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大分のなつかし町へ行こう♪ 日田市豆田町&天ヶ瀬温泉、つながる技と癒やし湯に浸かるひととき

さんたつ

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1000m級の山々に囲まれた盆地に、江戸時代から続く町並みが残る天領・日田。北部九州の交通の要所でもあり、白壁の商家や土蔵、温泉が当時の繁栄を物語る。その景観を維持する町で出会ったのは、美しい伝統工芸品と支え合いを大切にする人々だった。

豆田町と天ヶ瀬温泉のMAP

豊かな自然に蓋をせず、ともに暮らす豆田町

阿蘇・くじゅう山系や英彦山(ひこさん)系の山が町を囲む。
山から流れ出る豊富な水が日田盆地で合流し、水郷・日田の景観をつくる。

日田は、江戸時代には幕府直轄領の民治を司る西国筋郡代(ぐんだい)の代官所が置かれ、九州の政治経済の中心地であった。陸路と水路、双方の要所であり、筑後川の舟運によってさまざまな物資が行き交ったこの町には、多くの商人が訪れたという。

人が集えば商売も盛んになり、日田の素材を生かした生活用品や食が発達していく。また、多くの旅人を迎え入れたことから、支え合いやおもてなしの精神が育まれていった。

日田の陣屋町として栄えた豆田町を歩くと目につくのが、杉や檜を使った木工製品。日田は全国でも有数の林業地として知られ、特に「日田下駄(げた)」は180年余りの歴史がある伝統工芸品だ。

曾祖父の時代から家族で下駄工場を営む『月隈木履(つきくまもくり)』の伊藤高広さんによると、日田の木工業界では家業を継ぐ人が多く、日田げた組合でも加入者同士が互いに手を取りイベントなどを盛り上げているという。

『月隈木履』の杉下駄(女)(手前)4500円、杉下駄(男)5500円。表面を焼き、美しい木目を出す「神代仕上げ」は日田下駄の特徴の一つ。日田杉は軽くて肌ざわりがやわらかい。
江戸~大正時代築の『薫長(くんちょう)酒造』の蔵は建築当時の姿を残す。
路地裏の店を発見するのも楽しい。

競い合うのではなく支え合う。日田の伝統は、職人たちの手によって丁寧に守られていた。そんな町のスピリットにより、素晴らしい技術を継いだ職人はこの町に多く存在する。しかし、謙虚な性格のせいか、その魅力はアピールされてこなかった。

そこにもどかしさを感じたのが、『Life design shop Areas(エリアス)』オーナーの仙崎雅彦さん。ソファ作りを学ぶため移住し、この土地の潜在能力を実感。町の歴史と技を多くの人へ伝えたいと、日田の名品が並ぶこの店を開業した。

さらに2020年には、仙崎さんを中心に家具、食品、林業など日田市の各業界の有志が集う「日田縣産業振興会」を設立。町の産業を盛り上げる意識は着実に高まっているようだ。彼はいま、商品の開発やイベントを通じて、日田の文化を世界視野で発信している。

『Life design shop Areas』で販売している日田の漆職人と木工職人の手で作られた盃「ゆらぎ」各5280円。
豆田町は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。
どこを歩いても風情がある豆田町の御幸通り。

世界にも発信したい、町の歴史と伝統技術『Life design shop Areas』

小鹿田焼のお猪口(ちょこ)1320円~など。
「人と工芸に魅了され、暮らし始めて15年。自分が受けたやさしさを、誰かに返したいと思わせてくれる町です」とオーナーの仙崎雅彦さん。

日田杉を使った盃や小鹿田(おんた)焼の器など、日田で生まれた生活雑貨を販売。それらの多くは地元の職人とともに開発したオリジナル商品だ。向かいには暮らしを伝えるショールーム「まめやど」があり、宿泊も計画中。

☎050-1048-7757
9:30~19:00、不定休
大分県日田市豆田町7-20
JR久大本線日田駅から徒歩19分

靴は脱ぐとホッとする、下駄は履くとホッとする『月隈木履』

店を営む3代目の伊藤平八郎さん(左)と妻の萬里子さん(中)、息子の高広さん。「木の肌ざわりを実感してみて」。
切り出した木型を乾燥させる輪積み。

昭和19年(1944)創業の老舗下駄店。販売のほか、オーダー下駄の製作も行う。オーダー下駄は履き心地にこだわり、対面できる方のみ受注。「お客さんが心から満足できるものを」と徹底する姿勢は、職人気質の表れだ。

☎0973-22-2320
8:00~17:00、不定休
大分県日田市丸山2-208-1
JR久大本線日田駅から徒歩23分

焼き方やソースに個性が光る、パリッと食感の日田焼きそば『食事の店そのだ』

パリパリ麺が特徴の日田焼きそば850円は片面焼きタイプ。白米と相性がいいから、お茶碗半分のご飯をサービスで付けている。
かつ丼950円も食べたい。

昭和47年(1972)の開業以来、地元の人や観光客の胃袋をつかみ続けてきた食堂。焼きそば、かつ丼やオムライスなど、みんなが大好きなメニューを中心に、忘年会シーズンには軍鶏(しゃも)やフグのコース料理(要予約)も提供。

☎0973-22-3213
11:00~16:00、水休
大分県日田市港町5-29
JR久大本線日田駅から徒歩15分

2代目の苑田正敏・純子さん夫妻。「軍鶏の出汁を使ったかつ丼も人気です!」。

300年以上の歴史を紡ぐ老舗の美酒『薫長酒造』

売店には「薫長 特別純米」1800ml3080円(右)、「大吟醸 瑞華」720ml3960円などがずらり。
「豊かな水と盆地ならではの冬の寒さ、熟練杜氏(とうじ)の技術によって最高のお酒が完成します」と専務取締役の冨安裕子さん。「試飲コーナーや酒蔵資料館もぜひ」。

酒の成分の約8割を占める水は、先代の時代に掘った井戸からミネラルたっぷりの地下水を使用。気温が下がる11~3月に造られた寒仕込みの日本酒は、好みで選べるようさまざまなバリエーションをそろえる。

☎0973-22-3121
9:00~16:30、無休
大分県日田市豆田町6-31
JR久大本線日田駅から徒歩19分

湯と人のぬくもりが沁みる日田の奥座敷・天ヶ瀬温泉

そんな地元の職人や訪れる旅人をむかしから癒やしてきた場所がある。日田の奥座敷・天ヶ瀬だ。開湯約1300年の歴史を誇る温泉地で、玖珠川(くすがわ)沿いに立ち並ぶ温泉宿では、川のせせらぎとともに「美肌の湯」を楽しめる。

地域の共同浴場もあり、褐色のとろりとした湯を堪能。湯上がりには売店で売られていた収穫したての白菜や露地栽培のシイタケを買い込み、ホクホク顔で施設をあとにした。

帰路に就く頃には、人と湯の温かさで心もじんわりぽかぽかに。ともに支え合い新たな種も芽吹く日田の営みは、これからも続いていく。

静寂の心地よさを知る 山間のひっそり宿『山荘 天水』

木々に包まれたアプローチを抜けて入口へ。
眼下に流れ落ちる桜滝を眺めながら、やわらかな湯に浸かる。

1万坪もの広大な敷地に用意された客室は、わずか19室。合楽川(ごうらくがわ)に面し、周囲を木々が彩る風情あふれる宿。階段の先には温泉棟があり、日田の名瀑・桜滝を見渡す露天風呂の「滝観庵」で、かけ流しの温泉を満喫できる。

☎0973-57-2424
1泊2食2万9000円~
日帰り入浴は10:00~14:00受付、不定休。800円
部屋数/19室 泉質/単純温泉
大分県日田市天瀬町桜竹601
JR久大本線天ケ瀬駅から車5分

専用露天風呂や談話室を備えた特別室「あさもや」。冬には囲炉裏(いろり)でかっぽ酒もオツなもの。

取材・文=井上かおり 撮影=草野清一郎
『旅の手帖』2025年2月号より

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