ちゃんもいます。末っ子のアヤトくんとうちのタイチが同じ時間帯に泳いでいるので、仲良しのママ友を通じて話すようになりました。
アキコさんは塾講師をしていた経験があり、近隣の受験情報には詳しいです。私は塾通いについて夫婦で意見が合わなくて困っているという話を、アキコさんに聞いてもらいました。
スイミングスクールの観覧席に座り、泳いでいる子どもたちを見ながら経緯を話します。するとアキコさんから「で、いちばんの問題点は何なの?」と突っ込まれました。
「リカちゃんが送迎つらいってこと? サッカーかスイミングをやめなきゃいけないこと? 旦那さんがリカちゃんの大変さをわかってくれないこと?」アキコさんにそう言われ、私はしどろもどろです。
「問題点をもう少し整理した方がいいんじゃない?」「だよね……」
「なるほどね。だったらそれを旦那さんに伝えたらいいんじゃないの?」「伝えているつもりなんだけど、なんだか話がうまく噛み合わなくて……」
「たぶん、私より受験に思い入れがあるんだよね。夫の過去も影響している気がするけど……」「ああ、そのパターンね。自分が失敗したからこだわっちゃうんだ」
おかげでかなり問題が整理できてきました。そこで私はアキコさんに、夫と直接話してもらえないかとお願いしてみます。
アキコさんは「オッケーだよ!」と答えてくれました。私の意見を聞かない夫も、他人の言葉にならきっと耳を貸すでしょう。しかもアキコさんみたいに中学受験情報に詳しいママの話なら、絶対に食い気味で話を聞くはずです。夫の情報源はネットだけなので、この地域で受験を経験した保護者の話を聞いたことはないと思います。実際に塾に通う子どもたちの様子も聞くことができるでしょう。難関塾にこだわり続ける夫が少しでも考えを柔軟にしてくれたらと思っています。
ひとり先走った夫、現実を知る「もしかして……今じゃナイ?」
「それで、どこの塾を考えているんですか?」アキコさんは私から聞いて知っているけど、あえて夫に聞いてくれました。
難関塾に入れたい夫は「評判いいですよね~。その塾!」というアキコさんの言葉に満足げです。しかしアキコさんは夫に容赦なく現実を突きつけます。「ただその塾……」
夫は次第に返す言葉を失っていきました。
「それでパパさんはどれくらいサポートできそうですか?」送迎をはじめ、自分が面倒をみるなんて考えもせず、私に丸投げしようとしていた夫はタジタジです。
「お金払って送迎するだけで、あとは塾に全部お任せなんて思っているなら大間違いです」
「まだ小さい下の子がいたらママはなかなか手が回らないだろうし、そこらへんはパパさんの仕事になるかもしれないですね。ちゃんと伴走してあげられますか?」
アキコさんのマシンガントークは止まりません。夫もさすがに自分の見通しの甘さを感じたのでしょう。少しヘコみ気味です。アキコさんは私にも言いました。「リカちゃん、タイチくんと話し合うのも忘れないでね!」
「……つまりまだ塾は早いってことですかね?」「はっきり断言はできないけど、難関校を目指すかどうかは本人のやる気も大事だから」
アキコさんが語る現実的な話は、私たち夫婦に突き刺さりました。帰宅した私と夫はしみじみと話します。「俺らの考えが甘かったな……」「だね」「送迎以外のサポートも必要になってくるなら、今はじめるのは得策でないかもね」
これまでは「中学受験で夫婦が不仲に!」などと見聞きしても、どこかヨソの話と思っていました。夫婦で話し合いの機会をこまめにとりながら、客観的な視点を持ち続けていなければと思います。塾に通うのも受験をするのも息子です。今後の戒めのためにも、親の思い込みで突き進んではいけないことに気づく機会があってよかったと思っています。