巨人・大勢とマルティネスが終盤に君臨すれば…データに見える日本一奪回への道程
通算166セーブのライデル・マルティネス
賑やかだった今オフのFA戦線は9人が権利を行使し、6人の移籍が決まった。中でも巨人はソフトバンクからFA宣言した甲斐拓也だけでなく、前中日のライデル・マルティネス、前楽天の田中将大とビッグネームを次々に獲得。久々の大型補強となった。
2024年はリーグ優勝したものの、クライマックスシリーズで敗退。日本一を果たすためには大金をはたいて獲得した選手たちの活躍は欠かせない。
ただ、気になるのはマルティネスの起用法だ。今季は60試合に登板して2勝3敗43セーブ7ホールド、防御率1.09をマーク。実働7年で303試合、14勝18敗166セーブ42ホールドとクローザーとして申し分のない成績を残している。
しかし、巨人には2021年ドラフト1位で入団以来、3年間クローザーとして活躍してきた大勢がいる。今季も43試合に登板して1勝2敗29セーブ5ホールド、防御率0.88をマークし、3シーズンで通算80セーブを挙げた。
阿部慎之助監督は8回を大勢、9回をマルティネスに任せたい意向を示しているが、大勢も内心穏やかではないだろう。指揮官の方針とはいえ、簡単に割り切れるものではない。モチベーション低下の心配もあるものの、良い方に転べば、よりパフォーマンスが上がる期待もある。
いずれにしてもリードした展開で確実に勝利を拾うためには、中日の守護神を獲得できたことは大きい。
セ・リーグのイニング別防御率比較
投手の分業制がより細分化されている今、ブルペン陣の果たすべき役割は重要だ。2024年セ・リーグのイニング別防御率は下の通りとなっている。
9回の防御率は中日が1.44でリーグトップ、巨人は1.76で2位だった。それだけマルティネスと大勢が最後を締めた試合が多かったわけだ。
問題は9回へつなぐまでの過程。1回の防御率が4点台だった巨人は先発投手の立ち上がりが課題だが、2回、3回、5回は1点台に抑えている。先発に疲れが出てくる6回は3.04、継投の多い7回は2.73、8回は2.36だ。
仮に大勢がセットアッパーとして8回に固定され、今季並みの防御率1点台に封じることができれば勝利への確率は高まるだろう。
6回終了時リードでも巨人の勝率はリーグ4位
次に試合展開別の勝率を比較してみた。2024年セ・リーグで先制した試合、先制された試合、6回終了時にリードしていた試合、1点差以内の試合の勝率、逆転勝ち数、逆転負け数は下の通りとなっている。
巨人は先制するとリーグトップの80.0%の確率で勝っている。逆に先制された試合はリーグ3位の27.9%で阪神、DeNAより低い。
強力打線で日本一に輝いたDeNAは先制勝率67.1%に過ぎないが、逆に先制されても31.3%の勝率を誇り、逆転勝ちもリーグ2位タイの25試合ある。
これだけを見ると巨人は投手陣が奮闘している一方、打線が不甲斐ないように映る。ただ、6回終了時にリードした展開の勝率に注目してほしい。巨人は88.6%でリーグ4位なのだ。
リーグトップの中日は95.7%の確率で勝っており、阪神(91.7%)、広島(90.9%)よりも低い。勝てる試合を勝ちきれていないことが分かる。
中日は貧打に苦しんだとも言えるが、1点差以内の試合が60.0%の勝率。接戦に強く、勝てる展開で確実に勝利を拾っている。巨人も1点差以内ではリーグ2位の54.3%と悪い数字ではないものの、マルティネスの加入でブルペン陣が厚みを増せば、勝てる試合を落とすという痛恨の敗戦も減るだろう。
今季15勝を挙げた菅野智之のMLBオリオールズ移籍が決まり、その穴は決して小さくない。しかし、勝てる展開を確実にものにできるリリーフ陣がいれば、先発投手の負担が軽くなることは確か。大勢とマルティネスがシーズンを通して終盤に君臨できれば、2025年は日本一奪回の期待も膨らみそうだ。
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記事:SPAIA編集部